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Vol.22071 製薬マネーデータベースの経済学

医療ガバナンス学会 (2022年4月1日 06:00)


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この原稿は医薬経済2022年2月15日号からの転載です。

医療ガバナンス研究所、ときわ会常磐病院
尾崎章彦

2022年4月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

筆者らが実施している製薬マネープロジェクトにおいて、肝となるのは、製薬マネーデータベース(以下、製薬DB)の作成である。これまで、その費用は、実施主体である探査報道NPOのTansaと医療ガバナンス研究所が折半して、賄ってきた。

つい先日、2021年8月に公開した2018年度版製薬DBの精算を行った。その結果、2018年度版の作成に要した費用は382万円であった。これは、2017年度版から若干減額になったのみである(410万円)。

なお、2018年度版における最大の支出は人件費であり、152万円を計上した。そのほとんどが、各製薬企業ホームページからの支払いデータの抽出と、エクセルに加工されたデータを個人毎にデータを集計する際に当たり、要した費用である。

なお、データ集計に先立って実施したOCR作業は業者に依頼し、この作業には108万円を計上した。初めて製薬DBを作成した2016年度は、自前でOCRを実施したが、文字化けが多発してデータの正確性を担保することが困難であった。そのため、2017・2018年度は、業者に外注したのだった。コストはかかったが、マンパワーを温存することもでき、正しい判断だったと考えている。

なお、2019年度からは、各社とも、ホームページ上の支払いデータを、直接エクセルにコピーすることを許容してくれるようになった。そのため、OCRが不要となり、大幅なコストカットを見込んでいる。

また、次に支払いが多かったのが、製薬DB作成にかかるホームページ構築経費であり、63万円を計上した。なお、2019年度以降は、この費用も圧縮される予定である。というのも、今回の全面刷新により、今後は、現行のホームページに、直接データを継ぎ足しできるようになったからである。

一方で、サイトの保守運用費39万円など、コストカットが難しい費用も存在する。以上から、2019年度の製薬DB作成費用は、200–250万円ほどと見積もっている。

このようなコストカットの努力は、重要である。なぜならば、現状、必要経費を賄うことに大変な苦労をしているからである。

例えば、2018年度については、その経費を賄うため、450万円を目標金額としてクラウドファンディングを実施した。ところが、目標をはるかに下回る140万円が集まったのみであった。さらに、目標金額に届かなかったことで、筆者らが手にした金額は110万円まで減額された。最終的に、262万円が赤字となり、Tansaと医療ガバナンス研究所が131万円ずつ折半することとなった。

そもそもの目標金額が高過ぎたことは言うまでもないが、継続的に実施するプロジェクトの経費をクラウドファンディングで賄うこと自体に無理があることを痛感している。

なお、現在、毎年10本以上の英語論文を出版しているが、これらの英語校正費や掲載料を賄うためにも、別途50万円以上の費用も計上している。以上まとめると、製薬マネープロジェクトを動かしていくためには、合計で年間300万円前後の経費が必要である。

自活のために、今後は製薬マネープロジェクトに関連して、積極的に研究助成金を申請していく予定である。例えば、2021年には、英国の研究パートナーであるバース大学のオジエランスキー博士と日英大和基金に研究助成金を申請し、無事採択された。なお、その目的は、日本語と英語の両言語で、医学生を対象に、製薬企業と医療者の金銭的利益相反について概説するパンフレットを作成することである。

今後は、民間の研究助成金だけではなく、科研費などにもチャレンジし、自活を目指していきたい。

 

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