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Vol.22099 2019年度製薬マネーデータベース公開!その影響から患者さんを守るために

医療ガバナンス学会 (2022年5月18日 06:00)


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医療ガバナンス研究所
尾崎章彦

2022年5月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

5月16日、NPO法人医療ガバナンス研究所とNPO法人Tansaは、製薬会社から医師や医療機関に支払われた金銭を検索できる「製薬マネーデータベース」( https://db.tansajp.org/ )の2019年度版を公開しました。

2018年度に続き、研究費開発費等(A項目、治験や臨床研究に関する支払い)、学術研究助成費(B項目、医療機関や学会などへの支払い)、原稿執筆料等(C項目、医療者への支払い)の3分野の支払いデータを公開しています。

なお、データベースは2016年度版から公開しており、サイトでは、4年分のデータを確認することができます。Google analyticsによると、複数年度分を一つのサイトで公開するようになった2021年からだけでも26万人以上が活用しており、多くの方々に利用されています。

申し遅れましたが、私は医療ガバナンス研究所の尾崎章彦と申します。日頃は一臨床医として仕事をしておりますが、並行して、医療ガバナンス研究所とTansaと共同で実施してきた製薬マネープロジェクトにおいて、医療ガバナンス研究所側の責任者を、務めてまいりました。

今更ですが、製薬マネーとは、主に販売促進活動の一環として、製薬企業から医療者や医療機関等に支払われる寄付金や謝金を指します。もちろん、製薬企業と医療の連携は医療の発展に必要です。ただ、製薬マネーは医療者や医療機関にとって利益相反の主要な源であり、医療者も無意識のうちに影響を受け、患者のケアが歪められる可能性があります。また、過去には、ディオバン事件( https://www.nature.com/articles/s41371-022-00680-2 )や三重大学臨床麻酔科教授の逮捕劇( https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2021.762637/full )のように、甚大なスキャンダルにも発展してきました。

製薬マネーが医療にもたらす影響は、諸外国においても同様に問題視されており、国際的に透明化へ向けた流れが進んできました。一方で、日本においては、他国に比べ、透明化の流れが遅れていました。すなわち、日本において、各製薬企業は、医療者や医療機関等への支払いを公開していましたが、その情報が統合されていなかったのです。

製薬マネーデータベースは、そのような支払いを医療者毎に統合し、できる限りユーザーフレンドリーな形で公開したものになります。製薬マネーが患者ケアに及ぼす影響を緩和しようとする筆者らの活動において、この製薬マネーデータベースは、常にその活動の中心を占めてきました。

実際、そのような志の元に現在では多くの仲間が集い、製薬マネーデータベースを中心に調査・啓発に取り組んでいます。例えば、公開されたデータベースを活用し、これまでに、チームで40報の論文を査読付き英文雑誌に発表してきました( https://www.megri.or.jp/drug )。プロジェクトには多くの医学生が関わってくれており、最近でも、BMJ (英国医学誌、https://www.bmj.com/content/377/bmj.o1209 )やBlood Cancer Journal( https://www.nature.com/articles/s41408-022-00656-y )といった一流雑誌に、医学生が筆頭著者の論文が掲載されています。また、国内外で共同研究が進行しており、国内では明治薬科大学、海外では、イギリス、スウェーデン、オーストラリア、韓国などの研究者と共同研究を実施しています。

それのみならず、月刊誌FACTAなどの媒体において調査結果を紹介いただくなどして、この問題に周知を図っている他(全実名公開! 製薬マネー「高額謝金」受領者ランキング、https://facta.co.jp/article/202204026.html )、調査でわかった知見を元に、医学生向けのパンフレット作成に取り組むなど、啓発活動にも力を入れています。

なお、2020年度版以降、製薬マネーデータベースの製作は、医療ガバナンス研究所単独の事業として実施する予定です。Tansaと二人三脚で歩んできた我々にとっては大きなチャレンジですが、これを飛躍の機会と捉え、改めて初心に還り、皆で取り組んでいく所存です。

その一環として、製薬マネーデータベースのウェブサイトも近日リニューアル予定です。ビジュアルなどを用い、これまで以上にユーザーフレンドリーなサイトを目指していきたいと考えています。

また、データベースの制作を医療ガバナンス研究所が行なっていくに当たり、現在Tansaが実施している寄付サイト「Syncable」でのキャンペーンは5月31日正午をもって終了いたします( https://syncable.biz/campaign/1844 )。

6月1日以降にご寄付をいただける場合の窓口は医療ガバナンス研究所となりますが、その詳細は、改めて周知させていただきます。

医療ガバナンス研究所においては、この問題に変わらず取り組んでいく所存です。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

 

製作マネーをめぐるこれまでの動き

2018年
1月15日:製薬マネーデータベース「製薬会社と医師」2016年度版を公開

10月4日〜7日:ソウルで開かれた国際会議「IJAsia18」で製薬マネーについて共同プレゼンテーション

2019年
9月28日:独・ハンブルクで開かれた「11th GIJC」にて製薬マネーについて共同プレゼンテーション

10月30日:日本医学会・同連合から「診療ガイドライン策定にかかる企業等との関係透明化に関する要請」を、日本医学会連合加盟学会に提出。データベースを分析した3論文を引用

11月6日:文部科学省がデータベースを使った調査結果を衆議院厚生労働委員会で公表。各大学に兼業規定と倫理規定の見直しを求めた

2020年
8月5日:データベースの2017年度版を公開

11月27日:一般社団法人全国医学部長病院長会議が、「製薬企業等からの謝金等の受領の在り方に関する提言」を発表

2021年
8月27日:データベースの2018年度版を公開

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