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Vol.22120 「工場の敷地内濃度は公表してほしくない」/ダイキンが摂津市に「秘密会議」で要望(シリーズ「公害PFOA」第7回)

医療ガバナンス学会 (2022年6月17日 06:00)


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Tansaリポーター
中川七海

2022年6月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

ダイキン工業淀川製作所のすぐ近くの田んぼで2021年秋、摂津市立味生小学校の児童が稲刈りをした。田んぼの隣にある畑の野菜を食べた住民からは、高濃度のPFOAが検出されている。収穫したコメを子どもたちが食べるのは危険だ。

しかし、市長の森山一正(77)は収穫したコメについて「持って帰らん方がええ」と漏らしつつも、「どうするかについては教育委員会で」と匙を投げた。

なぜ市長の森山でさえ、判断を避けるのか。背景にはダイキン、摂津市、大阪府の3者で開かれた会議の存在があった。摂津市は市民に対して会議の内容を「秘密」にしていた。

Tansaは情報公開請求と取材で会議録を入手した。そこには「城下町」を潤してきたダイキンの要請に、市民を度外視して付き従う摂津市の姿があった。

http://expres.umin.jp/mric/mric_22120-1.pdf
摂津市長の森山一正=2021年12月10日、摂津市役所にて

●ダイキン「畑に地下水を撒いても問題なし」と住民に

2019年12月25日、摂津市環境政策課の担当者らがダイキン淀川製作所に到着した。通されたのは、真新しいビルの応接室。4年前にできたばかりの棟で、「テクノロジー・イノベーションセンター」(TIC)と呼ばれる。

部屋には、ダイキンから本社化学事業部の課長、淀川製作所の化学事業部長ら5人、大阪府からは環境管理室・事業所指導課の2人が並んでいた。

彼らが集まった理由は、PFOAにあった。

2019年5月、PFOAは「ストックホルム条約」で、最も危険なランクの化学物質に認定された。ストックホルム条約で議題に上がるのは、人体に悪影響を及ぼすほどの強い毒性をもつ上、残留性が高い化学物質だ。PFOAは廃絶しなければならない物質に認定された。条約は日本も批准している。国内での規制が強まっていくのは明らかだった。

朝10時、会議が始まった。ダイキン社員は、みずから実施している水質調査の結果を報告した。

まずは淀川製作所の敷地内にある井戸水のPFOA濃度について。以前は減少傾向にあった観測井戸の一つが、濃度が上がってきていると伝えた。TIC棟の建設に伴い、PFOA濃度を下げるための「揚水処理」を停止していたことが原因だという。

さらに、下水に放流する水のPFOA濃度も下がっていなかった。府がその原因を尋ねると、ダイキンの担当者は言った。
「設備として残っていたり、また、設備は撤去しているが、周辺の床面や溝は取り換えていなかったりする。プラントからの雨水も含めた工程排水からだと考えている」

会議の中でダイキンは、近くの住民からの問い合わせについても報告した。
「畑に地下水を撒いているが問題ないかとの問い合わせが1件あった。問題なしと回答した」

会議は1時間で終わった。

●摂津市「汚染の原因は分からない」と住民にウソ

次に3者会議が開かれたのは半年後の2020年6月30日だ。その月の11日、環境省がPFOA濃度の全国調査の結果を公表し、摂津市の地下水がダントツの高濃度を記録したことが判明したのだ。

午後1時、前回と同じダイキン淀川製作所のTIC棟で3者会議が開かれた。

環境省の調査結果は新聞などでも報道された。住民からの問い合わせ状況を報告しあう中で、市の担当者が尋ねた。
「市としては3者会議のことをどこにも伝えていない。どの程度までなら言っていいものか」

答えたのは、ダイキンの担当者だった。
「(淀川製作所の)敷地内の濃度は公表してほしくない」

市の担当者が応じる。
「汚染の原因はどこかと聞かれたら、今は『わからない』と答えている」

続けて、住民から市に寄せられている問い合わせへの対応方針を伝えた。
「農業をやっている人から、畑に井戸水を散水して収穫したものを食べているが大丈夫かとの問い合わせがあった。また、農業用水に(PFOAが)入っていないかも気にしていたので、摂津市に湧水はないので問題ないと回答する予定」

ダイキンがPFOAの汚染源であることは、前回の3者会議での共通認識だ。ダイキンは、下水放流水のPFOA濃度が下がらない原因まで説明している。それでも市は、ダイキンが汚染原因であることを市民に伏せていたのだ。

http://expres.umin.jp/mric/mric_22120-2.pdf
大阪府が所持している3者会議の会議録

●市長「土壌のことははっきり言うて告知していない」

環境省が全国調査の結果を2020年6月に発表した後、事態はさらに深刻になっていく。2021年10月には、ダイキン淀川製作所周辺の住民9人が血液検査を受けたところ、全員から高濃度のPFOAが検出された。最も高い人で、非汚染地域の70倍を超える。摂津市は「畑の作物を食べても大丈夫か」との市民からの問い合わせに、「問題ない」という姿勢だったが、この9人は工場近くで収穫した農作物を食べていた。

さすがに「汚染源は分からない」などと悠長なことは言わないのではないか。2021年12月10日、Tansaは市長の森山を市役所で取材した。

――摂津市は市民に対し、汚染の原因はわからないと伝えている。この理由は何か。
「僕ちょっとその辺のことはわからないねん」

――汚染の原因はダイキンしかないのではないか。
「摂津市は産業都市で、市内でPFOAを使っている事業所は大小どこにあるのか分からない。でもダイキンさんは、PFOAを使っておられたということは明確なんやから、そのことから言ったら、ダイキンじゃないかということで3者会議をやってるわけやね」

――2020年6月の3者会議で、市は地下水で育てた野菜を食べても問題ないと答えると言った。だが、血液から高濃度のPFOAが検出された住民は、地下水で育てた野菜を食べていた。
「その『問題ない』と言った意味はね、問題ないということじゃなくて、問題として捉える明確な基準値と言うんですか、その辺のことがわからないということを言うたんやと思うよ」

――「問題ない」と「わかっていない」は全然違う。
「我々としては明確な何かひとつの目安がほしいわけですよ。目安がない場合に、こちらの予想で言えることと言えないこともあるんですわ」
「土壌の場合ははっきり言うて、(市民に)告知していない。きちっとした数値が出てないので。今のところ大丈夫と思いますけれども」

=つづく
(敬称略)

※この記事の内容は、2022年1月7日時点のものです。

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●シリーズ「公害PFOA」:https://tansajp.org/investigativejournal_category/pfoa/

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PFOA汚染と母子(令和の「水俣」No.4)
https://www.youtube.com/watch?v=csXnooscrBk

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