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Vol.22127 PFOA汚染「世界最悪レベル」の大阪府、太田知事の後援会長はダイキン井上会長だった(シリーズ「公害PFOA」第10回)

医療ガバナンス学会 (2022年6月29日 06:00)


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Tansaリポーター
中川七海

2022年6月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

世界最悪レベルのPFOA汚染が河川で広がっていることが、2004年に判明した大阪府。調査を実施した京都大教授の小泉昭夫のチームは、ダイキン工業淀川製作所が汚染源であることを突き止めた。チーム小泉は「工場の労働者と住民の調査が必要」と警鐘を鳴らしたが、府の腰は重い。

当時の府知事・太田房江の後援会組織の会長を務めていたのは、ダイキン会長の井上礼之だった。

http://expres.umin.jp/mric/mric_22127.pdf
今は参議院議員(自民党)の太田房江氏=参議院ウェブサイトより

●ダイキン盆踊り大会に現れた太田知事

2007年8月、大阪・摂津の淀川製作所に浴衣姿の井上が現れた。会長になって5年、ダイキントップの井上は、約2500人の摂津市民らが集ったイベントに顔をほころばせた。

摂津市民を招いての盆踊りはこの年で36回目。元々企画したのは、井上自身だ。

井上には淀川製作所で副所長として勤務した経験があった。

フッ素化学に力を入れていた淀川製作所は、1950年代から公害を繰り返した。フッ素ガスが漏れ出して田畑は枯れ、避難を強いられた住民たちが製作所に押しかけることもあった。井上は盆踊り大会を企画し、1973年には住民対応のための「地域社会課」の責任者に就いた。

井上はその後、出世街道を歩む。1979年に取締役になったのち、1994年に社長、2002年には会長に就任した。

2007年の盆踊り大会には、2500人の摂津市民らに混じり、あるゲストがやってきた。大阪府知事の太田房江だ。

なぜ知事が、一企業が主催する盆踊りに参加するのだろうか。

●太田の政治資金パーティー、お得意様はダイキン

ダイキンの井上は、太田の後援会組織「21世紀大阪がんばろう会」の会長だった。
がんばろう会が結成されたのは、太田が府知事選に立候補した2000年。前任の横山ノックに代わり、通産官僚だった太田に期待した関西財界の大物たちが結成した。初代会長は松下電器会長の森下洋一で、ダイキンの井上は3代目として2006年からがんばろう会の会長を務めた。

がんばろう会は、太田の政治資金を支えた。共産党府議だった宮原威が行った2007年の調査によると、太田の資金管理団体「フウちゃん後援会」に2000年から2006年に入った資金の内訳は以下だ。がんばろう会からの寄付が半数近くを占めている。

21世紀大阪がんばろう会 3100万円
大阪府知事太田房江後援会 2800万円
太田知事本人 200万円
その他 157万円

では、がんばろう会の収入源は何か。
最も多いのが、飲食物を少なくして利益を出す「政治資金パーティー」で、収入源の4割超。2000年から2006年の期間で1億8153万円あった。
ダイキンはほぼ毎年パーティー券を購入した。2003年、2005年、2006年はそれぞれ法人の参加者では最多の100万円分を買っていた。

●議会で「低体重児の出生率が高い」と質問された太田知事は

ダイキンの井上と太田の関係に議会で切り込んだ府議がいた。がんばろう会と、フウちゃん後援会の資金を調べた共産党の宮原だ。

宮原はPFOA問題が気になっていた。京大のチーム小泉による2004年の調査で、大阪の河川で世界最悪レベルの汚染を記録したにもかかわらず、対策が進んでいないと感じていたからだ。大阪府では、低体重児の出生率やがんの死亡率が全国平均より高いというデータがあることが何より心配だった。

2007年9月、宮原は太田に府議会で質した。宮原は「PFOA濃度が最も高いのは『安威川流域下水道処理場』付近の河川水で、1リットル当たり6万7000ナノグラムという世界一」と指摘した上で言った。

「ダイキンから排出されたPFOAによって世界一の汚染濃度になった安威川流域処理場付近の調査はこれからだということです。随分のんびりしてるなという印象があります。ダイキンにPFOA排出の状況と排出削減の取り組みを問い合わせるのもこれからだ。どうしてダイキン周辺の調査やダイキンへの問い合わせが遅くなっているのか、理解できません。説明してください」

「最新の統計では、大阪での低体重児、いわゆる2500グラム未満の子どもさんの率というのは、全国平均よりもかなり高くなっています。残念ながら、がん死亡率も一番です。妊産婦の死亡率も全国平均より高い。既にPFOAの影響というのは、実は母体や赤ちゃんに出てるのではないでしょうか」

しかし太田はこう述べた。
「近時は科学的知見が大変発達をいたしまして、有害ではないかというはてなマークのつく物質の名前はごまんとあります。そういう中で、PFOAの問題については、私ども先進的にやっているわけで、おくれていることはございません」

だが結果的に、2021年に摂津市の住民の血中から高濃度のPFOAが検出された。2007年に宮原が追及した時点で太田がダイキンに対し手を打っていれば、その後の被害を食い止められたのではないか。太田は、自身の後援会の会長を務めていた井上に忖度し、対策の手を緩めたのではないか。

Tansaは、今は参議院議員(自民)の太田と、取締役会長の井上に質問状を送った。以下の回答が返ってきた。

太田房江
「全く関係ないと認識しております」

井上礼之
「個別の内容に関するご質問への回答は控えさせていただきます」

ところが、「先進的にPFOA問題に取り組んでいた」という太田の当時の議会答弁に反する証拠文書を、Tansaは入手した。次回、報じる。

=つづく
(敬称略)

※この記事の内容は、2022年1月28日時点のものです。

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●シリーズ「公害PFOA」:https://tansajp.org/investigativejournal_category/pfoa/

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【YouTube番組で解説!】
PFOA汚染と母子(令和の「水俣」No.4)
https://www.youtube.com/watch?v=csXnooscrBk

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