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Vol.22144 相馬野馬追は、日本のウイズコロナ時代移行の試金石である

医療ガバナンス学会 (2022年7月22日 06:00)


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帝京大学大学院公衆衛生学研究科
高橋謙造

2022年7月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

自分は、一臨床医として、公衆衛生分野の医師として、南相馬市のコロナワクチン展開に初期から関わって来た。 きっかけは、相馬市でコロナワクチン接種をしていた時、「あのな、南相馬を手伝わんか?」と、相馬市長の立谷氏から声をかけられたことである。私は、医師、政治家としての立谷市長の手腕、人物を尊敬している。東日本大震災復興の立役者である。その方から、「手伝え」と言われたら、否やはない。

そして、昨年の5月頃から機会を見つけては接種のお手伝いをして来た。スピード感がある相馬市のワクチン接種に対して、一歩ずつ積み上げていくような着実感が南相馬市のワクチン接種マネージメントにはある。この着実性が、過去3回の接種において、日本でも有数の高接種率の達成につながっている。相馬市新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンター長の渋谷健司先生も、「この地域は、日本の最先端のサイエンスで住民を守っている」と太鼓判を押しているくらいだ。

いずれの市も、地域をよく知る人達がマネージメントしているのであろう。私が手伝えることを考え、自分で接種にかかわる他、お手伝いできる医師への声がけや、ワクチンの必要性に関する説明資料等の準備も行った。

この南相馬市のワクチン接種のマネージメントに最も貢献している人材は、私の見るところ、南相馬市の新型コロナ対策課 森課長、相馬郡医師会の新道会長、そして南相馬市立病院の及川院長の3名であろう。 彼らは、密に連絡を取り合い、情報を共有する。その情報共有は迅速で、まず、タイムラグはないようだ。

地域でのワクチン接種事業を展開するには、このスピード感が大切であると感じた。 この密な情報共有は、本来は外部者であるはずの私にも行ってくれている。特に課長は素早い。関わりだして程なく、「LINEで連絡を取りましょう。」と言われたときは驚いた。行政マンであれば常にセキュリティーを過剰重視した職場メールで連絡を取りたがると思っていたからだ。しかし、迅速性を旨とする課長は違う。おかげで、いつでもすぐに連絡が取れる。迅速な情報共有と、まめな報連相は行政マンの武器だ。 そして今回、相馬野馬追に関する相談を受けた。

コロナ報告数が増加しだした7月から、コロナ対策を担当する課長たちの周囲も、にわかに慌ただしくなってきたのだ。自分を信頼してくれて相談してくれていることにありがたさを感じるとともに、真剣に情報を検討した。自分の強みは、これまで多くのCOVID−19関連論文を読み込んで来たことにある。科学的な知見は十分に持っている。実践に活かすときである。 前述の渋谷先生などと相談の上、私より行ったアドバイスは以下の3点である。

1) 空気感染が主であることを考えると、屋外でのイベントは換気は十分であろう。
2) 南相馬市では3回目接種で、65歳以上高齢者は93%を超えており、12歳以上64歳以下でも80%を超えている(国の集計)。現在進行中の4回目接種も着々と進んでいる。今回のイベントで、仮に感染が拡大しても重症者の多発はありえない。カナダの高齢者施設の研究では、3回目接種約3ヶ月以降での重症化は40%程度だったが、追加接種するたびに重症化予防効果は上がる傾向にあり、4回目接種後の重症化予防は86%であったとのことだ。
3)科学的エビデンスを鑑みると、十分な免疫がついており、感染者は出ても、重症者の増加や医療逼迫は起こらないと考える。行動制限ではなく、観客個々にリスクを管理してもらう方がよい。

現地としては、熱中症にも懸念をお持ちのようだったが、熱中症に関してはコロナ以前からあったものなので、これまでの対応体制(冷却、保水など)を粛々と実行されるように伝えた。

人流や接触の削減を目的とする一律の行動制限から脱却し、感染者数に一喜一憂することなく、科学的にウイズコロナのフェーズに移行することが必要だ。相馬野馬追は日本の行く末を示す資金石と言えよう。

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