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Vol.22152 摂津市議会が全会一致で国に意見書/市民は「健康調査」「ダイキンの汚染対策」求めて署名を市長に提出へ(シリーズ「公害PFOA」第19回)

医療ガバナンス学会 (2022年7月29日 15:00)


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Tansaリポーター
中川七海

2022年7月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

大阪府摂津市議会は2022年3月29日、ダイキン工業淀川製作所周辺で地下水や土壌が汚染され、市民の血液から高濃度のPFOAが検出されたことに対し、国に対応を求める意見書を全会一致で可決した。

市民の側も動き出した。PFOA汚染に不安を覚えた市民たちが「PFOA汚染問題を考える会」を結成。森山一正市長に4月上旬、健康調査やダイキンによる汚染対策を求めて署名を提出する。

●傍聴席には血液から高濃度PFOAの市民も
この日の本会議で意見書案を提出した議員は、公明の村上英明氏、大阪維新の会の香川良平氏、共産の増永和起氏、立憲民主の西谷知美氏、自民の光好博幸氏の5人。これに対して、19人の議員全員が賛成した。傍聴席には血液検査で高濃度のPFOAが検出された市民の姿もあった。

意見書では、国と大阪府の水質調査で高濃度のPFOAが検出されたことを挙げ、以下の4点について迅速に対応するよう政府に要請した。

1 発がん性及び、出生児の低体重傾向など、身体への影響に関する検証について引き続き科学的知見などの集積に努め、血液に関しても分析方法及び目標値等について調査研究を進めること

2 土壌に関する分析方法及び目標値等の調査を進め、地元自治体の協力を得ながら、土壌のPFOA除去について技術開発を進めること

3 食品中のPFOAを含むペルフルオロアルキル化合物についての含有実態調査等を進めるなど、農作物に関する分析方法及び目標値等の調査研究を進めること

4 国から摂津市など地元自治体へ担当職員を派遣されるなど、自治体と密接に連携し、健康への影響、水環境、土壌環境及び農作物等の調査を実施され情報の収集に努めること

http://expres.umin.jp/mric/mric_22152.pdf
摂津市議会議員=摂津市役所にて

議会の前後で、各会派の議員たちはTansaの取材に次のように語った。

大阪維新の塚本崇氏
「地域の方から、農作物の水やりに摂津の水を使っていいかという相談を受けているが、『井戸水や用水路の水はできるだけ使わない方がいいと思う』としか答えられない状況。国には正確な指針を示していただきたいし、摂津市も井戸水や農業用水の使用を控えるよう市民に注意喚起していただきたい」

同じく大阪維新の三好俊範氏
「国が早急に対応しないと、市としてはいつまでも放っておけない。ましてや、健康にも悪影響を及ぼしているとわかれば、早急にやらないといけない。味生(あじふ)小学校の児童に米を配布するかどうかも、市は早く決断するべき。PFOA問題について、私たち(大阪維新)は危機感をもって取り組んでいく」

共産の増永和起氏
「市民の不安が広がる中で、地域の汚染や住民の曝露の実態調査をすぐにでも実施しないといけない。PFOA被害は一世代限りの話ではなく、親から子にまで影響する問題。市民の署名活動や、味生小学校の児童への米配布の問題についても引き続き取り組んでいく」

自民の松本暁彦氏
「市として動けることは限られているので、土壌調査は国が責任をもってやっていただかないといけない。健康被害に関する知見も、国に示していただく必要がある。国には、早く(規制の)基準を出していただきたい」

立憲民主・市民連合の三好義治氏(ダイキン工業労働組合推薦)
「僕としては誠心誠意取り組んでいる。今日の意見書提出でも賛成の立場に立った。国が、公害や環境に対して予算を充当しながら、研究開発も含め調査をしっかりとやってほしい。民間企業を主導し、事実関係もしっかり伝えてほしい」

立憲民主・市民連合の西谷知美氏
「人体への影響や土壌の汚染について、他の都市ですでに対処しているところがあれば、それを参考にしながらダイキンと国、あるいは大阪府に対して対応を求めていかないといけない。味生小児童への米配布の件は、持って帰らせてはいけないでしょう」

公明の南野直司氏
「血液から高濃度のPFOAを検出した摂津市内の農家さん3人と話をさせていただいた。今回の意見書は、第一歩だと思っている。私は行政側ではなく、市民の代表ですから」

●市民で「PFOA汚染問題を考える会」結成、「ダイキンは情報公開を」
市民たちは、森山一正市長に要望書を提出するための署名集めを始めた。主導するのは、今回の事態を受けて結成された「PFOA汚染問題を考える会」。代表は市民であり弁護士の間瀬場猛さんが務める。

要望書では、「今も深刻な状況のまま」のPFOA汚染の原因が淀川製作所であることは、「国、大阪府、そしてダイキン工業自体も認めている」と指摘。ダイキンに対策を求めることなど、以下の5点に取り組むよう森山市長に要望している。

1 別府(べふ)、東別府の地下水及び水路のPFOA濃度調査を行ってください

2 PFOA汚染が判明している地域の土壌、農作物などの調査を行ってください

3 PFOA汚染に不安を持つ市民の血液検査など健康調査を行ってください

4 大阪府とともに国へ土壌・農作物や健康についての指針作成を要請してください

5 ダイキン工業に対し、情報を公開し汚染対策を講じるよう要請してください

「PFOA汚染問題を考える会」は集まった署名をたずさえ、4月上旬、森山市長に要望書を提出する。

=つづく
(敬称略)

※この記事の内容は、2022年3月29日時点のものです。

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PFOA汚染と母子(令和の「水俣」No.4)
https://www.youtube.com/watch?v=csXnooscrBk

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