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Vol.22158 コロナ第七波拡大中、発熱外来診療逼迫の原因は日本の医療ガバナンスの旧弊にある

医療ガバナンス学会 (2022年8月5日 06:00)


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東京理科大学基礎工学部名誉教授
山登一郎

2022年8月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

今コロナ第七波、救急搬送困難事案や発熱外来診療逼迫、その先の医療崩壊がまたぞろ騒がれている。相変わらずの大騒動だ。何故変わらないのだろうか。その原因は、一に日本コロナ対策での旧態依然たる医療界のマインドにある。今回ここで明示的に批判する。

コロナ対策における日本の市中感染状況情報非収集・非公開をずっと批判してきた。国民には知らしむべからずの体制だ。先日(7月26日、Vol.22147)も同趣旨の記事を掲載して頂いた。

一昨年(2020年)のコロナ当初、重症者重視、つまり軽症者軽視の旧来からの医療界の方針で、37.5度以上発熱4日以上という検査制限を設けた。そのため無症状や軽症者の多いコロナはすぐに市中で感染拡大した。検査制限は当初の緊急事態宣言中に訂正された。
その後プロ野球やJリーグが、検査を条件に再開許可された。その制度が無症状者対象民間自費検査だ。高齢者施設などに拡大、一昨年末には市中の民間自費検査もスタートした。昨年末始まった無症状者対象市中無料検査も同じ枠組みだ。
日本の医療界では、これら検査は医療行為とは見なさない。その旧弊(有症患者だけが医療対象者であるとの方針)がそのまま医療界の自分の首を絞めることになっていると思う。何ともバカバカしい騒動ではなかろうか。どういうことか。

これら検査は無症状者対象であり、医療対象患者ではないため、医療行為にあたらないとの解釈だろう。だから検査は陰性を想定している。たとえ検査陽性でもそれでコロナ感染確定とは見なさず、だから新規感染者数の情報には採用されないのだと憂える。
さて、その検査陽性者はどうするのか。再度医療機関を受診して、そこでの検査陽性を保健所に報告してコロナ感染確定になる。その後は入院か自宅療養か保健所が差配する。何ともバカバカしく回りくどいやり方ではないか。
第七波、当然ワクチン効果もあり、無症状が大多数、旅行や感染拡大で市中自費検査を受ける。その陽性診断者は医療機関での再受検を要請される。発熱外来医療機関に朝からずらっと列を作る。発熱有症状で頭痛・悪寒・下痢など各種症状のある患者も同列に並ぶ。受診者多数で受診拒否も起こる。これが毎度の大騒動の元だ、と糾弾したい。日本だけの毎度の茶番劇と言ってもいいと思う。

これで、どこが問題か、お分かり頂けると期待する。
この大騒動の土台にあるのは、ひょっとして日本医療界の縄張り確保・維持目的なのだろうか、はたまた政治家の民間検査機関や医療機関への多額な税金のばらまき目的なのだろうか。
感染症法2類分類でも5類でもどうでもいいと思う。単にコロナ感染阻止を第一に目指した科学的論理的な制度設計をすればいいだけのはずだ。欧米韓国のように、広く市中検査を行い、その診断陽性者をそのまま大規模療養施設に隔離すればいいだけだ。(福井県の野戦病院はどうなったのだろうか。日本での大規模療養施設の準備はまた立ち消えになってしまったのだろうか。)それで発熱外来逼迫も保健所機能逼迫も、そして自宅療養者の悲惨な状況も救急搬送困難事案もすべて胡散霧消する。医療崩壊など起こり得ないだろう。
日本では、厚労省の指図の元、わざわざことを大事にして、税金と人の命や労力や時間を無駄に浪費するどんちゃん騒ぎを引き起こしているように見える。

制度設計は厚労省が行った。そこではこの医療ガバナンス全体を俯瞰管轄する責任がある。しかしこれまでその責を果たさず、細部にだけ拘っていたと見なせる。4月にも先日にも書いたが、政府自治体や専門家のコロナ対策責任者はしっかり責任追及されるべきだろう。そして、こんな蚊帳の外に置かれ続けた国民は、しっかり目を見開いて、各種政策を批判・告発する義務があるのではないだろうか。日本の低経済成長も低い生産性向上もこの医療界の旧態と同じ土壌から生まれていると心配する。(この医療界の旧態のせいで、無駄な金と労力と時間を浪費して、わざわざ生産性を低下させているのだから。)

ちなみに今回第七波の日本は、世界最高の新規感染者数とのこと。きっと、最近やっと市中無料検査が広がり、多くの方が検査を受け、上述のようにその陽性判定者が再度医療機関で検査を受けて感染確定された結果なのだろう。未だに公表新規感染者数の有症無症や民間検査由来かなどの内訳は知らされない。でも現在の新規感染者の多くは市中検査での陽性者由来が多く、無症状にもかかわらず医療機関の再受検をさせられている方が大多数なのだろう。是非これまでも批判してきた各種検査結果情報をすべて収集公開して欲しいと願う。

 

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