最新記事一覧

Vol.22168 日本には銃もマリファナもいらない

医療ガバナンス学会 (2022年8月17日 06:00)


■ 関連タグ

難治性疼痛患者支援協会ぐっどばいペイン代表理事
日本麻協議会事務局代表
若園和朗

2022年8月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

戦後の混乱期に制定されて以来大きな見直しがなく、科学的にも社会状況的にも不合理な面が目立つようになってきた「大麻取締法」。筆者は、伝統的な大麻草栽培者の立場から、また大麻の薬効に期待する患者家族の立場からその見直しを求めてきました。昨年、厚労省は同法を見直すための検討会を開催。筆者も意見を述べる機会を与えられ「大麻取締法」改正の方針がとりまとめられました。今年に入り、国会内に「麻(大麻草)の活用勉強会」が立ち上げられたり、「骨太の方針」に大麻の制度改正が位置づけられたりと永田町も巻き込んで同法の見直しの動きが活発になっています。

同法の見直しの目的は、
(1)これまで例外なく禁じてきた大麻の医薬品としての施用を可能にすること。
(2)存続の危機に追い込まれている農作物としてのわが国の大麻草栽培を適正に行えるようにし、一般産業として活用できるようにすること。
(3)そして、特に青少年に広まりつつある薬物としての大麻、すなわちマリファナ等(以下、マリファナと表記)の濫用を抑止することでしょう。

まとめて言えば、これまで禁止すること一辺倒だった方針を転換し、濫用を防いだ上で大麻草の良さを生活に役立てていこうという方向性です。
筆者は、医療利用と産業活用は順調に進んでいくと予想しています。しかし、濫用抑止は今後の展開次第で逆効果にもなり得るのではないかと心配しています。なぜなら、国民の多くは「大麻」=「マヤク」という強烈なイメージを持っています。そのため、この動きが薬物としての「大麻」であるマリファナの規制が緩和された、つまりマリファナは安全だと間違って解釈されがちだからということ。さらに、この隙に付け込んで「大麻解放家」などと呼ばれるマリファナ合法化を目論む勢力の動きが活発化しているからです。

■有害情報から若者を守りたい
その一例として、一部のマイナーな芸能人にとどまらず有名人までマリファナを禁じることは時代遅れであるかのように平然と語るようになっていることが挙げられます。
例えば、タレントのモーリー・ロバートソン氏が書いたとされる「大麻推進派に必要なのは説明のロジックと右への接近?」という文書。この中で氏は、「汚い手を使っても政治家に取り入ってマリファナ解禁を成し遂げろ」と呼びかけています。
(参考1 https://wpb.shueisha.co.jp/news/society/2022/06/20/116588/
薬物濫用は、発達途上の若い人ほど被害が深刻なのは当然のこと。マリファナを常用すれば知能低下など不可逆的な障害を招くことは十分確かめられています。
青少年を健全に育てるのは大人としての義務。言論は自由なのかもしれませんが、薬物濫用を勧めるような公共の福祉に反する情報を発信することは、社会に大きな影響力をもつ有名人であればあるほど厳に慎むべきでしょう。

■マリファナを吸いたがる人々のロジック
マリファナは、大まかに言えば認知の機能や記憶力など知的能力を下げた上で多幸感という脳内にある快楽のスイッチを強制的にオンにする働きをします。それは、正常な精神活動を妨げ交通事故などの原因にもなる社会の安全を脅かすもの。何も良いことなどあるはずはないのに、なぜマリファナを吸いたがる人は、熱心にこれを流行らせようとするのでしょう?害を自覚できず理性もどこかへいってしまい素晴らしいと感じさせられてしまう。
それが、マリファナの恐ろしさの本質なのかもしれません。
(参考2 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000180755.html

マリファナを吸いたがる人は、しばしば「マリファナを合法化することで管理がしやすくなり未成年の濫用を減らせる。」などと得意げに語ります。米国などマリファナが蔓延してしまっている社会ならその可能性は否定できないかもしれません。マリファナに手を出す人が格段に少ない日本では青少年の濫用が増えることは目に見えています。
また、「酒やたばこよりマリファナの方が害は少ない。だからマリファナを解禁せよ。」との主張も見られます。悪いものが二つあるのだから三つめも認めろとは、いかにも幼稚な理屈です。そもそも、まったく違うもの同士の害を比べても何の意味もありません。砂糖と塩とどちらの害が大きいかを比べることに等しいのですが・・
そのほか、陰謀論をいくつもでっち上げてマリファナを正当化しようとしたり、規制側を悪者に仕立て上げたりして自分たちの正しさを認めさせようともしています。
彼らは、自分の快楽や趣味嗜好を追求するため、あるいは金儲けのためなら若者の未来や社会の安全を犠牲することも厭わないのでしょうか?
マリファナ解禁を訴える人の中心は、おそらくすでに経験済みで、その虜になってしまった人たちでしょう。つまり、この中心にいる人たちは少なくとも順法精神の欠けた人たちです。そんな輩に日本社会がかき乱されないよう毅然と「大麻取締法」の見直しを進めてほしいと思います。

■日本には銃もマリファナもいらない
もう一つのロジックとして、「米国を始め世界はマリファナ解禁に向けて動いている。その潮流に乗り遅れてはいけない」というものがあります。米国は、見習うべき面の多い偉大な国かもしれません。しかし、見習ってはいけない部分もあります。それは例えば、銃規制と薬物対策です。米国の銃による死者は、年に 4 万 5 千人、薬物による死者はそれをしのぐ 10 万人超。
(参考3 https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_62b26c25e4b06169ca9f41a4
(参考 4 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211118/k10013352701000.html

日本では、銃による死者も薬物による死者もほとんどないレベルで、言い方を変えれば日本は、銃や薬物の危害から国民が守られている安全な国です。それを無視して世界の潮流は・・と語ることの愚かしさに気づいてほしいものです。
大抵の日本人は、マリファナなどの薬物の恐ろしさや虚しさを直感的に理解しています。
ほんの一握りのマリファナの害について理解できない層が大きな声を挙げ、若者の大麻濫用を助長していることは本当に嘆かわしいと思います。
法律は、国民の倫理観にも強い影響力を持ちます。「日本には銃もマリファナはいらない」との強い意思を実装する法改正となることを願わずにいられません

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ