最新記事一覧

Vol.22191 結婚すればエステや指輪割引、披露宴に5万円給付/全国ワースト100事業 中部・近畿編 (シリーズ「虚構の地方創生」第3回)

医療ガバナンス学会 (2022年9月14日 06:00)


■ 関連タグ

Tansa
リポーター 辻麻梨子

2022年9月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

税金が結婚を促す“特典”にまで使われていた…。
地方創生臨時交付金が充てられた無駄遣い100事業の中から、今回は中部・近畿編を報じる。

Tansaは、2020年度の第1次と第2次の補正予算で計上された地方創生臨時交付金の事業をデータベース化した。都道府県と市町村が内閣府に提出した事業計画に基づいている。事業の数は約6万5000件、金額は計3兆円に上る。

データベース上の全事業に目を通し、納税者の視点から無駄遣い100事業を選んだ。

記事中の事業費は、自治体によって交付金の額を示している場合と、交付金以外の予算も含む総事業費を記している場合とがある。さらに表中から一部の事業を選んで、その取材結果を報じる。

●中部
富山県砺波市:街路バナーを更新(48万円)
石川県能登町:巨大イカモニュメントを制作(3000万円)
福井県:入籍するカップルへのカタログギフト贈呈、花火イベント実施、ウエディング動画・キャンペーン動画を配信(1億8043万円)
山梨県:東京五輪自転車競技の県内コースの360度VR映像の撮影、制作委託(539万円)
山梨県:水素・燃料電池分野PRのための新聞広告、メディア向けバスツアー、展示会出展費用の補助(1728万円)
長野県小川村:村民1人あたり1万円を給付(2420万円)
長野県豊丘村:(3054万円)
(1)幹線道路の歩道の街路灯をLED灯に変更
(2)村内の総合型スポーツクラブでノルディックウォーキング教室を週1回程度開催
岐阜県各務原市:市内施設のウェブサイトを巡るスタンプラリーを実施(157万円)
岐阜県養老町:コロナウイルスの収束を願い、花火を打ち上げる(1750万円)
岐阜県坂祝町:医療・介護施設に鉢植えの花を贈呈(43万円)
愛知県:県立学校の湿式トイレの床の乾式化や便器を洋式化(18億6784万円)
愛知県大府市:広報大使による健康づくりや文化振興の動画配信(40万円)
愛知県扶桑町:広報誌の配布委託(572万円)
三重県:第9回太平洋・島サミットの開催に合わせたSNSキャンペーンの実施(1843万円)
三重県度会町:災害測量や道路、橋梁の点検に使用するドローンの購入(280万円)

●福井県 「結婚応援事業」結婚すれば花火大会に招待

福井県は、コロナ禍でも結婚する人を応援し県内の婚姻数を支える目的で「ハッピーマリッジ応援事業」を実施した。財源として、9900万円の地方創生臨時交付金が使われた。

事業の内容は以下の四つ。
(1) 結婚に関連する5万円相当の商品やサービスのプレゼント3000組分。県内の式場やレストラン、アクセサリーショップなどの結婚関連事業者100店舗の商品・サービスが載っているカタログの中から選べる。

例)「頭皮環境改善スパ」、「タキシードやジャケットなど衣装の5万円割引」、「結婚指輪の5万円割引」、「露天風呂付客室のペア宿泊券」、「二次会での割引とシャンパンタワーのプレゼント」、「ブーケや花束の5万円割引」

(2) ウェディングムービーの無料撮影10組分。撮影にはドローンも使う。

(3) 福井県で開催する花火イベントに10組の入籍カップルを招待。福井新聞オンライン(2021年3月18日付)によると、2021年3月13日に同県美浜町の飲食店で開かれた花火大会の観賞イベントでは、日本海をバックに1300発の花火が打ち上がった。参加した夫婦はコロナ禍で結婚を控えているカップルを念頭にして、福井新聞の取材に「こんな時だからこそつながりが大切。一歩踏み出し2人で困難を乗り越えて」とエールを送った。

(4) コロナ禍でも結婚した夫婦のエピソードと、結婚を考えている人への応援メッセージを集めた動画の配信。福井県は「コロナ禍での結婚をためらっている方、若者の結婚を応援してくださる県民の皆様はぜひご覧ください」と、県のホームページに動画をアップしている。
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/joseikatuyaku/marriage/kiunjousei.html

県民活躍課はTansaの取材に「婚姻件数、婚姻率共に数値としては減少しましたが、婚姻率の全国順位は2019年度の23位に対し、2020年度は16位に上昇しております」と回答し、事業の意義はあるとの見解だ。

●愛知県「トイレ改修」18億円申請しても、未だ使わず

愛知県は、県立学校の湿式トイレの床の乾式化や、便器の洋式化を進める事業を、2019年度から2023年度の5年計画で実施している。湿式トイレはタイル貼りで、洗い流して清掃をした際に乾きにくい。学校の衛生管理が目的だ。対象は県内の県立高校と県立特別支援学校の合計2076ヶ所。現在53.2%の工事が完了している。

当初の計画では、県の一般財源だけで事業を進める予定だったが、2020年度に地方創生臨時交付金の制度が始まった。県は「学校の臨時休業等を円滑に進めるための環境整備」という名目で、18億6800万円の交付を受けた。

だが「学校の臨時休業を進めること」と、「学校の衛生管理」は関係ない。なぜ関係のない名目で県は交付金を申請したのか。

県教育委員会総務課の担当者が言う。
「そもそも(地方創生臨時交付金を使う)事業計画自体が、風呂敷を広げたようなって言ったら言葉が変だけど、対象になるような事業を全部幅広く拾ってあるような形です」

地方創生臨時交付金は今のところ、トイレ工事には使っていない。2021年度まで、県の一般財源である約50億円を充てている。この先も交付金を使わずに済んだ場合は、飲食店向けの協力金など他の事業での不足分に充てるか、返還する予定だという。

●愛知県扶桑町「ポスティング委託」地区役員の負担を軽減

愛知県扶桑町は、町の月刊広報誌「ふそう」の投函委託費用を全額地方創生臨時交付金でまかなった。2020年度は2ヶ月分で101万円、2021年度は7月号から2022年2月号までの配布分で471万円がかかった。

広報誌は町の約1万3300世帯に配布されている。これまでは地区の役員が、各地区の班長に配布し、班長がそれぞれの家庭に配っていた。しかし、コロナ禍でこうした町民同士の接触を減らすため、ポスティング業者に委託することにしたという。だが理由はそれだけではない。

政策調整課の職員はこう話した。
「地区の役員は他の仕事をしながらの人もいるので、1軒1軒への配布にはこれまで手間をかけてしまっていた」。

●近畿
滋賀県大津市:結婚披露宴等を開催した人に5万円の給付金(170万円 )
京都府:文化財のライトアップなどの設備工事費や広報委託料(5000万円)
大阪府堺市:自主防犯パトロール車両への急発進等抑止装置設置とドライブレコーダー設置経費を補助(254万円)
大阪府池田市:全世帯に電気料金支援給付金を支給(2億6597万円)
兵庫県姫路市:姫路城のライトアップ(3000万円)
兵庫県尼崎市:SDGsに資する行動に対するSDGsポイントの拡充、市独自の決済アプリを活用したポイント還元(3841万円)
兵庫県西宮市:体育館への自動扉設置工事(328万円)
奈良県桜井市:市のマスコットキャラクターの新イラスト作成(49万円)
和歌山県和歌山市:市内の公園の除草、遊具の保守点検に協力する地域団体に助成(472万円)

●滋賀県大津市「結婚披露宴に給付金」市議の反対動議も否決

滋賀県大津市では、感染対策をとって結婚披露宴を行ったカップルに対し、1組5万円の給付金を支給した。財源には地方創生臨時交付金、170万円を充てた。

結婚披露宴の定義はとくになく、10人以上が集まり10万円以上の費用をかけて開催される会が対象だ。会場はホテルや結婚式場のほか、飲食店などを使うこともできる。出席者から会費を集めて行う二次会や三次会なども広く対象になる。

事業は2020年9月から、2021年3月にかけて実施された。当初は先着200組に支援する予定で1050万円の予算を組んだが、実際に利用したのは34組にとどまった。市の企画調整課は、「コロナ禍でなんでも中止にしてしまうのではなく、感染対策をとれば開催できるという市の意思表示になった」と話した。

だが2020年7月、市議会では効果を疑問視する無所属の谷ゆうじ議員が「適切ではない」と、補正予算を組み替える動議を提出。以下の3点を指摘した。

(1)会費を集めている場合などの収支の実態に関わらず、披露宴の二次会等といった宴席の開催費用についても支給の対象に含まれている

(2)コロナ禍のもと、会場のキャンセル料の発生や、その他経済的な事情等から、披露宴の開催が困難な市民を対象とする事業ではない

(3)第2波、第3波への備えが目的であれば、ホテルや飲食店などを運営する事業主に対し、感染対策などに必要な費用を支援するべき

谷議員が説明を終えたあと、質問や討論をする議員はいなかった。直後の採決で賛成した議員は2名のみ。動議は否決された。

●兵庫県尼崎市「SDGsポイント還元」運河の散歩で5ポイント

兵庫県尼崎市は、SDGsに関連する行動を取った市民にポイントを付与する事業を行なった。市が「SDGsを促進する」と考える行動ごとにポイント数を決め、実行すればポイントが付与される。1ポイント1円で換算し、事業に参加している市内の約900店舗で使える。市が掲げるSDGsの目標に近づくことと、市内の経済活性化がねらいだ。

尼崎市はSDGsのために国際的に定められた行動指標に沿って、今回の事業で発行するポイントを決めた。以下、抜粋する。

・すべての人に健康と福祉を
巴コース(すっぽん料理のフルコース)の注文→80ポイント
音楽を使った健康体操。参加者に付与→5ポイント
タマネギや豆腐が入ったヘルシー鍋の注文→100ポイント

・エネルギーをみんなにそしてクリーンに
省エネ家電の買い替え(冷蔵庫)→6000ポイント
CO2フリー電気を契約し、1カ月利用する毎に付与→900ポイント(※ポイント付与は1年間限り)

・海の豊かさを守ろう
SDGsフェア参加→50ポイント

・陸の豊かさも守ろう
尼崎運河周辺の散策イベント参加→5ポイント

・ジェンダー平等を実現しよう
女性センターの講座に参加→50ポイント

2020年度に市民SDGsに関連する行動をして得たポイントは、約2370万円分。最も件数が多かったのは1回50ポイントをもらえる本事業へのアンケート回答で、4400件だった。金額で多かったのは、特定健診の受診で500ポイントもらえる2,541件だ。

次回は中国、四国編を報じる。

※この記事の内容は、2022年3月30日時点のものです。

【Tansaについて】
Tokyo Investigative Newsroom Tansaは、探査報道(調査報道)を専門とするニューズルームです。暴露しなければ永遠に伏せられる事実を、独自取材で掘り起こし報じます。広告収入を受け取らず、独立した立場を守ります。誰もが探査報道にアクセスできるよう、購読料もとりません。NPO法人として運営し、寄付や助成金などで成り立っています。
公式ウェブサイト:https://tansajp.org/

●シリーズ「虚構の地方創生」:https://tansajp.org/investigativejournal_category/region/

●取材費を寄付する:https://syncable.biz/campaign/2449

【YouTube番組で解説!】
着ぐるみ・花火に消えた交付金16兆円【探査報道最前線 地方創生 NO,1】
https://youtu.be/8AJiOQV-sSE

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ