医療ガバナンス学会 (2023年1月4日 06:00)
伊賀内科・循環器科
伊賀幹二
2023年1月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
2022年現在では、国民ほぼ全員がスマートフォンを持ち、スマートフォンは日常生活を便利にするために必須のアイテムです。しかし、四六時中スマートフォンを触らなければ我慢できない人たちをみると、彼らはスマートフォンに日常生活を支配されているのではないかと感じることもあります。
歩きながら・入力しながら何を閲覧しているかと調べてみると、主にはラインやゲーム動画鑑賞です。それらは、寸暇を惜しんでみなければいけないものでしょうか?多くの中高生の「すぐにラインへ返信しなければ」という脅迫感は、日本文化特有の同調圧力によるのかもしれません。
私は何人かの若者に「歩きスマホ」の危険について質問しましたが、彼らはスマホしながら歩いても自分から他人を避けることができて、危なくないとの認識でした。一方、高齢者に同じことを質問すると、「歩きスマホ」している人には近づかないように注意しているとの意見が多くありました。「歩きスマホ」をしている人たちは、他人がぶつかられないように注意をはらっているということを理解されていないのでしょう。
私は、「歩きスマホ」に対して、車の制限速度超過、駐車違反と同じく罰金を課してほしいと考えています。そして、未成年者でも簡単に負担できる1000円という比較的低額の罰金で定期的に取り締まりを実施して「歩きスマホ」への抑止力にしてほしいと思っています。自動車・自転車運転中のスマホ閲覧には罰則がありますが、現実的にはあまり施行されていないようにと感じます。罰則があってもほとんど実施されていないのであれば抑止効果とはなりません。
みんなが快適に、安全に生活できるようなルールを作り、ルールを守らない人には、きちんと罰金を払わなければならないということを多くの人間が共有すれば、「歩きスマホ」をする人は減るでしょう。もちろんゼロにはならないのはわかっています。しかし、スマートフォンに閲覧・入力するには、立ち止まってみるものという新しい常識が国民に共有され、「歩きスマホ」に多くの国民が違和感を感じる世の中になってほしいと思います。それは、30年前では会議で喫煙に違和感がなかったですが、現在ではそのような人がほぼいない状態に変化できているのです。
そして、学校や会社での所属社員・学生に対する組織としての「歩きスマホ」の禁止も加えることができればより有効であると思います。スマホの側から、動いているときには入力できないような工夫も必要かもしれません。
スマートフォン中毒になり、登校拒否となっている小学生の例も小児科医から聞かされます。場所・時間をわきまえずにスマホを閲覧している大人が当たり前の世界であるなら、子供のスマホ依存症が増えるのは当然ではないでしょうか? 子供のスマホ依存症防止に対して、彼らにスマホ使用時間を制限するよりをするより、周りの大人が節度のある、他人に迷惑をかけないスマホの使用法することにより改善できるのではないかと思います。