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Vol.23067 マスク着用ルール緩和 それでも「つけないといけない」雰囲気が続くと女医が思う理由

医療ガバナンス学会 (2023年4月13日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(2023年3月8日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2023030600071.html?page=1

内科医
山本佳奈

2023年4月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

新型コロナウイルス感染症の感染予防対策の一つであったマスク着用のルールが、3月13日から緩和されます。それに加えて、マスク着用以外のアクリル板の設置などの感染対策も見直しが検討されているほか、新型コロナウイルスワクチンの無料接種の見直し、新型コロナウイルス感染症という名称の変更も検討されているようです。

常に着用することが当然のことのようになってしまったと言っても過言ではない「マスク」の存在ですが、「マスク着用のルール緩和」に対する意見は様々なようです。日本に住む同世代の友人に聞いてみたところ、「そろそろマスク着用をやめないと、マスクをつけることがこの先ずっと当たり前になってしまうと思う……」「マスクを着用してくださいと行く先々で言われなくなる日が待ち遠しい」「着用は義務ではないのに、マスクをしないといけない雰囲気が嫌だった、早くマスクなしで生活したい」という声が多く聞かれる一方で、「少なくとも職場ではマスクを外せない雰囲気が残りそう……」「みんながマスクを外すかどうか、様子をみてから(自分もどうするか)判断しようと思う」という声も聞かれました。

2月18日と19日の両日、マスク着用のルール緩和についてたずねた全国世論調査があります。朝日新聞が実施したもので、「あなた自身はマスクを着けることが減ると思うか、減らないと思うか」と電話でだずねたといいます。その調査結果によると「マスクを着けることが減る」が49%、「マスクを着けることが減らない」が49%であり、世論は分かれていることがわかります。年代別でみても、それらの回答に大きな違いはなかったということでした。

原則としてマスク着用を推奨せず、着用の目安を提示した上で「個人の判断に委ねる」という日本政府の決定に対してどう思うか、同世代の友人に聞いてみたところ、「本当にマスクなしの生活がやってくるなら嬉しいけれど、やってくるとは思えない」「外せるなら外したいけれど‥マスクをするなと言われない限り、マスクを外しにくい雰囲気は残ってしまうんじゃないかな」という意見が多く聞かれました。

実は、クリニックのかかりつけの患者さんとの間でよく話題にのぼるテーマの1つが「マスクの着用について」でした。「いつまでマスクを着けないといけないのでしょうか」「マスクを着けないといけない雰囲気が、とっても嫌ですね」「マスクをつけてくださいと行き先々で言われるのが嫌で、休日はできるだけ外出したくないです」「感染対策のためというより、マスクをしていないと(着用してと)言われてしまうから着けているだけになっている気がします」など、マスクを四六時中しないといけないことに疲労感を感じ、感染対策のためというよりは周囲の視線を感じながらマクスを着用している人が思ったよりも多いということが度々ありました。

私自身、新型コロナウイルス感染症の感染対策としてのマスクの着用には、一定の予防効果が存在することはこれまで報告された論文から心得ているつもりです。例えば、

コロナ感染やコロナ感染による死亡率を減らすための公衆衛生対策(マスクの着用、手洗い、ソーシャルディスタンス)の有効性に関するメタ解析により、マスクの着用により新型コロナウイルス感染症の発生率を53%減らし、ソーシャルディスタンスにより新型コロナウイルス感染症の発生率を25%減らしたことがわかったと言います。

米国のカリフォルニア州に在住している友人は、「日本ではマスクをもう着けるなと言われない限り、マスクをずっとつけないといけないという雰囲気が続きそうだね」と言います。その友人が昨年10月に東京を訪れた際、マスクをしていない人が一人もいなかった街の様子に異様さを感じたようです。「着用が義務化されていないのに、マスクをしていない人が1人もいなかった。それってすごいことだと思う」と言います。

日本社会全体の「マスクを着けないといけない」雰囲気が続くのではないか、と私は予想しています。日本を離れている今はマスクを全く着用しない日々を送っていますが、日本の土地を踏んだ途端、マスクを自然と着けてしまう自分がいる気がしてならないのです。

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