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Vol.23066 マイナンバーカードと保険証

医療ガバナンス学会 (2023年4月12日 06:00)


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一般社団法人医療法務研究協会
副理事長 平田二朗

2023年4月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

マイナンバーカードを保険証として使用することを、政府が閣議決定した。かなり無理筋の決定である。
1.基本的立場
私の立場はマイナンバーカードを活用し、医療のDX化を推進すべきという考え方を基本としている。何事も政権がする政策に反対する立場ではない。ただし、その内容が国民の利益にかなうものであることを前提としている。国民の医療と健康に関する情報のDX化は、国民全員の身体や精神に関する情報がそこに詰め込まれるということになる。政権や政治家や官僚、医療に関するステークホルダーたちが、自らの利権を絡ませようとすることは、本来の医療のDX化によって得られる国民の利益を毀損することにつながるし、そのことによってかえって問題を複雑にしてしまう

2.医療のDX化
国民の医療と健康に関する情報がDX化を通じて、プラットホームに収容されたときに、そこに収容された情報は誰のものかというと、国民個人の情報は国民それぞれの個人のものである。いわゆる個人情報となる。それもとびっきりセンシティブな情報である。この個人情報は政権や政治家や、官僚、医療機関、ステークホルダーたちが利用しようとしても、国民個々人の許諾がない限り使用してはならない。利用しようとする人たちは国民個々人に理解を得、許諾を受けることが前提となる。国民個々人は自分にとって利益になることかどうかで個別にその範囲や相手先の判断を下す。このプロセスを経ずにプラットホームに入った個々人のデータを利用しようとした場合、そこに国民個々人から透明性のある見える化されたセキュリティシステムの介入が必要である。
政権や官僚や医療機関は勝手に情報を抜き取れると考えている節があるが、あくまで患者国民個々人の許諾のプロセスが厳格に決められなければならない。ともすればセキュリティ対策とは、医療機関や行政外のものに対する対策のように勘違いされているが、セキュリティで守るべき情報とは国民個々人の情報であり、行政であろうが医療機関であろうが第三者である。ましてや匿名化したのでデータは勝手に使いますという論理は成り立たない。情報提供者である国民個々人の許諾を前提とする。

3.医療情報は誰のもの
閣議決定された、マイナンバーカードを保険証として扱う場合、医療情報や健康情報をプラットホームに収容して活用し、多分行政や医療や保険財政を飛躍的に管理統制できる形となるであろう。しかし本来の情報の所有者は患者や国民一人一人である。第三者の侵入によりデータが悪用されるかもしれないという心配よりも、自分のデータを政権と行政、官僚、医療機関、医療に関するステークホルダーたちが、勝手にのぞきかつ勝手にそれぞれの利権に使われてしまうのではないかという恐れと警戒心を国民が持っている。
「消えた厚生年金問題」の時に社会保険庁の職員が時の総理大臣の厚生年金納付記録を暴露した事件があった。プラットホームに入った国民個々人の医療及び健康情報をのぞける人達こそが一番国民に信頼されていないのが、現状である。本来医療費の重複診療をなくし、標準医療とはかけ離れた診療を排除し、国民個々人に対して適切でかつ効率的な医療が展開され、費用対効果が発揮されれば、これは国民にとっても最適であることは論を待たない。医療のDX化を絶対に認めない人々が存在するが、このセキュリティ対策が的外れで透明性がないことが主な理由となるであろう。そして「お上」のすることに根強い不信感がある。
匿名化してのデータ活用は医学医療の進歩にも大きく貢献する。セキュリティ対策を見える化し、情報システムの技術で国民に納得させるプロセスを経なければ、いつまでたっても係争の種となることは見えている。医療のDX化は多分年間数兆円の費用削減と飛躍的な医療医学の進歩をもたらすと想像する。なのにそれぞれの利権の道具にしようとする動きが垣間見える。
日本医師会は医療のDX化を推進すると言っている。しかしながら、彼らが一番死守しなければならない「自由開業医制」がこのプラットホームを官僚統制の手段として使われた場合、危機に陥ることは必至であろう。「同床異夢」と考える。医薬品や医療機器産業は自社製品の開発や治療データに関して独自の情報収集作業が省ける。数万人と言われるMRの大半が不必要になる。医療のDX化の波及効果は測り知れない。だからこそ内閣の閣議決定となったのであろうが、手順と方法を間違えば大きな政治問題となるのは必至である。情報産業や経済産業省、厚生労働省が力を入れて取り組もうとしているが、密室で準備している感が否めない。また目的そのものが矮小化されたものであり、国民が納得する内容ではない。
繰り返しておくが、医療のDX化はその目的が国民の利益にかなう事であれば、絶対に必要である。関係する人たちの利権を絡ませなければ、反対する人たちはいない。便乗して利権を加えようとするから、国民から警戒される。

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