医療ガバナンス学会 (2023年5月1日 06:00)
Tansaリポーター
中川七海
2023年5月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
事務局長の谷口武氏ら会のメンバー3人は、午前10時前に大阪・摂津市にあるダイキン工業淀川製作所に到着した。職員に案内された建物1階の会議室では、すでに2人のダイキン職員が待ち構えていた。ところが名乗らず、名刺も出さない。谷口事務局長が互いの自己紹介を呼びかけたことで、ダイキン職員の名前がわかった。
・小松聡 化学事業部 企画部 環境技術・渉外専任部長
・濱谷武彦 淀川製作所 地域社会課
考える会のメンバーは、ダイキンに対して情報公開や地域住民への被害の補償を求める要望書と、ダイキンの十河政則社長宛の質問書を手渡した。自身の血液から高濃度PFOAが検出された市民からの手紙も読み上げた。
質問は以下の13項目で、3月31日までに文書での回答を求めたが、小松聡部長はそれはできないと即答。回答に応じるかどうかもわからないと答えた。
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1、2020年・2021年の大阪府の調査で一津屋地域地下水から2万〜3万ng/lのPFOAが検出されている。貴社周辺に全国最大のPFOA汚染が広がっている実態を認めるか。
2、摂津市におけるPFOA汚染について、大阪府・摂津市とも貴社を「主たる汚染源」としているが、貴社は「主たる汚染源」であることを認めるか。
3、PFOAは残留性の非常に高い物質として「永遠の化学物質」と呼ばれている。貴社が過去に排出したPFOA総量がどれだけか、社会的責任において公表すべきではないか。
4、現在の敷地内濃度、公共下水への排出濃度を公表すべきではないか。
5、貴社は遮水壁を作り敷地外への地下水の流出を防ぐとのことだが、すでに敷地外に汚染は広がっている。敷地外の汚染についての責任をどう考えるか。
6、周辺地域では土壌汚染も広がっている。2022年度中に環境省・農林水産省の土壌調査が行われた。土壌から農作物への移行も調査されたとのことだ。貴社は2022年1月の摂津市議会への回答によると「土壌からの曝露は現時点ではあると考えていない」とのことだが、国の調査結果によっては土壌からの曝露についてもあると認めるか。
7、敷地外周辺地域の土壌汚染への対策についてどう考えるか。
8、地域住民の血液からは高濃度のPFOAが検出されている。2022年の摂津市議会への回答によると、貴社は、「測定方法や分析精度が不明」としているが、どのような測定方法・分析精度なら認めるのか。
9、現在もしくは過去に、貴社社員のPFOA濃度を調べる血液検査はしているのか。
10、測定方法や分析精度を問題にするなら、貴社自身が住民の不安に応えて血液検査を実施する考えはないのか。
11、2022年7月米国の科学・工学・医学アカデミーはPFASの血中濃度と健康リスクの関連についての臨床的なガイダンスを発表した。貴社は「PFOAによる健康被害が発生する状況とは認識していない」と回答しているが、住民の健康調査を行わずに「被害が発生する状況にない」とは何を根拠にしているのか。
12、貴社自身が住民の健康影響調査を実施する考えはないのか。
13、摂津市と貴社は「環境保全協定」を締結している。この協定は新たに発生する物質についても書かれている。貴社は協定に基づきPFOAについて摂津市と協議する考えはあるか。
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この日は新聞社やテレビ局など報道関係者も取材に訪れたが、ダイキンは淀川製作所内に立ち入らせなかった。大阪・梅田にあるダイキン本社からやってきた広報グループの芝道雄氏と野田久乃氏が、集まった報道関係者が製作所内に入らないよう監視する徹底ぶりだった。
10時30分過ぎ、署名提出を終えた谷口事務局長たちが淀川製作所から出てきた。
Tansaの取材に対して谷口事務局長は「ダイキンは真摯に対応するとは言っていたが、口では何とでも言える。きちんと市民からの質問に答えていただきたい」と話した。
考える会メンバーの谷詰眞知子氏は元保育士だ。ダイキンの対応にがっかりして言った。
「私は市内に住む子どもたちのことについて訴えました。ですがダイキンは、こちらが何を言っても反応がありませんでした」
http://expres.umin.jp/mric/mric_23078.pdf
写真:左から、PFOA汚染問題を考える会の谷詰眞知子氏、谷口武事務局長、ダイキン工業の小松聡部長、濱谷武彦氏(写真提供=PFOA汚染問題を考える会)
=つづく
(敬称略)
※この記事の内容は、2023年3月24日時点のものです。
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