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Vol.23079 ピロリ菌除菌で胃がんを制す

医療ガバナンス学会 (2023年5月8日 06:00)


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北海道医療大学
北里大学大学院医療系研究科
小和田暁子

2023年5月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が発見されてから40年たちました。
世界保健機構(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)の『ピロリ菌は胃がんの原因である』という報告があってから29年。日本でピロリ感染胃炎の患者に対する除菌治療に健康保険が使えるようになってから10年。IARCが『胃がん対策はピロリ菌除菌に重点を置くべきである』と発表してから9年。胃がん予防のための国際会議が『ピロリ菌に感染したすべての人にピロリ菌除菌治療が提供されるべきであり、胃がんハイリスク集団ではピロリ菌のマススクリーニングと除菌治療を考える必要である』という声明を出してから3年がたちました。

世界人口の半分以上がピロリ菌に感染しており、日本の感染人口は3,600万人と推測されています。日本では、近年、胃がんで亡くなる人が減ってきたといえ、いまだに毎年4万人を越える人が胃がんによって命を落としています。

●ピロリ菌検査・除菌治療は、胃がんからあなたの命を守る
ピロリ菌検査の結果で感染がわかった人は、除菌すれば、将来胃がんになるリスクを下げることができます。さらに、胃粘膜の異常の程度に応じ除菌後の定期的な胃内視鏡検査をすれば、胃がんを早期発見できます。除菌治療は、胃粘膜の変化からみて、若い時に受けることがより効果的だといわれています。
しかし、現在の日本で行われている国の胃がん検診では、一律に、胃内視鏡検査や胃バリウム検査を行っています。

●ピロリ菌検査から始まる胃がん予防は、医療費を削減できる
私は、これまでに日本の胃がん検診の費用効果分析について研究を重ね、現行の胃バリウム検査や胃内視鏡検査よりも、ピロリ菌除菌戦略(検査を実施し陽性であれば除菌治療を行う戦略)が医療費を大幅に削減し、胃がんになる患者数と胃がんによる死亡者数を大きく減らせることを明らかにしてきました。すなわち、除菌戦略は、医療経済学的見地からみても、日本にとって最適な胃がん対策なのです。

●親から子へのピロリ菌の伝播を断ち切ることも大切
では、ピロリ菌はどこからヒトの胃に入ってくるのでしょう。上下水道が完備した現代では、乳幼児期に、多くは親から子へ、ヒトの口から口を介して、胃の中に入ってくるといわれています。
だから、ピロリ菌が原因の胃がんを予防するためには、まず、親から子へピロリ菌をあげないことが重要です。また、親となる前に、検査を受けて、感染していたら除菌しておくことも有効です。

●胃がんで命を落とすことがない日本の未来を
胃がんハイリスクである日本。胃がんの原因の98%であるピロリ菌に対し、 世界に先駆け、勇気をもって立ち向かうことが、あなたやあなたの家族の命を胃がんから守るための最も近道です。
まずは、あなたとあなたの家族からピロリ菌検査を受けるようにしてください。ピロリ菌検査を健康診断の項目に取り入れている自治体もあります。
参考文献
1)   https://www.gastro-health-now.org/wp/wp-content/uploads/2022/01/GHN77.pdf
2)  https://www.gastro-health-now.org/wp/wp-content/uploads/2022/03/GHN78.pdf
3)  https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/hel.12837
4)  https://link.springer.com/article/10.1007/s10620-022-07795-z
5)  https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00365521.2019.1627408

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