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Vol.23086 外語大から医療分野の道に進んだわけ

医療ガバナンス学会 (2023年5月18日 06:00)


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この原稿はWeb医療タイムス(2023年2月8日)からの転載です。

福島県立医科大学
放射線健康管理学講座 研究員
趙 天辰

2023年5月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

放射線被ばくがあったが、それがどの程度のものか、当初避難指示があった地域は、今は避難指示解除されて住民が戻っていること、放射線による遺伝的影響はないことなど、県外の人だからこそ知ってほしい情報はたくさんある。

例えば、2020年度に東京で実施したアンケート調査で、「放射線による次世代への遺伝影響があるか」という質問に対し、約40%の人が「ある」と答えた。

この間違った認識を減らすためのプロジェクトに、現在私は参加している。私が正しい情報を論文やメディアなどを通して発信し続けることで、福島への理解を深めていただき、差別・偏見が少なくなることを願っている。もちろん、日本だけではなく、私の言語能力を生かし海外にも同様に現状を伝えていきたい。

●HPVワクチン接種を選択する手助けに

私が現在取り組んでいるもう1つのプロジェクトは、ナビタスクリニック新宿に協力いただき行っている海外の人が接種するHPVワクチン調査である。

ナビタスクリニックも、震災時に出会った医療ガバナンス研究所の上昌広先生の紹介であり、これもまた震災から生まれた縁である。

なんと、ナビタスクリニック新宿でHPVワクチンを接種する患者さんは、日本人よりも中国人のほうが多いのである。

その理由を明らかにしようと、同院を利用している日本人・中国人HPVワクチン接種者計400人にアンケート調査を実施した。

その結果、ナビタス新宿では中国語サービスに対応していること、中国SNSサイトでのクチコミが非常にいいこと、価格がお手ごろなことなどを理由に中国人が集まってきていることが判明した。

また、中国人は男性よりも女性のほうがはるかに接種率が高く、男性でもワクチンを接種することができることが知れわたっていないため、今後は男性に向けた情報発信も行う必要がある。

さらに、日本在住の外国人がより快適に病院を利用できるために、HPVワクチンを接種する外国人の特徴や、病院受診時に困っていること、医療ニーズを調査していきたいと考えている。

日本では、まだまだHPVワクチンの接種率が低い。先進国では80%以上の接種率を持つ国も多い中、日本はいまだ4%以下といわれている。

このように正しい情報を発信していくことで、少しでも多くの人がHPVワクチン接種を選択する手助けになれたらと思う。

●今後も日本と海外の架け橋に

今年3月で修士2年間の課程を修了する予定だが、4月からはまた同大学の博士として進学予定である。さらに4年間、勉強も含め、前述のプロジェクトに取り組んでいく必要があると、身の引き締まる思いである。

日本生まれ育ちの中国人として、福島で経験したことを背負って、今後も日本と海外の架け橋になれるような活動していきたいと強く思う。

 

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