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Vol.23122 細菌性膣炎に女医が罹患 「便利」だと思ったアメリカの受診システムとは?

医療ガバナンス学会 (2023年7月13日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(2023年6月14日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2023061300072.html?page=1

内科医
山本佳奈

2023年7月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

「デリケートゾーンのにおいが気になる……」「おりものが増えた気がする……」このような女性特有のデリケートゾーンのトラブルを経験したことはありませんか?

白色や灰色のサラサラしたおりものが生じ、外陰部のかゆみはあまり見られないものの、おりものや外陰部は魚が腐ったような生臭いにおいがする疾患に「細菌性膣炎」があります。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、細菌性膣炎は15歳から44歳の女性にとって最も一般的な膣疾患であり、2001年から2004年にかけて実施された調査によると、米国の女性における細菌性膣炎の有病率は29.2%であると推定されています。

ワシントン大学のKathryn氏らが世界の地域ごとの細菌性膣炎の罹患率を推定したところ、地域ごとに異なるものの、23%から29%の範囲にあり(ヨーロッパと中央アジアは23%、東アジアと太平洋は24%、北アメリカは27%、南アジアは29%)、世界的に細菌性膣炎の罹患率が高いことを指摘しています。

私ごとで恐縮ですが、先月末に人生で初めて細菌性膣炎に罹患しました。「おりものの量が普段よりも多くなってきたかもしれない」と感じつつも様子をみていたら、おりものの生臭いにおいを感じるようになりました。そのにおいも次第に強くなり、パートナーにも気が付かれてしまうほどになりました。

おりもののにおいが、今まで感じたことのない魚が腐ったような生臭いにおいだったことから、「細菌性膣炎かもしれない‥」と思いました。細菌性膣炎だとすれば、治療には抗菌薬が必要です。それに加えて、異常なおりものの匂いに、放置は良くないと不安になり、病院にかけこんだのでした。

担当してくださったドクターに症状経過を伝えたところ、分泌物を採取する検査をすることになりました。診察室には、日本の婦人科でよく見かける内診台はありません。四角い平な診察台が1台あるだけです。仰向けに寝転んだ後に、診察台の下のほうから足を乗せるための足台が出てくる仕組みで、自然と膝が曲がりリラックスでき、羞恥心を感じるまもなく、検査は終わっていました。

顕微鏡での確認を待つこと数分足らず。「あなたの予想通り、細菌性膣炎だから抗菌薬を飲むように。」と細菌性膣炎についてわかりやすく記載された用紙を渡されました。最後に、「採取した分泌物で性感染症の検査も実施したから、もし陽性が出たら1週間以内に電話をするわ。電話があったら受診してね」と言われ、診察は終了。受付で1週間分の抗菌薬をもらい、帰宅したのでした。

抗菌薬を内服してから翌々日には、気になっていたおりもののにおいが消え、おりものの量も減ったように感じました。病院から再受診を促す電話はなかったため、「性感染症ではなかったんだ」とホッとしていたところ、検査結果を確認するように指示が書かれたメールが届きました。指示通りにログインし、検査結果を確認したところ、細菌性膣炎は陽性と書かれていましたが、クラミジアやトリコモナスなどの性感染症は陰性。抗菌薬も飲み切り、再受診することもなく、診察も治療も全て終了することができました。

コロナパンデミック下では、コロナPCR検査に限り、結果が判明した時点でメールや電話で結果をお伝えするような対応をとっていましたが、日本では何かしらの検査を実施した場合、クリニックや病院に再受診していただき、結果をお伝えすることが一般的です。そのため、「時間がなかなか確保できず、受診が遅れてしまいました」といった声や、「よくなってしまったので、結果を聞きに行くことをすっかり忘れていました」なんていう声が外来診療の現場ではよく聞かれていました。

そのため、今回のように受診が必要な場合に限って受診を促す連絡があるということ、そして結果がインターネット経由でいつでも確認できる、というシステムはあらゆる人にとって、とても便利だと感じました。

私の場合、車が必須のアメリカに長期滞在しているものの、車を運転することができません。そのため、通院のためにウーバーを利用しなければなりません。ウーバーに支払う費用を考慮すると、再受診しなくても結果を知ることができるシステムは、私のような交通手段のない人にとって、とてもありがたいものであると思います。もちろん、仕事が忙しくてなかなか受診できない人にとっても、大変助かるシステムであることは間違いないでしょう。

さて、女性にとって最も一般的な疾患の一つである細菌性膣炎ですが、再発も少なくないようです。再発がないことを願うばかりではありますが、また異変を感じたら、今度は「治るかもしれないから、様子をみよう」と期待を抱くことなく、なるべく早めに受診して相談しようと思っています。

 

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