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Vol. 372 朝日新聞社の回答書に対する見解(2010年12月6日付で医科研HPに掲載)

医療ガバナンス学会 (2010年12月8日 06:00)


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東京大学医科学研究所
朝日新聞社報道に関する検討委員会
委員長 清木 元治
2010年12月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


1.これまでの報道の経緯

朝日新聞社の出河雅彦編集委員および野呂雅之論説委員らは、平成20年、医科学研究所(医科研)附属病院で実施されたがんペプチドワクチンを用いた臨床 試験中に生じた消化管出血について、医科研が開発を優先するが故に被験者の人権をおろそかにし、ワクチン投与中の出血についても隠蔽したかのような誤解を 与える記事を書き、朝日新聞社は、平成22年10月15日朝刊第1面トップ(資料1)および第39面に衝撃的な見出しとともに掲載しました。また、同日 39面記事では、当研究所の中村祐輔教授が今回の臨床研究を統括しており、オンコセラピーサイエンス社との間に重大な利益相反があるかのような記事も掲載 しました。更に、翌日(16日)の社説では、他機関に消化管出血の事実を報告していなかったことを「被験者の安全や人権を脅かしかねない問題」として、 「研究者の良心が問われる」と結論しています。
そこで、平成22年10月20日に医科研ウェブサイトで、記事への所長名の抗議を表明しました(資料2、資料3)。また、11月4日付で医科研代理人より 西村陽一朝日新聞東京本社編成局長に「貴社記事に対する抗議及び謝罪・訂正請求書」を送り(資料4)、紙面上、問題のある個所を具体的に記載した別紙(資 料5)を添付しました。その後、この抗議状に対する回答書が11月19日付文書として喜園尚史朝日新聞社広報部部長から代理人に送付されました。また、朝 日新聞社は回答書を送った旨を11月26日朝刊第37面に掲載し(資料6)、全文を朝日新聞社医療系報道サイトapitalに掲載しました(資料7)。ま た、続報を11月30日朝刊に掲載しています(資料8)。

2.朝日新聞社からの回答書について
11月19日付の朝日新聞社広報部からの回答書は、簡潔に要約すると、「朝日新聞社の報道に一切の間違いはなく、確かな取材に基づいており、事実の歪曲もない報道」であるとしています。
しかしながら、これまでの記事と同様に、この回答書では、記事の正確さ・正当性を主張するために、事実関係を表す言葉の前提や定義を都合に合わせて変え るこじつけが随所に見られます。また、これまで医科研が指摘してきた、取材過程で入手した情報に対する医科研の説明の部分的な引用により、読者に誤解を与 える記事づくりをしたことに対する言及は一切ありません。さらに、この記事を朝刊のトップで衝撃的に報道して、患者様や医療関係者に誤解や不安を与えたこ とに対する反省も全くありません。更には、医科研がウェブサイトに掲載している記事への批判(資料9)は、公然と朝日新聞社の名誉を傷つけるものであると して撤回を求めています。
朝日新聞社は、11月30日にも関連記事を掲載しています(資料10、資料11)。その中のインタービュー記事(資料11)については、10月20日にが ん患者団体41団体が発表した声明のうち、「誤解を与えるような不適切な報道ではなく、事実を分かりやすく伝えるよう,冷静な報道を求めます」とした文章 に対して、朝日新聞社に不都合な下線部分を削除して10月21日付記事で報道しました(関連資料12)が、このことの反省に立った釈明記事であると受け止 めることができます。しかしながら、並行して掲載された10月15日付記事および16日付社説の説明(資料10)は、医科研への11月19日付回答書の内 容をなぞったもので、医科研として到底納得いくものではありません。
被験者保護の重要性や臨床試験の制度改善の必要性などの朝日新聞社の主張については、医科研としても、今後議論が深まるべきであると考えます。しかし、医 科研が一貫して指摘している問題のポイントは別のところにあります。それは、事実を歪曲した報道を行い、それを正当化しようとしている朝日新聞社の姿勢で す。

3.今後の対応について
日本の放送業界では、放送への意見や苦情、放送倫理上の問題に対して、自主的に独立した第三者の立場から対応する機関として、「BPO/放送倫理・番組向 上機構」があります。しかしながら、新聞業界では、独立した検証機関が存在しておらず、各新聞社内の組織として存在しているようです。朝日新聞社には、今 回の報道とその後の対応の問題点を客観的に検証する為に、第三者機関による調査を自主的に開始されることを提案します。
また、医科研においては、朝日新聞社からの回答書の問題点も含めて、今回の一連の報道に関する検証を行うことを目的として「朝日新聞社報道に関する検討委員会」を設置しました。マスメディアに対する今後の取材協力のあり方等も含めて検討いたします。

以上

(資料1)http://www.asahi.com/health/news/TKY201010140469.html
(資料2)http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/statement101020.pdf
(資料3)http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/comment101020.pdf
(資料4)http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/document101104-1.pdf
(資料5)http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/document101104-2.pdf
(資料6)http://www.asahi.com/health/clinical_study/101126_honbun.html
(資料7)http://www.asahi.com/health/clinical_study/101119_kaitou.html
(資料8)http://www.asahi.com/health/clinical_study/101130_QandA.html
(資料9)http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/statement101110.pdf
(資料10)http://www.asahi.com/health/clinical_study/101130_QandA.html
(資料11)http://www.asahi.com/health/clinical_study/101130_interview.html
(関連資料12)http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/statement101025-2.pdf

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