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Vol.23151 上海訪問記

医療ガバナンス学会 (2023年8月23日 06:00)


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福島県立医科大学
山本知佳

2023年8月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

「上海を訪問できるのか?」
4月末に、私はPCの画面をのぞきながら考えていた。普段よりお世話になっている医療ガバナンス研究所の上昌広先生や、福島県立医科大学の坪倉正治教授が、5月に上海訪問する際に同行するかお声がけいただいたからだ。
5月の訪中に向け、私が確認したのは、中国ビザ申請サービスセンターの予約サイトだ。驚いたことに、GWの期間中もあり、3週間先までビザ申請予約が満席であった。
困った私は、医療ガバナンス研究所の中国人スタッフである朱旭瑾さんと梁栄戎さんに相談したところ、「時々予約がキャンセルされ、予約可能となる時があるからそのタイミングで取るしかない」とアドバイスをもらった。その後、「是非、上海に行きたい」という気持ちから、朝晩PCを確認した。ビザ申請初心者である私は、驚きと焦りを感じていたが、幸運なことに、予約が取れた。朱さんと梁さんのお陰である。
予約時間にビザセンターへ行くと、さらに驚きがあった。部屋からあふれんばかりの人がビザ申請のために列をなし、待機していたのである。「予約時間とはなんだろう。どのような基準で人数を制限しているのだろう」と思いながら列に並び、申請完了までは、5時間程度を要した。申請処理や指紋登録を行うための整理番号をもらうために2時間半、書類を提出し指紋登録を行うまでに2時間半である。
ちなみに、隣の列では、旅行会社を通してビザを取得する人が多数いた。整理番号は必要とせず、一度目の窓口で書類の提出と指紋登録が行われていた。旅行会社を通せば、お金がかかるが、次回は検討してもいいかもしれない。ただ、今回は、偶然予約時間が同日であった坪倉先生と研究の相談や仕事を行う時間に当てることが出来たため有難かった。

ビザ取得の面倒さには閉口したが、中国での体験は素晴らしかった。特筆すべきは、豫園、黄浦江クルーズでの“時間旅行”である。上海に到着すると、まずは豫園に向かった。豫園は16世紀明代に作られた庭園だ。四川布政使の役人である潘允端が、刑部尚書だった父の潘恩のために贈ったもので、「楽しい園」という意である。1559年からの18年の歳月を費やし造営された。
豫園では、九曲橋の真ん中に位置する湖心亭を訪問した。屋根が反り返った風情のある建物である湖心亭は、1855年に創業の茶屋である。我々は、九曲橋を一望できる2階席へ案内された。窓の外には、多くの中国人観光客の姿が多くあった。中国政府により旅行ビザの制限があったため、外国人観光客の姿はない。そこでは、上昌広先生と、梁さんが合流した。さらに、我々の共同研究のパートナーである復旦大学公共衛生大学院の姜慶五教授も加わり、中国茶の楽しみ方を教えていただいた。茶碗に茶葉が入った状態で、茶葉をよけながら味わう。お茶受けには、なつめやうずらの卵、お豆腐と中国のお茶の文化である。

窓から夕陽が差し込む頃、九曲橋を渡り隣に位置する緑波廊酒楼へ移動した。緑波廊酒楼は、中華民国時代に茶楼として建てられた建物を使い、1979年創業の上海料理を味わえるお店である。過去には、クリントン米元国大統領、故エリザベス英国女王、故羽田元首相など各国の要人が訪れた。
こちらの酒楼で、姜先生とともに研究を行っている王継偉先生や、復旦大学の学生の方とお会いした。坪倉教授のチームは、福島県で2500名規模のコロナワクチン接種者のコホート調査を行っている。そのコホート調査について報告し、翌日より訪問予定の温州医科大学平陽病院への訪問に関して説明を受けた。その際、「上先生、坪倉先生の研究ノウハウを学びたい。一緒に研究を進めたい」と、新たな共同研究の話が進んだ。私は、以前から上先生「信頼できる人に多くの人が集まり、次のご縁が生まれる」と指導をいただいていた。その言葉が、頭に浮かんだ。上先生と姜先生のもとに集まり、新たなご縁が生まれた瞬間であった。

その後、姜先生の案内で外灘へと向かった。外灘は、1840年アヘン戦争後の外国人居留地として知られ、西洋式の高層建築が立ち並ぶ。租界時代の領事館、銀行、商館などが集まった上海の経済と交易の中心地であったの面影が今も残っている。対照的に、黄浦江の対岸には浦東の近未来的な高層ビル群がライトアップされ、壮観な夜景を織り成しこの異なる時代を背景とした両岸の夜景は、圧巻であった。黄浦江クルーズの美しい景色を堪能していると、日本から随行した上先生の研究室のスタッフは「多くの税金が使われている。この使い方が必ずしも一番いいとは限らない。日本だとより有効な使い方をすると思う。」との言葉が耳に入った。彼女は、上海と日本の両方での生活経験がある。それらの経験からの言葉は、両国の異なる視点から情報を得るという貴重なものとなった。 歴史、時事、思考様式や習慣を通して、各地域のニーズ理解する視野を広げることができる。加え、多くの人と話をすることが様々な視点の気づきが、柔軟な視野を得る機会であるということであることを改めて学んだ。

今回の上海では、様々な交流で新たな気づきとご縁を得た。同行させてくださった上先生と坪倉先生へ改めて感謝の思いである。

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