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Vol.23155 ナビタスクリニック患者受診動態のアップデート

医療ガバナンス学会 (2023年8月29日 06:00)


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医療法人社団鉄医会理事長
谷本哲也

2023年8月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

ナビタスクリニックは、「夜まで開いているエキナカ診療所」をキーワードに創業15周年を今年で迎えました。当法⼈では今後の一層の事業拡⼤を⾒据え、ホームページや電子カルテの刷新、経営企画部門の拡充、研究部門創設、海外との連携、各種規定の整備や研修の活発化といった体制整備などに向け、よりよい組織に進化できるよう少しずつ準備を進めています。

今回は、当院を受診される患者さんの受診動態について、ナビタスクリニック立川内科の瀧田盛仁医師が解説します。瀧田医師は米国テキサス州を第二の故郷と呼び、同地のベイラー大学で長年にわたり膵島移植という最先端の医療技術開発にも取り組んだ非常に優秀な人物です。当法人の研究部長としても受診者の分析を進めており、よりよい医療の提供につなげるべく、診療業務に加え研究活動にも日夜取り組んでいます。

◇ナビタスクリニック患者受診動態のアップデート

瀧田盛仁
医療法⼈社団鉄医会ナビタスクリニック⽴川内科

2004年山口大学医学部卒。
虎の門病院にて初期研修、2004年に東京大学医科学研究所附属病院血液腫瘍内科にて後期研修。2012年東京大学大学院(医学系研究科 生殖・発達・加齢医学専攻)卒業。医学博士。
大学院在学中から、ベイラー大学病院 ベイラー研究所 膵島移植部門(米国テキサス州ダラス)にて膵島移植に従事。2015年、神奈川県立がんセンター 医療管理部治験管理室 医長。2019年からナビタスクリニック立川内科勤務。ときわ会常磐病院血液内科非常勤医師。⽇本内科学会総合内科専門医。

はじめに
私はナビタスクリニック立川で内科診療を担当しており、週に1回、福島県いわき市のときわ会常磐病院でも診療しています。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所では研究活動を行っています。大学院時代は、東京大学医学研究所(東京都港区)とベイラー大学病院(米国テキサス州ダラス)で、1型糖尿病や慢性膵炎患者さんへ膵ランゲルハンス島を移植するという臨床研究を行っていました。今回、ナビタスクリニック3院(立川、新宿、川崎)を受診した患者さんの統計を行いましたので、その結果と考察を報告します。

◇ナビタスクリニックの原点
ナビタスクリニックの原点は、2006年の「コラボクリニック新宿」です。新宿駅前のビルの一室の小さなクリニックでした。ここに、多くの若い大学生が集まり、都会に必要なクリニック像を真剣に議論しました。鈴木寛先生(東京大学公共政策大学院教授、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)や上昌広先生(医療ガバナンス研究所理事長、ナビタスクリニック新宿で内科診療)が指導役を務めました。

この議論から、「都会の若い働き手は、医療弱者ではないか」という問題提起がなされました。都会の若い働き手は医療機関を受診しようとしても、勤務時間が終わった後では、医療機関が既に閉じてしまっているという現実からの着想でした。

この問題を解決するために、「駅ナカにあって、夜まで開いている診療所」というフレーズを掲げナビタスクリニックが誕生します。若い患者さんの利便性を考え、勤務が終わった夜も診療し、生活動線の「駅ナカ」に存在する診療所がスタートしました。

◇過去の解析結果の振り返り
ナビタスクリニックが都会の働き手の医療需要に応える存在であるかどうか、すでに2つの学術論文が公開されています。(Tsudaら. Medicine. 2018;97:e9646、Tsudaら. Medicine. 2019;9833:e16818)2013年から2016年の間にナビタスクリニック立川に受診された患者さんを対象とした研究で、受診患者さんの年齢中央値38歳、18時~19時台に受診のピークを迎える等、まさにナビタスクリニックが、見過ごされていた都会の医療需要に応えていることが分かりました。

◇今回の解析結果
今回、2017年から2022年に、ナビタスクリニック立川、川崎、新宿の3院を受診した21万人の患者数を対象とした解析を行いました。受診者数の57%が女性で、これは日本全国のクリニックの平均と同じですが、大きく異なるのは年齢分布でした。なんと、最も多い受診者年齢層は25歳から29歳だったのです。日本全国の一般外来診療所(厚生労働省 患者調査 2020)では、70~74歳の患者さんが最も多いことと対照的な結果でした。

ナビタスクリニックの受診時間帯を見ると、午前中や午後の診療開始時には多くの患者さんが受診していますが、夕方から夜にかけてももう一つのピークがあります。ナビタスクリニック立川や川崎では、受診患者の約6割がクリニックから2キロ圏内にお住まいでした。これらの結果から、クリニック近傍の若い患者さんが、仕事が終わって帰宅の途中に当院をご利用下さっていることが示唆されました。当院は小児科・皮膚科もありますから、夕方にご家族連れで利用される患者さんを多く目にしますね。

一方、ナビタスクリニック新宿は、東京23区内からの患者さんが多いのですが、それ以外の地域、例えば、千葉や埼玉、東京23区外、神奈川からも多くの患者さんが受診されています。これは、新宿駅での乗り換え需要を反映しているのかもしれません。

おわりに
診療では、コロナ禍で生活スタイルが変化した患者さんのお話を多く聞きます。在宅勤務が増え、出社せずに直接ご自宅から営業先に向かうといった事例です。今後はオンライン診療の利便性を向上させ、オンライン診療と対面診療を組み合わせた診療にシフトしていくことになるかもしれません。現在、受診歴をオンライン診療のみ、対面診療のみ、両者の組み合わせにグループ分けした解析を進めています。

今回の解析結果から、ナビタスクリニックは若い患者さんが多く、時間外診療のニーズが高いことがわかりました。「都会の働き手に医療を」という創業時の原点を大切にしながら、
新しい解析結果をもとに、患者さんに利便性の高い診療所であり続けるよう模索していきます。

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