医療ガバナンス学会 (2023年8月28日 06:00)
Tansa リポーター
中川七海
2023年8月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
共同通信は、長崎で起きた福浦勇斗(はやと)のいじめ自殺事件を追った石川の著書『いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録』で長崎新聞を批判したことが名誉毀損にあたると主張。石川を2時間にわたって聴取したのだ。
共同通信にとって、加盟社である長崎新聞は「お客様」だ。加盟社は共同通信の運営費の4分の3を賄っている。社長の水谷亨は「加盟社なしには共同通信は存立しない」とまで発言している。
しかし、石川の長崎新聞に対する批判は事実に基づいている。石川は聴取で、自著での記述が正当であることを繰り返し説明した。長崎新聞に対する謝罪の意思がないことも伝えた。
共同通信は、次の手を打ってきた。
●一方的な呼び出し
2022年11月18日、石川に1本のメールが入った。石川が所属する共同通信千葉支局の支局長・正村一朗からだった。
「著書の件で本社がもう一度ヒアリングをさせてほしいそうです」
なぜまた呼び出されるのか。わずか4日前、石川は法務部長の増永修平と人事部企画委員の清水健太郎から、2時間に及ぶ聴取を受けたばかりだ。繰り返し同じことを質問され、その度に丁寧に答えた。そもそも石川は育児休暇中だ。生後8カ月の子どもを世話しており、そう何度も対応できない。
石川は正村に、再び何が聞きたいのかを尋ねた。正村からは以下の返信が届いた。
“聞きたいのは、下記の3点が中心です。
2020年11月17日の独自ダネ配信や、同18日の長崎県の記者会見について、「地元メディアは黙殺」「アリバイのように小さく載せた記事」と記述したこと
2021年に長崎県から長崎新聞への公金支出が900件近くあることを挙げ、長崎新聞が17日配信の独自ダネを掲載しなかったことが「スポンサーに忖度しているのだな」と読者に受け取られかねないとの記述をしたこと
2020年12月25日の長崎知事会見で、長崎新聞の「ベテラン記者」とのやり取りがあったこと
この3点は前回ヒアリングでもうかがっていますが、改めて詳細を確認し、さらに追加でうかがいたい点もあるためのお願いです。“
だが、正村自身も書いているとおり、これらは先日の聴取で答えている。石川は正村にこう返事した。
“本社がお聞きになりたい点は承知しましたが、前回のヒアリングと質問事項が重複しているのではないかと思います。
会社が何を目的に、どういう理由で再度のヒアリングを求めておられるのか、また長崎新聞から具体的にどのような抗議があり、会社としては現状どのような返答をしているのか。
これらを明らかにして頂けると幸いです。よろしくお願い致します。“
ところが、正村からの返信は次の1行のみだった。
“その辺はヒアリングで君から聞いてください。24日の時間をお知らせください。”
一方的な呼び出しにより、石川は2回目の聴取を受けることになった。
●すでに謝罪していた共同通信
1回目の聴取から10日後の、2022年11月24日朝11時。石川は、前回の聴取と同じ共同通信千葉支局へ出向いた。
部屋に入ると、前回とは異なる2人の職員がいた。法務部の山内和博と、法務知財室長の石亀昌郎だ。
挨拶もそこそこに聴取が始まった。冒頭で、今回の聴取が、長崎新聞への名誉毀損を判断するためではなく、共同通信の社外活動規定に抵触するかどうかを調べるのが目的だと知らされた。石川が抵抗する。
「抵触する恐れがあるから話をお聞きになりたいというのであれば、どこに抵触される恐れがあるのかを教えていただきたいです」
だが、山内らは答えられない。
「それは話を聞いた上で判断するっていうこと」
なぜ、規定に抵触する部分を把握していないのに聴取するのか。石川は何度もどこが抵触するのか尋ねたが、「必要なの? 事前に通告することが」「さっきの説明じゃダメなんですか」と言われる始末。石川は言った。
「僕は今、被疑者みたいになっていますけど、例えば警察でも事情聴取をする時は罪状がある」
山内らは笑ってまともに答えなかった。
石川は、共同通信が何が何でも自分に責任を負わせたがっていることを悟った。
実際、石川の予想は当たっていた。
実はこの2回目の聴取の前、共同通信は長崎新聞への謝罪を済ませていた。謝罪に行ったのは、当時の共同通信福岡支社長・谷口誠だ。もちろん、石川には無断である。
=つづく
(敬称略)
※この記事の内容は、2023年5月30日時点のものです。
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