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Vol.23171 翌朝起きれないほどグッタリの女医 猛暑の体調不良の原因は目からの紫外線?

医療ガバナンス学会 (2023年9月28日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(2023年8月9日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/articles/-/198191?page=1

内科医
山本佳奈

2023年9月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

とても暑い日が続いていますね。今年の7月は、毎日のように地球の年間平均気温の記録が更新され、7月1日から19日の期間で、なんと17日間も40年以上の地球規模の観測の中で、最も暑かったことが報告されています。

日本の7月の平均気温も、近代的な観測が始まってからの125年間で最も高かったことが、気象庁のデータから 明らかになっています。先月の中旬のことです。「日本もとても暑くなってきました……。身体がまだ暑さに慣れていないせいか、外に出るとぐったりしてしまいます」という連絡が、大阪在住の知人の男性からありました。普段からジムで体力維持に励んでおり、体力には自信のある彼でさえ、ぐったりしてしまう暑さなのかと、驚いてしまったことを覚えています。

アメリカでも、熱波 がカリフォルニアの内陸部から南フロリダまで広がるように続いています。特に、先月末は「危険な暑さ」にあるとして、ニュース番組の天気予報で、連日警戒が呼びかけられるほどでした。

私が滞在しているサンディエゴの沿岸部は、例年よりも暑い夏になっているといえども、最高気温が26度から30度と、めったに30度を超えることはありません。しかし、少し山側へ行くと、どんどん気温が上がります。沿岸部と10度以上の気温差があることもよくあります。

初めは、海側よりも山のほうが、気温が高いということが不思議でならなかったのですが、カリフォルニア州の気候が、緯度、標高および海岸からの距離によって砂漠気候から亜寒帯気候まで様々であること、そして日本の気候とは全く違うことを体感することで、「そうなんだ」と納得することがようやくできるようになりました。

さて、記録的な熱波による暑さのせいなのか、先日から外を20分でも歩くと、翌日ダウンしてしまうようになりました。ダウンといっても、日本でよく経験した、夏バテのような倦怠感がずっと続くのではありません。熱中症のような症状でもありません。翌朝起きることができなくなるのです。12時間から15時間ほど寝てしまうのです。

日本ではこのような経験がなかったので、不思議で仕方ありませんでした。日本では運動経験のなかった私ですが、アメリカに拠点を移してからは、ジムに通い、ほぼ毎日30分の筋トレと30分の有酸素運動(インドアサイクリング)をしているので、体力はむしろついていると考えられます。それなのに、7月に入ってからは、最高気温が26度から28度の中で、たった1時間ほど太陽に浴びただけで、その日は問題ないのですが、翌日、ぐったり寝込んでしまうようになったのです。

要因を自分なりに調べたところ、どうも「紫外線」が原因であることがわかってきました。

「UVインデックス 」とは、紫外線が私たちの体に及ぼす影響の度合いをわかりやすく示すために、紫外線の強さを指標化したもののことです。UVインデックスが3から5の場合、紫外線は中程度であり、UVインデックスが6から7は紫外線が強いということになります。環境省によると、紫外線対策として「UVインデックスが3から7の場合、日中はできるだけ日陰を利用しましょう」と呼びかれられています。また、UVインデックスが8から10は紫外線が非常に強く、UVインデックスが11以上は、紫外線が極端に強いということになり、紫外線対策として「UVインデックスが8以上の場合、日中の外出はできるだけ控えよう」となっています。

気象庁 の「日最大UVインデックス(解析値)の年間推移グラフ」によると、2022年の東京のUVインデックスは、7月が6.5と最も高く、ついで6月と8月が5.9と続きます。しかし、1日における時間ごとの推移を見ると、例えば、2023年7月29日のつくばにおけるUVインデックスは、12時が9.7と最も高く、ついで11時が9.4、13時が8.6であり、8月2日 のUVインデックスは、12時が8.8と最も高く、ついで11時が8.4、13時が7.8でした。

私が滞在しているサンディエゴも、7 月から9 月 は、平均UVインデックスが 6 で、最もUVインデックスが高い期間となっています。平均UVインデックスを見る限り、日本と変わらない数値を示しています。1日の中でも12時前後が、最もUVインデックスが高くなっているのも同じ傾向にあります。

しかし、時間ごとの UVインデックスを見ると、例えば2023年8月6日の12時のUVインデックスは10.8、13時のUVインデックスは11.4と、紫外線が極端に強く状態でした。ちょうど台風が来ていることもあり、同日の比較は行わなかったのですが、時間ごとのUVインデックスを比較すると、日本よりもサンディエゴの方が、日中の紫外線が強い傾向にあるようなのです。

紫外線は、日焼けやシミ、シワの原因になる他、皮膚がんや、白内障 を引き起こすことが指摘されていますが、実は、これだけでなく、疲労にも影響することが指摘されています。紫外線を眼から吸収すると、脳から疲労物質である活性酸素が大量に分泌され、神経細胞がストレスを受けることで脳疲労を引き起こします。このように脳がストレスを受けることで、私たちは全身に疲労を感じるという仕組み が考えられているのです。

私の身体も、極端に強い、または非常に強い紫外線を浴びた結果、脳が疲労を感じ、翌日起きられなくなるほどの疲労感を生じてしまったのだと思います。帽子を被ったり、日焼け止めを塗ったりと、できる限りの対策をしていましたが、サングラスをかけていなかったことがよくなかったようです。これからは、外出時はサングラスをかけ、しっかりと紫外線対策をしていこうと思います。

 

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