最新記事一覧

Vol.23170 東京の歩き方 -大都市で見出した地元熊本の魅力-

医療ガバナンス学会 (2023年9月27日 06:00)


■ 関連タグ

カレル大学
小山愛珠

2023年9月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私は熊本生まれで、チェコで医学を学ぶ学生だ。9月、東京の高輪にある医療ガバナンス研究所でインターンを経験した。東京は日本の中心と思っており、熊本とは遠い存在だと考えていたが、その考えは一変した。私の経験をご紹介したい。

まずは、Moderna Japan代表取締役である鈴木蘭美社長との出会いだ。世界を股にかけて活動される鈴木社長のルーツは熊本にあった。現在もお母さまが熊本在住という。
鈴木社長はmRNA(DNAの塩基配列が転写された形態で、タンパク質発現のための重要な情報が組み込まれている)という身近なものをワクチンに利用することで、従来主流であったウイルス自体や毒素などを使用するワクチンよりも十倍も早いペースでのワクチン製造が可能になった。今後のパンデミックでワクチンを早期に入手できるように、日本の工場で日本人向けのワクチン製造をすることは重要だ。

感染症といえば、熊本で想起されるのは、北里柴三郎先生だ。日本の感染症の先導者である北里先生は熊本県小国町出身で、破傷風やペスト菌の発見と、その抑制に貢献した。先生は病原菌を運ぶ害虫やねずみを退治し、日常的な清潔さが病気の予防につながることを人々に啓蒙しました。この考えは現在の日本でも広く受け入れられていると考える。日本では、マスク着用や大声を控えるなどのエチケットが健康的な生活習慣の一部となっているのは、北里先生の貢献が大きいだろう。

現在、私が在籍しているチェコでは、一時期新規感染者数が世界2位を記録した。この数字の差は、欧米と日本の生活習慣の違いにも関連していると感じた。北里先生はかつて「医者の使命は治療以上に、病気を予防することにある」と述べており、鈴木社長と、その信念は通じるものがある。

東京大学医科学研究所ゲノム解析センターに在籍している井元清哉教授を訪れ、教授の功績やゲノム医療の現状についてお話を伺う機会もあった。実は、この東京大学医科学研究所は北里柴三郎先生によって創設された伝染病研究所の後継機関であり、以前、研究所の隣には熊本発のワクチン製造会社である化血研も存在していたという。東京で知り合った医療関係者や研究機関が、あまりにも熊本と関連していることに驚いた。

医療ガバナンス研究所がある高輪にも歴史的なつながりがあることを発見した。その近くに泉岳寺がある。ここは、忠臣蔵のモデルとなった赤穂事件で切腹した、赤穂藩の大石内蔵助良雄が眠っている。彼は藩主である浅野長矩の仇討ちをとった後、切腹を命じられるまで、肥後熊本藩である細川家に身を預けていた。細川家では彼ら赤穂浪士を浪士ではなく義士として丁重に扱い、もてなしたという。また、すぐ近くには、彼を含む赤穂浪士17人が切腹を命じられた細川邸のシイの木が残っている。この場所には、シイの大木が彼らの意志を背負うかのように、怏々と根を張っている。

今回、私がインターンの活動で得たものは、事実に基づいて考察し、見解を述べる機会だった。しかし、自分にとって重要だと感じたことは、訪れた土地の歴史を知り、現在とのつながりを見つけることだった。新しい土地の歴史を学び、地元の歴史に触れることができた。これから新たな場所に足を踏み出す際には、事前にその土地を理解し、尊重することが重要だと感じる。

熊本高校卒業
Charles university first faculty of medicine 在籍

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ