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Vol.23197 現場からの医療改革推進協議会第十八回シンポジウム 抄録から(2)

医療ガバナンス学会 (2023年11月6日 06:00)


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2023年11月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第十八回シンポジウム

11月25日(土)

【Session 02】 相馬、この1年 13:55~14:15(司会:上昌広)

●立谷秀清
(福島県相馬市長、全国市長会会長)

【Session 03】
調整中

【Session 04】 地域医療のサバイバル戦略 14:25~15:05(司会:上昌広)

●尾崎章彦
(公益財団法人ときわ会常磐病院乳腺甲状腺外科診療部長、医療ガバナンス研究所理事)

福島県いわき市における医師不足と現状改善の試み

福島県いわき市は医師不足が著しい。2022年のデータにおいて、人口10万人あたりの医師数は178人であり、全国平均(254人)や、同じ県内の郡山市(255人)および福島市(356人)をはるかに下回っている。いわき市は都市部から離れており、公共交通機関や高速道路網が未発達であるため、歴史的に医師の数が少なかった。その後、震災の影響があり、他地域と比べても医師数が悪化した。
私が勤務する常磐病院も例外ではなく、内科を中心に医師不足が顕著だ。ただ、現状改善の取り組みも多数実施している。一つは若手医師のリクルートである。2021年3月に基幹型臨床研修病院に認定された後、2022年に2人、2023年に3人の研修医を受け入れている。来年度入職に向け医学部6年生に実施した臨床研修マッチングでは、定員3名に対し10名面接という盛況ぶりで、中間発表では2人が当院を第一志望に選択してくれている。さらに、外国人を対象とした臨床修練病院にも認定されており、ベトナムやネパールの医師受け入れも進めている。また、地元の高校生を対象に、病院の見学会を開催したり、授業協力を実施するなど、地元の若者への働き方提案も積極的に実施している。
これらと並行し、より即効性のある対策として、ありとあらゆる伝手を使って医師に直接リーチしリクルートを進めている。しかし、「片道切符で地方にひとり移り住み、その地域の医療に身も心も捧げる働き方」に魅力を感じる医師は、多くはない。また、そのような体制に継続性はない。こうした現状を踏まえ、病院全体としてフレキシブルな働き方、医師に優しい職場づくりを推進している。実際、一部の内科領域では、東京の都市部の医師有志が、地方の医療機関の診療を循環的に担当する取り組みも始まっている。私も福島と東京を行き来しながら勤務しているが、気持ちの切り替えになるのみならず、異なった患者層に関わることで学びも多い。
この発表では、当院の事例を中心に、地方での持続可能な医療体制を実現するにあたっての方策と課題を探る。

●石川賀代
(社会医療法人石川記念会HITO病院理事長、石川ヘルスケアグループ総院長)

働き手確保に向けた病院DX

全国の地方都市において、2040年に向かって生産年齢人口が急減する中、働き手に選ばれる環境や多様な働き方に対応できる組織づくりが求められている。
当院のある四国中央市も2040年には生産年齢人口が3割減少すると予測されており、病院の持続可能な運営において、働く環境改善、組織変革が急務である。
当院は、2017年より業務の効率化と医療サービスの向上を目指し、ICTの利活用を推進してきた。ICT基盤を活かし、コロナ禍においても通常医療とコロナ対応を両立し、失敗を恐れない組織風土の醸成、迅速な意思決定と、スピード感を持ったアクションの推進を実践してきた。これらの取り組みが、離職率の低下や多様な人材の確保につながっている。6年間の取り組みによる成果を含めてお示しする。

●根本剛
(鹿島厚生病院 在宅診療科)

鹿島厚生病院の訪問診療を継続していくために

2018年4月より鹿島厚生病院で訪問診療を担うようになりました。同院での訪問回数は年々、増加傾向にあります。臨時往診も同様に増加しています。また、コロナウイルス流行の影響で入院中の面会ができなかったため、在宅看取りも増加しました。今後も患者の増加が見込まれます。ところで現在、自分の仕事内容は外来、入院、当直、訪問、年数件の手術サポートです。来年には年齢は60になり定年も見えています。年を追うごとに体力的にきつくなっていく中で、一人でこの業務を続けることは不可能で、負担を少なくすることを模索しています。また、自分の定年以降も南相馬で訪問診療を継続するために、医師を確保することが切迫した課題となっています。
自身の負担を軽くするため、今後以下のことを考えています。患者さんが自宅で死亡した場合、今までは夜間でも死亡確認をしていましたが、死亡確認を日中にすること。また、外来および訪問がない時は就業時間内でも早めに帰宅するなど、休めるときは休むこと。これらは病院の協力理解が必要になってきます。
幸いなことに2024年度から、訪問診療に当院で従事する医師が1人増える予定です。しかし私の定年以降、その医師が一人で訪問していくには負担が大きすぎるので、更なる医師の確保が必要です。門戸を広げるため専攻医でも当院で仕事ができるよう、今年度から白河厚生総合病院の協力のもと、総合診療科専門医プログラムを当院で行えるようになっています。今後2、3年以内に訪問診療専門医の研修も当院でできるよう体制を整える予定です。医師を確保するための直接的なリクルート活動は行っていませんが、当院で勤務していただけそうな医師がいないか、総合診療科や訪問診療に携わっている医師の会合に積極的に出席し、顔の見える関係をつくっています。しかしながら、医師が充足している地域はなく、確保は困難な状況です。

●原田文植
(相馬中央病院内科医長)

今そこにある危機「アニサキス」

アニサキス症は、寄生虫アニサキスに汚染された生魚や加熱不十分な魚介類を食べることで引き起こされる。典型的な症状は、加熱不十分な魚介類摂取後、数時間以内の激しい上腹部痛である。有名芸能人が罹患してメディアに登場するなど、最近大きく注目されている。
これまでアニサキス症の報告はほとんど日本からのものだったが、近年、世界各国からアニサキス症が報告されるようになっている。インフラの充実や国際市場の拡大、健康志向を背景に、和食文化ひいては生魚の消費量増加などによると考えられている。海水温の上昇とともにアニサキスは増加するので、温暖化の進行でますます数が増え、それにともなって報告数もさらに増えることが予想される。
アニサキス症の報告が増加しているにも関わらず、アニサキス症についてはいまだ不明な点が多い。長期的合併症として、胃がんや結腸がん発症の危険因子としての可能性も指摘されているが、報告自体も少なく、詳細は不明なままだ。
胃アニサキス症の診断は上部内視鏡検査で行われるが、蕁麻疹を主症状とし消化器症状を認めないケースなどもあり、過小診断されている可能性がある。
また、症状が全く別物であるアニサキスアレルギーは、必ずしも生食で起こるとは限らず、食物アレルギーとして扱われているケースも多い。アニサキスアレルギーは時にアナフィラキシーショックを起こすこともあるので、注意が必要だ。
漁師町である相馬市のような地域では、市場を通過していない魚介類の贈答が日常的である。そのためスクリーニングが甘く、各家庭の台所状況に依存している現状であり、アニサキスに寄生した魚介類を食する可能性が高い。ところが、多くの人がアニサキスに暴露されているにも関わらず、無症状の人や、さまざまなアレルギー症状に苛まれる人がいるなど、経過は多彩だ。相馬市における実態調査こそが、世界の食卓の危機を救うに違いないと考えるに至った。

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