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Vol.23219 アメリカのコロナ感染最新状況から女医が考える 日本でこの秋冬にすべき対策とは?

医療ガバナンス学会 (2023年12月1日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(2023年9月20日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/articles/-/201731?page=2

内科医
山本佳奈

2023年12月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

日本を離れ、アメリカに長期滞在するようになった私の、毎日の日課になったことの一つが、CNNの記事に目を通すことです。英語に慣れるために始めたことではありましたが、世界の流れをつかむことができるので、ジムでサイクリングをする30分を使って目を通すようにしています。

さて、「CNN health」の記事で、最近よく目にするテーマは、最新の新型コロナウイルスワクチンが米国食品医薬品局(FDA)や疾病管理予防センター(CDC)によって承認されたこと。そして、最新の新型コロナウイルスワクチンを接種するタイミングはいつがいいか、果たしてどこで接種することができるのか、ということです。

最新の新型コロナワクチンは、アメリカで優勢となっている株であるEG.5や他の新たな変異種に対して効果があるとされており、2023年9月15日に更新されたCDCの最新情報(※1)によると、「新型コロナウイルス感染症による重篤な病気を防ぐために、5 歳以上のすべての人は、最新のファイザー・ビオンテックまたはモデルナの新型コロナウイルス感染症ワクチンを 1 回接種する必要がある」と書かれています。

では、どうして新たな新型コロナウイルスワクチン接種が必要と考えられているのでしょうか。

●今夏感染者数・入院者数増加
1つ目として、アメリカでのこの夏のコロナの流行以降、感染者数と入院者数の増加が続いていることが挙げられます。CNNの記事(※2/2023年9月14日公開)によると、最新の予測では、週当たりの入院率は上昇を続け、新型コロナウイルス感染症のシーズンのピークとなる12月までに、現在の2倍になる可能性が最も高いと示唆されているとのこと。

そのため、流行のシーズンに入るとされている中、アメリカで優勢となっている株であるEG.5や他の新たな変異種に対して効果があるとされる、最新のワクチン接種による早期予防が重症化のリスクを軽減する(※3)に重要になる、というわけなのです。

2つ目として、アメリカに住む大多数の人が、最後のワクチン接種から1年が経過していることが挙げられます。「多くの人がこの夏のコロナの流行を、ワクチンによる予防を受けずに乗り切った。しかし、流行のピークを迎えるであろう12月に向けて、重症化のリスクを最小限に抑えるためには、新たなワクチン接種が重要になる。」と、ノースカロライナ大学の疫学者ジャスティン・レスラー氏は述べているのです。

私も、昨年の秋にコロナに感染した後、追加接種をして以降、追加接種をしていません。アメリカでは、診療所だけでなく、薬局でもワクチン接種を受けることができます。CNNの記事(※4)に、「大手薬局チェーンはすでにワクチンの予約を開始している」と記載されていたので、早速、近所にある大手薬局のホームーページを確認したところ、記事の通り、ちゃんと予約ができるようになっていました。

●コロナ、インフル、RSの同時流行も
アメリカのほとんどの保険プラン(※5)は、更新された新型コロナウイルスワクチンの全額を自己負担なしでカバーしており、診療所や薬局で最新の Covid-19 ワクチンを無料で受けることができるとのこと。昨年の秋、コロナになった時に、重篤にはならなかったものの、だるさがしばらく続き、辛かったことを記憶があります。なので、自身の保険状況などを調べて、早めに予約し、コロナワクチンを接種したいと思っています。

最後に、CNNの最新の情報による(※6)と、この秋から冬にかけて、新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザウイルスと RSウイルス も流行すると予想されているようです。

実際、日本ではインフルエンザ(※7)が、今年2月にピークを迎えた後も、収束することなく、感染が続いていると報じられています。過去3年の間、インフルエンザの流行がなかったことから、多くの人々において、インフルエンザの免疫力が低下している状態です。

そのため、コロナパンデミック以降、流行の見られなかったインフルエンザが、コロナ以前のように本格的に大流行する可能性も十分考えられます。

幸い、CDCの報告によると、現在、インフルエンザが流行している南米(パラグアイ、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、チリ)における3月から7月までの間に入院した約3000人のデータ解析の結果、今シーズンのために改良されたインフルエンザワクチンが、入院リスクを52%減らしたと言います。これから冬を迎え、インフルエンザの本格的な流行を迎える北半球にとっては、この報告は朗報だといえます。

また、南半球のインフルエンザシーズンは、通常であれば6月または7月頃にピークを迎えるのですが、CDCによると、今年は4月ならびに5月頃と早めにピークを迎えたとのこと。北半球でも同様のことが起こる可能性を考慮すると、もちろん、いつ接種が開始となるかにもよりますが、今年は例年の接種時期より少し早く接種するのも、いい作戦となるのかもしれません。

【参照URL】

(※1)https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/stay-up-to-date.html

(※2)https://www.cnn.com/2023/08/04/health/questions-about-covid-vaccines-quarantine-and-testing-are-back

(※3)https://www.cnn.com/2023/09/13/health/updated-covid-vaccine-where-when-flu-rsv-wellness

(※4)https://www.cnn.com/2023/09/13/health/updated-covid-vaccine-where-when-flu-rsv-wellness

(※5)https://www.cnn.com/2023/09/13/health/updated-covid-vaccine-where-when-flu-rsv-wellness

(※6)https://www.cnn.com/2023/09/13/health/updated-covid-vaccine-where-when-flu-rsv-wellness

(※7)https://news.yahoo.co.jp/articles/8c1924077523c48a6e668d0122f0f7693afef7d9

 

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