医療ガバナンス学会 (2011年1月18日 06:00)
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704694004576020321854485688.html?mod=dist_smartbrief
【アメリカでの相次ぐ発表】
去年の10月、ScienceにXMRV(異種指向性マウス白血病関連ウイルス)が、CFS患者の67%が見つかったと発表されたのに続き、今年の8月に PNASに、10月にはニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンにも、マウス白血病ウイルス関連のウイルスがCFS患者の86.5%から見つ かったと発表されました。アメリカ血液バンク協会として知られているAABBは、科学的問題が解決されるまで、CFS患者は献血することを控えるべきであ ると、8月に勧告しました。アメリカの血液供給の50%を収集するアメリカ赤十字社は、この10月から献血しようとする人々に、CFSにかかっていないか どうかを尋ね、患者が献血することを禁止しています。
【日本での危機管理】
アメリカ、カナダ、イギリス、ニュージーランド、オーストラリアでは、CFSと診断された人が献血することを禁止、または控えるようにと勧告しています。 日本でも、CFSに感染症が関与しているかどうかをはっきりさせる研究を、早急に始めるべきではないでしょうか。B型肝炎とウイルスの関連を想起していた だければ、この問題の重大性をご理解いただけると思います。他の国ではしのぎを削って研究をしているのですから、日本が手をこまねいている時ではないと思 います。昨年8月のPNASの研究者の一人であるDr. Komaroffは、「主にウィルス、時にはバクテリア等の感染因子がCFSの誘因となり、永続させる可能性がある。文献の中に十分なエビデンスが示され ており、今ではこのことはかなり確立されている」と、マサチューセッツの慢性疲労症候群・線維筋痛症の患者会に向けた講演会で、昨年4月に語っています。
http://www.masscfids.org/resource-library/3/229
【FDAの諮問委員会の勧告を受けて】
今回のFDAの諮問委員会の勧告を、アメリカの患者団体は肯定的に受け止めています。自分たちの病気が感染症だと見なされて、なぜ患者達は喜んでいるので しょうか。アメリカでは、2006年に政府がこの病気に対する認知キャンペーンを行ないましたが、それ以前に浸透してしまったCFSに対する誤解や偏見 を、完全に払拭するには至っていないからです。CFSのバイオマーカーはまだ見つかっていないために、この病気は器質的疾患であると認められず、患者の思 い込みによるものだと信じられてきました。
【私たちの懸念と願い】
私たちの会では、「諸外国で献血の禁止」という発表のみが広がることで、不要な混乱が生じるのではないかと懸念しています。私たちはこれまで、日常生活を 通して他の人に感染したというような事実を、日本の患者から聞いたことがありません。実際、私は病歴20年以上になりますが、一緒に生活している家族が感 染したという事実はありません。CFSが感染症であるかどうかも確かでない中で、患者たちが不当な差別を受けることのないように十分配慮し、早急な対応を 取っていただきたいと願っています。レトロウィルスの研究が進むことにより、この病気のメカニズムが解明され、治療薬のへの開発に結びつくのではないかと いう期待が世界中で高まっていますので、政府も真剣に取り組んでいただきたいと思っております。