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Vol.12 慢性疲労症候群の患者の献血に対するFDAの勧告

医療ガバナンス学会 (2011年1月18日 06:00)


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「慢性疲労症候群をともに考える会」代表
篠原三恵子
2011年1月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


日本では、あたかも慢性疲労が悪化するとCFS(慢性疲労症候群)になるような報道が続いている中、アメリカ連邦のFDA(食品医薬品局)の諮問委員会 は、レトロウイルスがこの病気と関連しているかもしれない懸念があるため、CFS患者からの献血を禁止するよう、12月14日に勧告を出しました。諮問委 員会によるこの勧告は、今度はFDAによって再検討されなければなりませんが、一般的にFDAはこうした勧告に従いますので、再検討される必要はありませ ん。最終決定が出されるのがいつになるかは、まだわかっていません。FDAはアメリカの血液供給を統制していますので、この決定はすべての血液センターを 網羅することになります。

http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704694004576020321854485688.html?mod=dist_smartbrief

【アメリカでの相次ぐ発表】
去年の10月、ScienceにXMRV(異種指向性マウス白血病関連ウイルス)が、CFS患者の67%が見つかったと発表されたのに続き、今年の8月に PNASに、10月にはニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンにも、マウス白血病ウイルス関連のウイルスがCFS患者の86.5%から見つ かったと発表されました。アメリカ血液バンク協会として知られているAABBは、科学的問題が解決されるまで、CFS患者は献血することを控えるべきであ ると、8月に勧告しました。アメリカの血液供給の50%を収集するアメリカ赤十字社は、この10月から献血しようとする人々に、CFSにかかっていないか どうかを尋ね、患者が献血することを禁止しています。

【日本での危機管理】
アメリカ、カナダ、イギリス、ニュージーランド、オーストラリアでは、CFSと診断された人が献血することを禁止、または控えるようにと勧告しています。 日本でも、CFSに感染症が関与しているかどうかをはっきりさせる研究を、早急に始めるべきではないでしょうか。B型肝炎とウイルスの関連を想起していた だければ、この問題の重大性をご理解いただけると思います。他の国ではしのぎを削って研究をしているのですから、日本が手をこまねいている時ではないと思 います。昨年8月のPNASの研究者の一人であるDr. Komaroffは、「主にウィルス、時にはバクテリア等の感染因子がCFSの誘因となり、永続させる可能性がある。文献の中に十分なエビデンスが示され ており、今ではこのことはかなり確立されている」と、マサチューセッツの慢性疲労症候群・線維筋痛症の患者会に向けた講演会で、昨年4月に語っています。

http://www.masscfids.org/resource-library/3/229

【FDAの諮問委員会の勧告を受けて】
今回のFDAの諮問委員会の勧告を、アメリカの患者団体は肯定的に受け止めています。自分たちの病気が感染症だと見なされて、なぜ患者達は喜んでいるので しょうか。アメリカでは、2006年に政府がこの病気に対する認知キャンペーンを行ないましたが、それ以前に浸透してしまったCFSに対する誤解や偏見 を、完全に払拭するには至っていないからです。CFSのバイオマーカーはまだ見つかっていないために、この病気は器質的疾患であると認められず、患者の思 い込みによるものだと信じられてきました。

【私たちの懸念と願い】
私たちの会では、「諸外国で献血の禁止」という発表のみが広がることで、不要な混乱が生じるのではないかと懸念しています。私たちはこれまで、日常生活を 通して他の人に感染したというような事実を、日本の患者から聞いたことがありません。実際、私は病歴20年以上になりますが、一緒に生活している家族が感 染したという事実はありません。CFSが感染症であるかどうかも確かでない中で、患者たちが不当な差別を受けることのないように十分配慮し、早急な対応を 取っていただきたいと願っています。レトロウィルスの研究が進むことにより、この病気のメカニズムが解明され、治療薬のへの開発に結びつくのではないかと いう期待が世界中で高まっていますので、政府も真剣に取り組んでいただきたいと思っております。

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