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Vol.24029 坪倉先生の放射線教室(4)

医療ガバナンス学会 (2024年2月13日 09:00)


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この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。
https://www.minyu-net.com/

福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治

2024年2月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

東日本大震災後、2011年4月より福島県浜通りにて被災地支援。
現在、福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授を務める坪倉正治先生が放射線や処理水について正しく、分かりやすく解説します。
●雨水中のトリチウム減少(2023年04月01日配信)

廃炉作業が進められている原発周囲の敷地内タンクには、放射性の水素である「トリチウム」が保管されています。トリチウムは最も軽い元素である水素の仲間です。トリチウムは原発で発電の過程で作られる人工の放射性物質である一方で、自然界に存在する放射性物質でもありました。

トリチウムは宇宙から飛んでくる放射線の一種である宇宙線が、大気中の窒素や酸素と反応することで作られるため、トリチウムは雨水にも含まれます。そして、緯度が高くなるほど、つまり北側になればなるほど、雨水に含まれるトリチウムの量は増える傾向にありました。

この雨水中のトリチウムは、年々少しずつですが低下傾向にあります。大気圏内の核実験が行われていないからです。現在の雨水中のトリチウムの濃度は、核実験の影響が強くあった50~60年前に比べて、数十分の1から数百分の1まで低下しています。

東京でも、1960年代前半では雨水1リットル当たり200ベクレル程度のトリチウムが含まれていたことがありました。東京より緯度の高いオーストリアの首都ウィーンでは、1リットル当たり700ベクレルを記録していることもありました。

もちろん放射線の影響はその浴びた量の問題であり、トリチウムが出す放射線は非常にエネルギーが小さいことが知られています。200とか700とか言うと大きく聞こえますが、この数字は健康への影響を危惧するような数字では全くありません。
●緯度や高度で異なる線量(2023年04月08日配信)

放射線を受けることによる身体への影響は、放射線があるかないかではなく、その量の問題です。私たちの周りには、さまざまな種類の自然界の放射線が存在し、そこから日常的に私たちはある程度の放射線を浴びています。

大きくは、〈1〉宇宙から降り注ぐ宇宙線によるもの〈2〉食品中に含まれている放射性物質によるもの〈3〉大地から出る放射線によるもの〈4〉空気中に含まれるラドンなどの放射性物質によるもの―の四つがあります。

宇宙から降り注ぐ放射線である宇宙線は、大気と反応することでトリチウムが作られる原因でもありました。この宇宙からの放射線による影響は、トリチウムと同じく、緯度が高いほど大きいことが知られています。また、高度が高いほど影響が大きいです。

そのため、日本国内では、最大値は富士山の山頂、最小値は波照間島(日本最南端の有人島)といわれています。

世界の国別で見ると、最小値はシンガポール(赤道近くにあるため)であり、最高値は南米のボリビア(高度が高いため)です。1年間の宇宙からの放射線の量は、シンガポールで0・25ミリシーベルト、ボリビアで0・92ミリシーベルトと4倍程度異なることが知られています。
●透過能力高いミュー粒子(2023年04月15日配信)

私たちの周りには、さまざまな種類の自然界の放射線が存在し、そこから日常的に私たちはある程度の放射線を浴びています。

大きくは〈1〉宇宙から降り注ぐ宇宙線によるもの〈2〉食品中に含まれている放射性物質によるもの〈3〉大地から出る放射線によるもの〈4〉空気中に含まれるラドンなどの放射性物質によるもの―の四つがあります。

これまで、宇宙から降り注ぐ宇宙線によるもの、とひとくくりに話していましたが、宇宙線は何か1種類の放射線ではありません。

宇宙線が私たちの体に到達するまでには、さまざまな反応があるため、最終的にはさまざまな種類の放射線となって私たちに降り注いでいるのです。

宇宙線に伴う放射線の中で、私たちへ届く放射線の「量」として最も多いのが、ミュー粒子によるものです。ミュー粒子はここでは初めて登場しますが、特徴は物質を透過する能力が非常に高いことです。

エックス線や中性子でも透過できないぶ厚いものや、火山の内部を調査する際にも使われます。福島第1原発の内部で、溶け落ちた核燃料の場所や量を特定するため、ミュー粒子を使った実証実験が行われたこともありました。

 

●大地の放射線東西差あり(2023年04月22日配信)

私たちの周りには、さまざまな種類の自然界の放射線が存在し、そこから日常的に私たちはある程度の放射線を浴びています。

大きくは〈1〉宇宙から降り注ぐ宇宙線によるもの〈2〉食品中に含まれている放射性物質によるもの〈3〉大地から出る放射線によるもの〈4〉空気中に含まれるラドンなどの放射性物質によるもの―の四つがあります。

大地から出る放射線の量は、西日本と東日本で異なることが知られています。

空間線量率を県単位で比較すると、最も高い岐阜と最も低い神奈川では年間0・4ミリシーベルトの差があります。関東ローム層が大地からの放射線を遮蔽(しゃへい)する関東平野では、大地からの放射線量は少なくなります。

その一方、花こう岩には、ウラン、トリウム、カリウムなどの放射性核種が比較的多く含まれているため、花こう岩が直接地表に露出している場所が多い西日本では、東日本より1・5倍ほど大地からの放射線量が高い傾向があります。

このような大地からの放射線の全国調査の1回目は、放射線医学総合研究所(当時)によって1967~77年、主に学校の校庭で実施されました。

 

●天然の放射線、ラドン多く(2023年04月29日配信)

私たちの周りには、さまざまな種類の自然界の放射線が存在し、そこから日常的に私たちはある程度の放射線を浴びています。

空気中に含まれている放射性物質として、よく知られているのがラドンです。「ラドン温泉」という言葉が示すように、温泉地に多い傾向にあります。土や岩石に含まれるウランがラジウムになり、そのラジウムから発生する気体がラドンです。主に呼吸によって肺に取り込まれ、アルファ線を出します。

このラドンは、天然の放射線について考える時に、とても重要な放射性物質です。なぜなら、私たちが天然から受ける放射線の「量」の多くの部分を、このラドンとその周辺の放射性物質が引き起こすからです。日本だと天然の放射線全体の約4分の1を、世界平均では約半分を占めます。

この空気中のラドン濃度は、場所によって大きく異なります。国全体で見ると、ヨーロッパ、特に北欧の国々で高く、平均で日本の数倍から数十倍になります。地域によっては、さらに高いところもあります。

土にどれだけ含まれているかだけではなく、家の建材や換気によっても影響を受け、例えばヨーロッパのような石造りの家で生活する地域や、換気の悪い地下室などでは、屋内ラドン濃度が高くなる傾向にあります。

 

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