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Vol.24036 健康的な生活のために食事を楽しむ大切さ アメリカの祝日で女医が気がつかされたこと

医療ガバナンス学会 (2024年2月22日 09:00)


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この原稿はAERA dot.(2023年11月29日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/articles/-/207558?page=1

内科医
山本佳奈

2024年2月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

11月の第4木曜日(11月23日)、アメリカは最も重要な祝日の一つであるThanksgiving(感謝祭)を迎えました。有難いことに、サンディエゴで知り合った女性にお声がけいただき、伝統的な感謝祭の夕食をご馳走になることに。

人生ではじめて、感謝祭を経験することができたと共に、みんなで集まり食事を共にすることのありがたさ、文化や伝統を受け継いでいくことの大切さを感じたひと時となりました。

多くの日本人にとって、馴染みのない感謝祭ですが、在日米国大使館(※1) のホームページによると、「アメリカの感謝祭は、家族や友人と集い、伝統的な料理を食べ、日々の生活に感謝する日」であり、1621年に現在のマサチューセッツ州で3日間にわたり行われた豊作祭を起源とし、毎年11月の第4木曜日にお祝いするとあります。

もともとはというと、原住民であるワンパノアグ族が新大陸で生き延びるために必要な農作物の育て方、狩猟や漁の仕方などをイギリス人入植者に教えてくれたことへのお礼に、入植者たちがワンパノアグ族を食事に招待したことだそうで、入植者たちは野生の七面鳥、アヒル、ガチョウ、魚介類、トウモロコシ、野菜、ドライフルーツなどをふるまい、ワンパノアグ族は鹿肉を持ってきたのだとか。

私も、感謝祭に欠かせない七面鳥、マッシュポテトやサラダ、ハムや野菜のソテー、アップルパイやパンプキンパイなど、感謝祭の夕食のメニューとして語り継がれている手作りの料理をたくさんいただきました。

コロナパンデミック以後初めて大人数で食卓を囲み、食事や会話を楽しむ時間を過ごしたことで、過去に報告された食事に関する医学研究をいくつか思い出したので、共有したいと思います。
●健康的な生活と記憶力低下の関連性

1つ目(※2)は、中国北京市にある首都医科大学の研究者らが、中国の60歳以上の高齢者2万9,072 人を対象に、健康的なライフスタイルと高齢者の記憶力低下との関連性について調べた調査です。

その調査の結果、健康的な食事を摂取すること、定期的に運動をすること、人と活発に交流すること、頭を使うこと、喫煙歴がないこと、酒を飲まないという健康的な生活習慣がより揃っている高齢者ほど、記憶力が衰えにくいことが示されたといいます。

大人数で集まり、伝統的な食事をいただいた感謝祭をきっかけに、社会人になってからというもの、食事を一人でとることが多くなっていたことに加え、コロナパンデミックをきっかけにすっかり大人数で食事を共にする機会が減ってしまっていたことに気がつくことができました。

また、人と積極的に交流することがあまり得意ではない上に、日本を離れてからは、英語という言語の障壁のために、積極的にコミュニケーションを取ることを避けていた私ですが、人との交流や、健康的な食事摂取が、記憶力低下を遅らせる可能性があるという医学論文を読み直し、無理のない範囲内で、いろんな人との交流を大切にしていきたいと改めて感じるきっかけになりました。
2つ目は、カナダのゲルフ大学の研究者(※3)らが、両親と同居する14歳から24歳のアメリカの青少年および若年成人2728人を対象とした調査です。

その調査の結果、家族との夕食の頻度が高いことは、ファストフードやお持ち帰り食品などの画一的な外食が少なく、果物や野菜が豊富な、健康的な食事を摂取していることと関連していたことがわかったといいます。

私も、社会人になってからは一人で食事をすることが増えただけでなく、気がつくと、料理をしなくなり、スーパーマーケットで購入したお惣菜や、コンビニで購入した軽食で済ませることが増えていきました。

今振り返ると、健康を意識した食事というよりは、その時に食べたいものを食べるという習慣だったと反省しています。
3つ目は、イギリスのケンブリッジ(※4)大学の研究者らが、社会人5442人を対象に、テイクアウト(持ち帰り)のお店の存在とテイクアウト食品の消費量、そして体重との関係性について調べた研究です。

その結果によると、家や職場の近辺、または通勤途中で立ち寄りうるピザやハンバーガー、揚げ物といったテイクアウトのお店が多い人ほど、それらの摂取量が多く、BMI値が高く、肥満になりやすことが示されたといいます。

アメリカに来てから、日本のようなコンビニがなくなり、かわりに身近な存在となったのが、ファストフードを含めたテイクアウトのお店です。食材を購入して料理を作るよりも安く済ますことのできるため、時間がないときはうっかり頼りがちですが、どうしても炭水化物が中心で、野菜がとても少ない食事になってしまいます。一つ目の論文結果を意識すると、なるべく避けたいところですね。

さて、最後に、アメリカの人々にとって感謝祭が重要な祝日であることがわかることの一つが、スーパーマーケットやジム、大型商業施設、カフェなど、ほとんどの施設が午前中、もしくは、遅くとも夕方には営業を終えてしまうことです。これは、感謝祭だけでなく、クリスマスなどの祝日にも当てはまります。

事前に計画的に買い出しをしなければならないことは、24時間いつでも必要なものが手に入る、便利な日本でのコンビニ生活に慣れていた私にとって、アメリカ生活で慣れないことの一つです。

しかし、みんながお祝いできるように、早めに営業を終えるという習慣は、素敵なことだなと感じます。営業を終えて電気を消灯する施設が、多かったからなのかもしれません。感謝祭の夜は、家々の明かりが普段よりも明るく、また暖かくも感じられたのでした。
【参照URL】

※1  https://amview.japan.usembassy.gov/thanksgiving/

※2  https://www.bmj.com/content/380/bmj-2022-072691

※3  https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2715616 

※4  https://www.bmj.com/content/348/bmj.g1464

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