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Vol.24035 いわゆる疑似ナーシングホーム問題について

医療ガバナンス学会 (2024年2月21日 09:00)


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一般社団法人医療法務研究協会副理事長
平田二朗

2024年2月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

日本の医療は医師を中心とする診療体制が基本であり、医師以外の医療関連職種は独自の保険制度上の機能をほとんど持たされていない。医師に従属した形でしか存在しえない。

ナーシングホスピタルは欧米では当たり前に存在し、ナースもNPという資格で独自の医療行為が許容されている。

日本では治療を行う居住施設は病院でしか認められておらず、それ以外の各種施設は訪問診療や訪問看護などの医師による指示や作業にもとづいて治療行為や看護行為が行われている。

40年ほど前から実施されてきた「医療費抑制政策」のもと、高齢者や障碍者や末期癌の患者さんたちが、入院施設から追い出されている。

急性期疾患や外科的な治療が必要な患者さん、高度な治療が必要とされる患者さんが入院対象となり、慢性疾患や精神障碍者、末期癌患者、神経難病患者、重症な身体障碍者などは入院の対象から外された。

保険制度上、上記の対象患者さんたちは医療施設から追い出され、介護施設や福祉施設か自宅で生活し、治療やケアを受けるしかない。

介護施設や養護施設に収容される対象となる患者さんは一定程度いるが、施設に入れない患者さんたちは在宅に追いやられている。

裕福で体制の取れる家庭であれば、ある程度の対応が出来るがターミナルケアや神経難病の患者さんたちのケアは家族中心のケアでは、負荷がかかりすぎて対応できない。家族は仕事が出来ない、学校に行けないなどの社会問題にもなっている。

この医療保険制度上のゆがみは、家庭や家族へのしわ寄せとなって、社会的な問題となっている。

厚生労働省の「医療費抑制政策」が強くなればなるほど、これらの社会問題が大きくなっているが、そこに営利事業としての「収容施設」が台頭してきた。「ナーシングホーム」である。

「ナーシングホーム」事業者は、初期の段階では「ターミナルケア」「神経難病」の患者さんたちを救済するという気持ちもあったであろうが、現在は完全な営利事業のモデルとなっている。

営利事業の構造は「安い収容施設」に収容し、そこに訪問診療・訪問歯科・訪問看護・訪問薬剤・訪問リハ・訪問介護を組み合わせて医療保険費・介護保険費で回収する。患者一人当たり月100万円になるという。入院日当円にすると3万円以上となる。

ある大手企業は、このビジネスモデルを全国展開している。海外にまで広げているとのことだ。医療関係の事業は本来医師や専門職種しか経営できないように仕組まれているが、倒産しかかった医療法人などを買収し、実質的に経営しながら展開してきた。経営が営利法人でも認められる事業についてはほぼ直営にしているので、毎年毎年右肩上がりに業容が伸びている。

厚生労働省は「医療費抑制」のために、これらの対象者を入院施設から追い出したのに、制度の隙間を狙った営利事業者たちが、楽して儲かる手立てを考え出した。日当円3万円ならば保険診療できちんとしたケアができるはずだが。厚生労働省が机上で考えてきた「医療費抑制政策」。現場で何が起きているかしっかり見てほしい。現場が見えないのかもしれないが、しかし財源は保険料や税金であり、同じ金を使うのならもっと質の高いケアが出来るはずである。また医療や介護の中にこのような営利事業者が増長していくのは如何なものであろうか?

営利事業者に医療や医療関連の経営をゆだねると、保険調剤薬局の「総合メディカル」のように、外資ファンドに経営権を売却するような事態を生み出す。医療事業そのものは営利事業を認めないことが基本的な立て付けになっているはずだが「経営の最大利益」のために事業を考える組織に、好き勝手にさせると医療の根幹が危なくなる。

末期癌の患者さんや神経難病の患者さんこそ保険制度や社会が守るべき存在なのに、利益の対象にされたらたまらない。医療保険制度の在り方が問われる。

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