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Vol.24050 女医がかかった「スマホ首」 頭が15度前傾で12キロ、60度で27キロと首にかかる負担増

医療ガバナンス学会 (2024年3月15日 09:00)


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この原稿はAERA dot.(2023年12月27日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/articles/-/210114?page=1

内科医
山本佳奈

2024年3月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

日本を離れて、アメリカのカリフォルニア州最南端の街であるサンディエゴにやってきて、1年が経過しました。年間を通じて最も気候のいいアメリカの州ベスト1(※1)に選ばれたことのあるカリフォルニアの中でも、年間を通じてとても過ごしやすい街の一つがサンディエゴであると言っても過言ではありません。

というのも、サンディエゴの年間平均降水日数は、たったの40日前後。平均最低気温は10度前後・平均最高気温は25度前後であり、カラッと乾燥する過ごしやすい晴天の日が続きます。今の冬の時期は、朝晩の冷え込みは厳しいのですが、日中は暖かく、汗ばむような陽気になることも多々あります。

そんな恵まれた天候のおかげだと思います。日本にいた時は月に数回ほど悩まされていた偏頭痛はすっかり良くなり、偏頭痛の頻度は年に数回にまで激減し、おかげさまで、偏頭痛で寝込んでしまうこともなくなりました。

とはいえ、残念ながら、頭痛から解放されたわけではありません。昨年から自覚していたものの、今年になって痛みを自覚する頻度が増えたのが、首の痛みとそれに伴った頭の痛み、そして肩の凝りです。そのため、今年の春ごろから、サンディエゴの街の至る所でよく見かけるカイロプラクティックのクリニックに、月に1回のペースで通うことにしたのです。

カイロプラクティックとは、1895年にアメリカのダニエル・デヴィッド・パーマー氏によって始められた治療法のことでありあり、世界保健機関(WHO)はカイロプラクティックを代替医療として位置付けています。アメリカだけでなく、イギリス、カナダやオーストラリア、EU諸国の数か国など、約40か国が、主に筋骨格系の障害を取り扱う、脊椎ヘルスケアの専門職としてカイロプラクティックを法制度化しています。

●朝起きたら首が

さて、通院を始めて半年が経った夏のある日のことです。朝起きたら、首を左右に回旋することが、全くできなくなってしまっていたのです。左右に顔を向けたいと思ったら、ロボットのように身体全体を回すしかなくなったのです。

「これは、流石にまずい……」そう思った私は、いつものカイロプラクティックのクリニックを受診し、施術をお願いしました。脊椎やその他の身体部位を調整(矯正)する施術のおかげで、その日の午後から次第に首が動くようになり、数日後には改善したのでした。

首が動かなくなってしまった原因として、カイロプラクティックの先生は、「スマートフォンやパソコンを長時間使用していたことによる、首への負担」が考えられることを指摘されました。本来ならば、前方に向かって緩やかなカーブを描きながら、体の真上にある重い頭を支えている頸椎が、頭が前に出たり下を向いたりする姿勢が続く結果、頸椎が真っ直ぐになった状態で固定されてしまうことで、大きな負担がかかってしまうというわけです。

こうした首への負担が大きくかかっている状態は、「ストレートネック」「テキストネック」「スマホ首」とも呼ばれています。一度は、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?

●頭が前傾すると首への負担は激増

レバノン大学神経科学研究センター(※2)のJawad氏らは、頭が前傾すると背骨にかかる重量が劇的に増加することを報告しています。具体的には、成人において、正しい姿勢の場合、頚椎にかかる頭の重さは約5 kg ですが、頭が15度前傾すると、首にかかる力は 12kg、30 度の前傾で 18kg、45 度の前傾で 22 kg、60度の前傾で27kgに増加するというのです。また、頻繁に前屈を行うと、頚椎や靱帯、腱、筋肉組織、さらには骨部分にも変化が生じ、姿勢の変化や、頸部やその他の関連部位に感じる痛みを引き起こす可能性があることも指摘しているのです。

カイロプラクティックの先生の指摘の通り、パソコンを使用することの多い私は、ふと気がつくと、頭が前方にでている姿勢になりがちでした。また、スマートフォンの画面を見る際は、下を向きがちでした。そこで、モニターを購入し、小さなパソコン画面を覗きこまなくて済むようにしました。暇つぶしにスマートフォンを眺める習慣も、やめることにしました。首のストレッチも、1日数回行うようにしました。

首へ負担がかかっていた日常の癖や習慣を改善したところ、首の痛み自体を自覚する頻度が激減し、カイロプラクティックへ通う回数も自然と減っていました。長時間パソコンを使用した日は、どうしても翌日になると、首の痛みを自覚してしまいますが、首の姿勢を意識するだけで、こんなにも痛みが改善するのかと、正直とても驚いています。

年末年始は、スマートフォンやパソコンを一旦手放してみて、自分自身の首に負担がかかっていないかどうか、今一度、みなさまも見直してみてはいかがでしょうか。

参照URL

※1  https://www.currentresults.com/Weather/top-10-us-states-with-best-weather.php

※2  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5445652/

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