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Vol.24073 能登半島地震被災地のこれから

医療ガバナンス学会 (2024年4月19日 09:00)


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国際医療福祉大学5年
丸山敬大

2024年4月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

3月中旬から下旬にかけて、私は石川県輪島市と福井県勝山市の福祉避難所でボランティア活動に参加しました。今回の寄稿では、被災地輪島を訪れ、避難所で被災者の方々からお話を伺う中で、私が感じたことを2つ述べさせていただきます。

●被災者の居住場所確保
まず1つ目に、被災地での被災者の居住場所確保の必要性があります。輪島の福祉避難所で10人の被災者からお話を伺いましたが、そのうち70代と80代の2人は「家も全部潰れて車もないし、親戚も身寄りもないから、避難所出るといっても寝袋生活するしかない」とおっしゃっていました。

デイケアに通っている被災者の方から3月19日に伺ったお話によると、「震災の影響でまだ営業再開していない大きなスーパーの駐車場にたくさん車が止まっていてびっくりしたよ。近くの銭湯にその駐車場から親子連れが結構来ていたから、家が壊れて避難所に入れなかった親子連れもいっぱい車の中で生活してるんじゃないかな。(その当時はまだお風呂に入ることができる場所が限られていたので1つの銭湯を多くの方が利用していました。)」とのことでした。
この話からも、若い世代でも居住場所に困っている方が多くいることが分かります。また、被災地を離れる被災者の増加が大きな問題となっている中、現在輪島を離れている被災者の中には、輪島に仮設住宅が設置されたら帰郷したいと考える方も多くいるようでした。

これらのことから被災地の復興を被災者主導で進めるためには、従来型の仮設住宅の十分な増設に加え、建設工事完了から2年以内に退去しなければならない従来の仮設住宅とは異なり、自宅再建が困難な被災者が恒久的に住むことができる「ふるさと回帰型応急仮設住宅」と呼ばれる石川モデルの仮設住宅を十分に増設していく必要があると考えます。そうすることで、被災地で避難生活を送る被災者に加え、被災地の外で一時的に暮らしている被災者や、今後さまざまな理由で住宅再建が困難な被災者の多くが地元に戻り安心して生活できる場所を早急に確保することができると考えます。
●心身両面への支援
そして2つ目は、高齢の被災者に対する心身両面への支援の必要性です。具体的な支援としては、身体に不安を抱えている高齢者へのリハビリや認知症予防トレーニングの実施などが挙げられます。実際に福祉避難所での会話の中では、「長い間避難所で過ごしていて全然人と話さなくなったから、最近今までどうやって話してたか忘れてきちゃった。」とおっしゃる方や、「避難所で長い間何にもしない生活をしているから最近ボケが進んできた気がする。」という方がいらっしゃいました。

今回の地震で深刻な被害を受けた珠洲市と輪島市の高齢化率は、それぞれ令和2年10月時点で50.3%、令和3年3月時点で45.7%と非常に高い水準に達しており、多くの方々が認知機能や身体機能低下のリスクに晒されていると考えられます。したがって今後は高齢者支援の強化が不可欠であり、デイケアなどでのリハビリやトレーニングに加え、輪島朝市のような高齢者が外出し、知り合いとコミュニケーションを取るきっかけとなる場所を新たに作るなど、心身両面への支援を通じて震災前と同じような生活ができる環境を整備する必要があると感じました。

被災地でのボランティアを通して私が最も心に残ったことは、多くの被災者が口々に地元で震災前と同じような生活を送りたいと語っていたことです。仮設住宅への入居も始まり、これから被災地も徐々に復興へと新しいフェーズに移行していくと思います。被災者の皆さんが愛する地元で震災前と同じような生活を送れる日が1日も早く訪れることを心から願っています。
経歴:
都立日比谷高校→国際医療福祉大学医学部医学科
生まれは愛媛県、出身は兵庫県です。小学生から中学生にかけて3年間台湾にも住んでいました。

 

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