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Vol.24089 超高齢社会でのパンデミックで起こり得ること

医療ガバナンス学会 (2024年5月14日 09:00)


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この原稿は医療タイムスからの転載です。

国際医療福祉大学医学部医学科4年
丸山敬大

2024年5月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●高齢化と社会活動の自粛が原因に

私は医学部の学生だ。このたび、COVID-19 (以下、新型コロナ)パンデミックにおいてG7各国で高齢化がどのような影響を及ぼしたのかを調査・研究する機会を得た。本稿では、その際に行った研究の内容と、研究を行った経験から学んだことについて紹介したい。

今回の研究では、指標として「コロナ禍でコロナによる死者が1人発生するごとに、新型コロナ前と比べ新型コロナ以外の死因による死者が何人増加したか」を設定し、分析を行った。

その結果、G7各国の中で高齢化率が高い日本、イタリア、ドイツでそれぞれ0.75人、0.49人、0.45人増加しており、高い傾向にあった。

これは高齢化率が高い国において新型コロナによる死者の増加とともに、新型コロナ以外の死者も顕著に増加していることを意味している。

この3カ国に共通していることの1つに、長期間にわたる社会活動の自粛があった。社会活動の自粛と高齢者の健康については、過去の研究でコロナ禍のソーシャルディスタンスが高齢者の精神的、身体的健康に悪影響を与えるという結果が出ている。

社会活動の自粛が、コロナ禍における新型コロナ以外の死者数の増加の大きな要因の1つになったことは十分に考えられることだ。

それに対し、例えばイスラエルは他国に先駆けてワクチン接種を実施し、社会活動も早期に再開していた。

今後世界各国で高齢化が進行する中でパンデミックが発生した際には、感染や重症化のリスクを下げつつ早期に社会活動を再開することで、高齢者の死亡リスクを減少させることができるだろう。

●研究の「グラウンドイメージ」の重要性

ここからは今回の研究を経て得た学びについて書かせていただきたい。今回の研究では医療ガバナンス研究所の上昌広先生と常磐病院の尾崎章彦先生に指導していただき、研究の方針や進め方などについて先生方と何度もディスカッションを重ねた。

その中で私が最も重要であると感じたことは、研究を進めていく上で全体の軸となる「グラウンドイメージ」の設定である。

私にとって、今回が自分で研究をデザインし遂行していく初めての経験であった。そのため、テーマをもらってから数週間ほどは自分なりに漠然とした終着点を設定した。G7各国のコロナ禍の高齢者死者数や死因ごとの死者数の推移などのデータを調べただけにとどまり、研究そのものをほとんど前進させることができなかった。

しかし上先生から「最初にこの研究を通じて何を伝えたいのかの軸を決めなくて、どうやって研究を進めていくのか」と、「グラウンドイメージ」の重要性を教えてもらった。そこから1つひとつのデータの見え方が大きく変わった。

その後もディスカッションを続ける中で、結果として「高齢化率」と「新型コロナ以外の死者の増加」という軸を持つことができるようになった。

今回の研究ではしっかりとした「グラウンドイメージ」を設定したことで、質の高いディスカッション、そして研究の完遂につながったと強く感じている。

また今回の研究ではG7各国における長期間の幅広いデータを集めることにとても苦労した。そこで重要になったのは、海外にルーツのある人たちの存在だ。

今回は尾崎先生に海外の研究者を紹介してもらい、どうしても知りたかった情報を補うことができ、人とのつながりの重要性を学んだ。

この研究を経て1つの研究をやり遂げることへの楽しさや大変さに加え、データを基にこれまで知られていなかった事柄を解き明かしていくことの面白さを知った。

 

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