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Vol.24092 長尾能雅氏の四つの役職における解任要望書:東京都保険医協会(1)

医療ガバナンス学会 (2024年5月17日 09:00)


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この原稿は長文のため数回にわけて配信いたしますが、こちらから全文をお読みいただけます。

http://expres.umin.jp/mric/mric_24092-24095 new.pdf

先日の配信の際に記載に誤りがありましたので、修正させていただきます。
一般社団法人茨城県医師会は誤りで、正しくは一般社団法人茨城県保険医協会です。
お詫びして修正させていただきます。

一般社団法人 東京都保険医協会 代表理事
須田昭夫

2024年5月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

長尾能雅氏の四つの役職における解任要望書 東京都保険医協会

一般社団法人 東京都保険医協会 代表理事 須田昭夫

一般社団法人 東京都保険医協会は、2024年5月11日の理事会において、長尾能雅氏の四つの役職における解任を求める要望書を各代表者に書留郵便で送付することを満場一致で決議いたしました。

また、決議事項には、全国の医療者や国民にこの事実を広めるために、医療ガバナンス学会(MRIC)への投稿、および、記者会見を行うことも含まれました。

記者会見につきましては、本年3月26日に「医療事故調査・支援事業運営委員会 委員 長尾能雅氏の解任を求める要望書」を日本医療安全調査機構理事長宛に送付された一般社団法人 茨城県保険医協会や全国保険医団体連合会と連携を取って開催する予定です。

長文となり甚だ恐縮ではございますが、MRICの読者におかれましては、以下4つの全文をご高覧いただいた上で、21世紀初頭の日本の医療崩壊の再来を阻止すべく医療の安全の確保に尽力されている方々に広めていただければ幸いです。

何卒、よろしくお願い申し上げます。

1.一般社団法人日本医療安全調査機構 理事長宛

「長尾能雅氏の解任および医療事故調査制度の運用改善を求める要望書」 

2.名古屋大学医学部附属病院 病院長宛

「長尾能雅氏の副病院長解任要望書」  

3.国立大学病院長会議 会長宛

「長尾能雅氏の医療安全管理協議会会長解任要望書」 

4.一般社団法人 医療安全全国共同行動 議長宛

「長尾能雅氏の専務理事等の解任を求める要望書」 

 

2024(令和6)年5月11日

一般社団法人日本医療安全調査機構

理事長 門脇 孝殿

一般社団法人 東京都保険医協会

代表理事 須田昭夫 法人印

〒160-0023 東京都新宿区西新宿3-2-7KDX新宿ビル4F

TEL:03-5339-3601 FAX:03-5339-3449

長尾能雅氏の解任および医療事故調査制度の運用改善を求める要望書

貴殿におかれましては、医療の安全確保のために尽力されておられることに敬意を表します。本協会は、東京都の保険医師、約6200名の会員で構成する団体として、保険医の生活と権利を守り、国民の健康と医療の向上をはかることを目的として、国民と共同した運動により、医療制度の改善を追及するとともに、会員のための諸事業を行っています。

今回、貴機構の医療事故調査・支援事業運営委員会委員長尾能雅氏が、医療事故調査委員長であった2022(令和4)年11月5日、愛知県愛西市の新型コロナワクチン集団接種会場でワクチン接種を受けた女性が死亡した事例の「事例調査報告書」を、委員長自ら記者会見で公表しました。この行為は医療事故調査制度の制度趣旨そのものを崩壊させ、法令に抵触すると考えられます。この件について、以下に要望を申し述べます。

要望の要旨

一、医療事故調査・支援事業運営委員会委員長尾能雅氏を、医療法違反と厚生労働省局長通知違反を理由に、貴機構における全ての役職から解任すること

二、長尾能雅氏の過ちを二度と繰り返さないように、医療事故調査制度の運用を改善すること

三、本要望書を日本医療安全調査機構の理事・監事・顧問の全てに周知すること

要望の理由

一、医療事故調査・支援事業運営委員会委員長尾能雅氏を、医療法違反と厚生労働省局長通知違反を理由に、貴機構における全ての役職から解任すること

第1 新型コロナワクチン集団接種会場の特殊性と医療事故

2022(令和4)年11月5日に愛知県愛西市の新型コロナワクチン集団接種会場でワクチン接種を受けた女性が、接種から約2時間で死亡した事例は、同年11月15日愛知県医師会が、早急に対応し、各医会推薦委員、地区医師会、学識経験者、オブザーバー(弁護士・保険会社)にて構成された医療安全対策委員会を開催し、提供された医療行為が適切であったかどうかを含め、病態の究明及び再発防止等の医療安全に資する議論を行ない、同月17日に「新型コロナワクチン接種後に40代女性が死亡した事案について」と題した報告書を作成しています(以下、「医師会報告書」といいます)。

また、医療事故調査制度に基づき、愛西市が医療事故調査委員会を設置し、同年12月15日、医療事故調査・支援センターに本事例を報告しました。

元来、市民の健康に関する相談・指導を行う福祉センターでの新型コロナワクチン集団接種会場における接種ブース、経過観察室、救護室は、本来医療行為を行う想定はなく設計も医療施設とは全く異なるものです。また、充分な人員や医療機器や什器などの環境などが整っていません。その上、日常診療ではチームを組んでいない、様々な施設で勤務する医師・看護師・保健師・事務スタッフが臨時で集められ、臨時のチーム作りが行われ、スタッフ各々が接種ブースや経過観察室などに分散して配置につきます。

一般の診療でも、呼吸困難や心停止などの急変時に、救急救命が必要になる場合、時間的にも量的にも、完全な情報を知って意思決定しているのではありません。限られた時間と情報に基づいてしか意思決定できない状況で、病態の把握や処置を行わなくてはなりません。ましてや診療行為を行うのに理想的とはほど遠い集団接種会場においてはなおさらです。

愛西市の事例は、ワクチン接種という「医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡」であって、本邦初のパンデミックにおける、臨時に設置された環境で「当該管理者が予期しなかった」事例であり、医療法第6条の10第1項に定義された医療事故として報告されたことは、本制度の目的に合致すると存じます。

第2 医療事故調査制度の目的

改めて厚生労働省のホームページ「医療事故調査制度に関するQ&A(Q1)」を確認すれば、本制度の目的は、医療法「第3章 医療の安全の確保」に位置付けられているとおり、医療の安全を確保するために、医療事故の再発防止を行うこととされております。「説明責任を目的としたシステム」ではなく、「学習を目的としたシステム」にあたり、責任追及を目的とせず、医療者が特定されないように非識別化することになっており、WHOドラフトガイドラインでいうところの非懲罰性、秘匿性、独立性、システム指向性といった考え方に整合的なものとされています。

第3 医療事故調査制度における法令・通知と個人情報保護

秘匿性については具体的な法令によって明確に規定されており、医療法第6条の21「医療事故調査・支援センターの役員若しくは職員又はこれらの者であつた者は、正当な理由がなく、調査等業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。(下線部は当協会による)」同法第6条の22「医療事故調査・支援センターは、調査等業務の一部を医療事故調査等支援団体に委託することができる。2 前項の規定による委託を受けた医療事故調査等支援団体の役員若しくは職員又はこれらの者であつた者は、正当な理由がなく、当該委託に係る業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。(下線部は当協会による)」[1]、医療法施行規則第1条10の4第2項「病院等の管理者は、医療事故調査・支援センターに報告を行うに当たっては、当該医療事故に係る医療従事者等の識別(他の情報との照合による識別を含む。次項において同じ。)ができないように加工した報告書を提出しなければならない。」同規則第1条10の4第3項「遺族への説明は、当該医療事故に係る医療従事者等の識別ができないようにしたものに限る。」としています。

「他の情報との照合」による識別化も禁じている点は注目が必要です。いわば、医療事故に関係した医療従事者について、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)第2条第3項の「要配慮個人情報」と同様の、厳格な保護の対象にするという趣旨であるといえます。

これらの規定は、個人情報保護の観点から当然であり、日本国憲法11条(基本的人権)「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」と整合性のある条文となります。

また、厚生労働省医政局長による通知「医政発0508第1号平成27年5月8日」17頁「10.センター業務について②○ センターが行った調査の結果の取扱い」には、「○ 本制度の目的は医療安全の確保であり、個人の責任を追及するためのものではないため、センターは、個別の調査報告書及びセンター調査の内部資料については、法的義務のない開示請求に応じないこと。※証拠制限などは省令が法律を超えることはできず、立法論の話である。○ センターの役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由がなく、調査等業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。(下線部は当協会による)」とあります。

ところが、本件で長尾能雅氏が行った具体的な内容に踏み込んだ「記者会見」を行えば、調査等業務に関して知り得た秘密を漏らすことになり、メディア等に大々的に事案を報告することで、他の情報との照合によって当該医療従事者個人の識別が容易になり、個人の情報の保護を冒す蓋然性が高くなりますので、明らかに上述の医療法第6条の21(第6条の22第2項)に反しています。透明性という耳触りのよい文言を曲解して事故をメディア公表することは、法律全般の骨子を崩壊させ、WHOの言う秘匿性にも反することになり、「学習を目的としたシステム」体系による医療安全を台無しにしてしまうことになります。繰り返しますが、厚労省通達においても、医療事故調査制度がWHOドラフトガイドラインにいう「学習のための」制度であるとされており、説明責任のための制度と学習のための制度は「両立困難」とされていることからも、メディア公表は明らかに制度の根本趣旨を理解しないものと言わざるを得ません。

このような運用を続けていれば、医療事故に関連した医療従事者の人権・個人情報が毀損され本邦で20世紀から21世紀の移行期に問題となった「立ち去り型サボタージュ」による医療崩壊が再来することになります。

第4 長尾能雅氏の法律違反・局長通知違反行為と医療事故調査制度の目的違反

愛西市の事例においては、長尾能雅氏が医療事故調査委員会委員長として作成した事例調査報告書(以下、「長尾報告書」といいます)の発行日と同日の2023年9月26日に、長尾能雅氏らが「早期にアドレナリンを投与するなど適切な治療がなされていれば救命できた可能性を否定できない」と医学的評価を行った長尾報告書を記者会見で公表してしまいました。

当事者となった医師は「外出した際には、人殺しと罵声を浴びせる人がいたり、クリニックの写真がネットで拡散してあらぬことを書き込まれたり、嫌がらせのレベルを超えて身の危険性を感じる(2022年11月17日 愛知県医師会記者会見発表)」バッシングが巻き起こり、いわゆるセカンド・ヴィクティムとなっていたところ、2022年12月29日、長尾能雅氏は「愛西市医療事故調査委員会」の第1回を開催したのちにも記者会見を開催し「対応に当たった医師は(愛知県)あま市の医師会から派遣された医師である。」と限定する情報を述べています。さらに、長尾報告書では「医師 B:内科医、医師歴 5 年以上 10 年未満」と上述の情報との照合による識別が確定的になる公表を行ったため、誹謗中傷がより激化しています。

このことからも、長尾報告書は、単純に医師名を匿名としただけで、他の情報との照合により、「当該医療事故に係る医療従事者等の識別ができる報告書」ですから、上述の医療法、医療法施行規則に抵触することは明らかです。

報道によれば、遺族側が民事訴訟を提訴し、刑事事件として告訴される事態となりました。これは医療事故調査制度では全く想定されていなかった事態であり、本制度の根幹を揺るがすものです。

以上により、長尾能雅氏の記者会見(2022年12月29日および2023年9月26日)は、上記で示した、医療法第6条の21(6条の22第2項)、および、医政発0508第1号平成27年5月8日の違反といえます。

また、貴機構による本制度の研修会では、事故調査の手法として「聞き取りにあたって必ず『法的強制力がある場合を除いて聞き取り内容の開示はしない。その他の目的で使用されない。』ことを約束し、開始する」と繰り返し指導しております。「開示はしない」と約束しながら、記者会見を行い「内容の開示」を行う行為は、自己負罪拒否特権を規定した日本国憲法38条1項の精神にも反します。

したがって、貴機構に所属し、今回、愛西市の医療安全委員会の委員長として、医療行為を安易に評価して公表した長尾能雅氏の①「医療法第6条の21(6条の22第2項)」違反、②「厚生労働省医政局長 通知(医政発0508第1号平成27年5月8日)」違反、③医療事故調査委員長としての「事故調査の手法」約束違反は、責任重大です。

根本的に長尾能雅氏には、日本国憲法第11条、日本国憲法第38条、医療法第3章 医療の安全の確保、医療法施行規則第1条10の4第2項、医療法施行規則第1条10の4第3項などに反映されている基本的人権感覚が欠如していると推測され、医療事故調査制度の委員としての適格性がないと判断されます。

なお、長尾能雅氏は、名古屋大学附属病院の職員であることからすると、国立大学法人法第18条[2]違反、および、医療法第86条[3]違反であることも申し添えさせていただきます。

5 長尾能雅氏による法律違反、通知違反に対する処分

長尾能雅氏からは、「愛西市が公開を希望して決定したことに合わせた」という抗弁が予測されます。

しかし、医療事故調査委員会の委員長の立場にあれば、医療事故調査制度を構成する法令や局長通知を熟知し、記者会見による内容開示を阻止する立場でした。それにも関わらず、「事例調査報告書」を委員長自らによって記者会見で公表しました。これは決して許されない行為です。

医療安全や本件制度に携わるものとして、何らかの厳重な処分が必要であり、最低でも機構における全ての役職から解任すべきです。

つづく>>>

注釈)

[1]医療法第6条の21、第6条の22第2項には、罰則規定があり同法第86条3項には、「規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」とあります。

[2]国立大学法人法 第18条(役員及び職員の秘密保持義務)国立大学法人の役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

[3]医療法 第86条 第5条第2項若しくは第25条第2項若しくは第4項の規定による診療録若しくは助産録の提出又は同条第1項若しくは第3項の規定による診療録若しくは助産録の検査に関する事務に従事した公務員又は公務員であつた者が、その職務の執行に関して知り得た医師、歯科医師若しくは助産師の業務上の秘密又は個人の秘密を正当な理由がなく漏らしたときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

2 職務上前項の秘密を知り得た他の公務員又は公務員であつた者が、正当な理由がなくその秘密を漏らしたときも、同項と同様とする。

つづく

アナフィラキシーガイドライン http://expres.umin.jp/mric/mric_24092-24095-2.pdf

 

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