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Vol.24104 はじめての研修医の卒業を迎えて

医療ガバナンス学会 (2024年5月30日 09:00)


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この原稿は2024年3月27日に医療タイムスに掲載された文章を加筆修正したものです

公益財団法人ときわ会常磐病院
乳腺甲状腺外科・臨床研修センター長
尾崎章彦

2024年5月30日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

■初めての研修医が卒業に

私ども常磐病院は、2021年3月31日に基幹型研修病院になりました。そして、22年4月に当院として初めて受け入れた2人の研修医が24年3月31日に卒業します。

3月21日には、2人の卒業式を行いました。2年間の研修の間に研修医はさまざまな要件を満たす必要があります。内科・外科などの必修科目の研修に加え、主たる症候や症例についてのレポート、さらに緩和医療や虐待など必須知識に関する講義の受講です。二人とも無事要件を満たして、晴れて卒業することができました。

10年以上前、自らも研修医だった時代にはそれらの課題に取り組みました。しかし、指導者としてかかわったのは、今回が初めてです。

1人は今年2月になった時点で50本以上執筆する必要がある研修医レポートのうち4本しか終わってない状態でした。

最後の1つが終わったのは卒業式当日ということで、最後までハラハラしながら見ていましたが、何とか形になり、胸をなで下ろしたところです。

■「病院がなくなる」との危機意識

元々当院が基幹型臨床研修病院を目指したのは、いわき市の医師不足が背景にあります。

18年時点で、いわき市の人口当たり医師数は167人で全国平均である247人をはるかに下回っており、医師の平均年齢は56歳と中核市の平均である50歳をはるかに上回っていました。

そのような地域の中で、常磐病院には十分な医師がおらず、また、多くの高齢の医師が働いておられました。さらに、若い医師は泌尿器科など一部の科に在籍しているのみで、病院全体として、若手医師を受け入れる仕組みがありませんでした。

「このままでは病院がなくなる」―そのような危機感のもとに基幹型研修病院を目指したのでした。

結果的に、19年ごろから私が旗振り役としてプロジェクトを進め、冒頭で描いたように無事、基幹型研修病院として認められました。

本稿では詳細に述べませんが、多くのご縁、また、関係者のご尽力があり、目標が叶ったことは言うまでもありません。

■臨床医のかかわりの中で自らも成長

ただ今振り返れば、率直に言って、実際に研修医を指導するという面では自分は十分に準備ができていなかったように思います。実際、私も臨床研修センター長になった時点で、初期研修が終了して既に10年以上の月日が経っていました。専門分野に専心した結果、当時身につけた知識もスキルも錆びついており、また、十分なアップデートもできていませんでした。

そのような状態で、研修医の教育がスタートしたので、きっと彼らを不安にさせたことも多くあったと思います。結果的に、あってはいけないのでしょうが、彼ら以上に私自身もこの2年間は学ぶことばかりだったように思います。

例えば、カルテの書き方や患者さんとの接し方、薬を処方する際の根拠一つとっても、彼らへの指導を意識することで、改めて、医師としての知識や態度をブラッシュアップできたと考えています。

また、そのような状態の当院に飛び込んでくれた研修医なので、冒頭で紹介した「大丈夫か?」と感じるようなエピソードを含めて、可愛くて仕方がないわけです。

実際、研修医レポートについては、私自身も研修医時代になかなか仕上げることができず、残ったレポートの数を大きく医局に貼り出されていました。ですので、彼の姿にはどこか懐かしい気持ちも感じ、今回、やや過保護なまでにサポートしてしまったように思います。
■志を抱いた医師人生を

さて、今回卒業する2人の研修医は、為人、能力ともに申し分なく、彼らは、いずれ一人前の医師になると確信しています。ただ、医師人生においては、指導者の導きが重要になる瞬間も多くあるでしょう。

実際、私自身も多くの指導者のおかげで、なんとかこれまでキャリアを紡いできました。自分も後輩の力になりたいと考えていますし、今後私が彼らの力になれることがあれば、声をかけてほしいと考えています。

そして、一つお願いしていいのであれば、彼らには何か志を抱いて、その情熱のもとに医師人生を全うしてほしいと考えています。志は仕事にやりがいを与えてくれ、人生を豊かにしてくれるからです。

東日本大震災はとても不幸な出来事でしたが、私の場合、震災があったから、福島、そして、浜通り・いわきに来ることができました。そして、震災があったから、現地の医療や暮らしに貢献することを大きな志として仕事に取り組むことができました。

エゴかもしれませんが、彼らにもそのような志を見つけて、医師人生を送ってほしいと考えています。

<写真>
3月21日、初めて受け入れた2人の研修医の卒業式が行われた。
http://expres.umin.jp/mric/mric_24104.pdf

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