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Vol.24105 ザンビアにつながる日本での内科医研修

医療ガバナンス学会 (2024年5月31日 09:00)


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この原稿は医療タイムスからの転載です。

秋田大学病院
研修医  宮地貴士

●指導医に学んだ家族第一の姿勢

秋田県横手市にある平鹿総合病院で2年間にわたる初期臨床研修が修了した。現在は母校の秋田大学で内科研修に励んでいる。

今年1年間はサブスペシャリティー領域を決めず、内科各科をローテーションする予定である。学生時代から医療支援に取り組んできたアフリカ、ザンビア共和国の医療に対する情熱を胸に秘めながら、内科医としての道を勉強させていただいている。

本稿では、初期研修での学びと現在の進路を決めた理由、そして今後の抱負を紹介する。

初期研修を経た一番の財産は、臨床医として心から尊敬できる指導医に出会えたことだ。それは血液内科のT先生だ。先生からは医師としての心構え、患者さんとその家族を第一に考える姿勢を学んだ。

あるときT先生の指導のもと、肺炎に起因する敗血症、DICの80歳代女性を担当することになった。患者さんは幸い、補液や抗生剤で急性期は脱した。

しかし心不全の既往もあり離床が進ます、食事摂取量も低下した。元来独立心が非常に強い人で、伴侶を亡くして以降は独居で生活し、遠方に住む家族とは疎遠な状態だった。

そのため、在宅でのケアは難しく、食事の摂取が難しければベストサポーテイブケア(BSC)を提供し、病院で看取りをする方針となった。疎遠になっていた長男も母の急な危篤状態に、不安を隠せない表情だった。

BSCの方針が決まってからは毎週、長男に電話で病状報告を行った。食事の量や呼びかけへの反応、採血結果はもちろんだが、患者さんの表情が伝わるような説明をと指導してもらった。コロナ禍で自由に面会できない家族の気持ちをくんでのことである。

そして1カ月後、患者さんは安らかに眠りについた。私が初めて死亡診断書を作成するとき、T先生はこう仰った。「死亡診断書は患者さんにとって人生最後の公式文書になる。その思いをもって先生の名前を記名してね」

T先生は遺体が病院から霊柩車で送られる最後の瞬間まで、故人の命に対する畏敬の念を抱き続けていた。後日、家族からお礼の手紙とその患者さんが大好きだったお酒が届いた。
●T先生からの忘れられない言葉

「患者さんの治療効果に最も影響するのは主治医の情熱」。これはT先生からの忘れられない言葉である。診療行為は当然のこと、患者さんと検査結果や治療効果を共有することなど、診断学やエビデンスを越えた医師としての基本姿勢を学んだ。

4月からはT先生も所属する秋田大学第三内科(血液、腎臓、膠原病)の高橋直人教授にお世話になっている。

大学病院における内科専攻医の多くは、各医局に所属し医師3年目から専門研修を開始する。私は内科の道に進むことを決めたが、サブスペシャリティー領域については検討中であった。

秋田大学内科専攻医プログラムの長でもある高橋先生に相談したところ、各診療科との迅速な調整の上で内科ローテーションをできる体制を整えてもらった。

さらに、地域病院における通年の一般内科外来や救急当直のアルバイトなど存分に経験を積む機会を提供してもらった。

また、内科プログラムの必要要件である患者登録に期限はない。そのため教授からは、「ザンビアに行きたくなったら、プログラムを一時停止し、いつでも行ってきなさい」と寛大な言葉もいただいている。医師の世界は義理と人情と聞くが、その世界観をよい意味でとても実感している。

●ザンビアでの取得を目指す医師免許

今年1年間、内科を勉強して以降は、タイミングを見て、ザンビアにまた戻る予定である。

日本の三重大学で博士号を取得した肝胆膵外科医のジャクソン先生のサポー卜の下、これまで現地では、いつでも“実習”できる環境を用意してもらった。
昨年3月には、ザンビア大学血液内科のチャールズ教授に指導してもらい、2週間のインターンを行った。

今後は、臨床医として“働く”機会を獲得する必要がある。そのために、少なくとも半年間程度はザンビア大学医学部付属病院で経験を積ませてもらいながら、現地の医師免許を取得する。

現地の医師免許は語学試験であるlELTs,日本の医師国家試験のようなマーク試験、口頭試問の3つを突破すれば取得可能である。

その後は、現地のニーズを踏まえながら、日本で専門を取得するか、そのまま現地に残り診療を続けるか、検討していく予定だ。

秋田とザンビアで支えてくださっている皆さんに感謝しながら今後も臨床医としての知識と技術を磨いていきたい。

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