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臨時vol 29 高久通信 「魚の摂取は加齢性黄斑変性症を防ぐ」

医療ガバナンス学会 (2006年10月2日 00:06)


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2006年9月30日発行


 

加齢性黄斑変性症という目の網膜の病気については、我が国ではあまり知られていない。しかし、アメリカでは高齢者の失明の最も重要な原因として大きな社会的問題となっている。加齢性黄斑変性症の発症には遺伝的な要因が強く関係し、瞳の色が薄い人ほどかかりやすいとされている。そのため黒い瞳を持った日本人はかかりにくいと考えられていたが、最近になって日本でも加齢性黄斑変性症と診断される患者が増加しており、我が国における高齢化がさらに進むと、この疾患による失明者が今後一層増加することが十分に予想される。
最近、魚を食べることによって加齢性黄斑変性症の発症をある程度防ぎ得ることが報告されている。この仕事を報告したのはアメリカの研究者たちで、681人の高齢のアメリカ人を対象にし、週2回魚を食べている人は、魚を全く食べない人に比べて36%も加齢性黄斑変性症の発症が減ったと報告されている※。なお、この論文では同時に喫煙者は非喫煙者に比べて加齢性黄斑変性症になる割合が2倍であったと述べられている。同じような報告がオーストラリアの研究者たちによってもなされている。彼らが対象としたのは2,335人の高齢者で、5年間にわたって経過を追っている。その結果週1回魚を食べた人では、初期の黄斑変性症になる危険性が40%減少し、さらに、週3回以上食べた人では、進行性の黄斑変性症の発症も低下したとのことである。週1、2回の魚の摂取で上述のような予防効果があるのは驚きであるが、欧米人では加齢性黄斑変性症の頻度が高いこと、魚を食べる機会が少ないことを考えると、そのような結果が出てもおかしくないのかもしれない。
魚の摂取がどのようにして加齢性黄斑変性症に対して予防的に働くかに関しては、鮭などに多く含まれるオメガ-3脂肪酸の抗酸化作用が黄斑症に対して予防的に働くためではないかと推定されている。食事中のオメガ-3脂肪酸が冠動脈や脳動脈の動脈硬化に対して、その抗酸化作用を介して予防的に働くことが以前から知られているが、今回の加齢性黄斑変性症に対する魚摂取の効果も、その一環として考えることが可能である。ちょうどこの原稿を書いているときに慶應大学の研究グループが加齢性黄斑変性症が活性酸素によって起こることを、マウスを使った実験で証明したことが新聞紙上で紹介されていた。この研究は魚の中のオメガ-3脂肪酸の抗酸化作用と加齢性黄斑変性症との関係を裏付ける動物実験であるともいえるであろう。魚の好きな人が多い日本人にとって、安心感を与える報告であることには間違いない。

※Johanna M, et al. Arch Ophthalmol. Vol. 124: 995-1001, 2006

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