医療ガバナンス学会 (2024年12月18日 09:00)
坪倉先生の放射線教室(21) 高レベル廃棄物の地層処分
この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。
福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治
2024年12月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
●国が文献調査を申し入れ( https://minyu-net.com/news/detail/2024060820439 )24年6月8日配信
高レベル放射性廃棄物は、数万年以上の非常に長期間の保存が必要になります。そのため、300メートル以上の地下深い場所で「地層処分」することが、現実的な処分の方法であると国際的に考えられています。その一方、国内では最終的に地層処分する場所がどこになるか決まっていません。
処分地をどのように選ぶのかについて、文献調査、概要調査、精密調査と呼ばれる、3段階のプロセスを踏まなければならないことが法律によって定められています。
一つ目の文献調査は、その地域の地層に関する文献や過去のデータを細かく調べる机上の調査です。先日、佐賀県玄海町に対して、国が第1段階の文献調査を申し入れたというニュースが出ました。
実はこの文献調査は、2000年に法律が定められた当初、国が市町村にお願いするのではなく、調査を希望する自治体が国に応募するという形をとっていました。しかし、応募する自治体は多くなく、実際の応募後に撤回される例もあり、意見の統一も困難でした。
自治体からの応募のみだと、応募を判断する自治体の首長への負担が大きすぎるという指摘もあり、自治体からの応募を待つだけではなく、国から調査の実施を申し入れる手法が導入されるようになりました。
今回の佐賀県玄海町についても、第1段階ではありますが、国が町へ調査を申し入れた形になります。
●海岸から20キロ以内、好条件( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024061520633 )24年6月15日配信
高レベル放射性廃棄物は、数万年以上の長期保存が必要になります。そのため、300メートル以上の地下深い場所で「地層処分」することが、現実的な処分法であると国際的には考えられています。その一方、国内では最終的に地層処分する場所がどこになるか決まっていません。処分地の選び方は、文献調査、概要調査、精密調査と呼ばれる、3段階のプロセスを踏まなければならないことが法律によって定められています。
一つ目の文献調査は、その地域の地層に関する文献や過去のデータを細かく調べる机上の調査です。その調査のために「科学的特性マップ」というものが作られました。これは、既存の全国データを使って、地層処分に関係する好ましい条件と、好ましくない条件に基づいて、地域を色分けした全国地図です。
好ましくない条件は細かく決められており、例えば、活動層があるところや、隆起や浸食のあるところ、地層が軟弱なところ、火山の周囲、地熱の大きいところ、高い酸性の地下水があるところ、火砕流が及び得るところなどになります。加えて、石炭、石油、天然ガスなどの鉱物資源が分布するところも好ましくない条件の一つです。
その一方、好ましい条件としては、海岸からの距離が20キロ以内を目安として、海岸からの陸上輸送が容易な場所が設定されています。
現在発表されているマップによると、浜通りの沿岸部の南半分は将来の掘削の可能性の観点から、好ましくない地域という色分けになっています。