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Vol.92 東日本巨大地震とtwitter ~阪神大震災を経験した学生の雑感~ その2

医療ガバナンス学会 (2011年3月28日 06:00)


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@minakawa(筆者アカウント)

2011年3月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


1 なかがき

3月19日に引き続き、3月11日からの一連の東日本を中心とする震災に関するtwitterについての私見を述べさせて頂きます。
前回vol.74では本稿執筆のきっかけと、私の3月11日から12日にかけての一連の呟きを書かせて頂きました。今回は災害発生から一週間の動向から 感じる災害対策ツールとしての、そしてコミュニケーションツールとしてのtwitterへの雑感を記させて頂きます。また、執筆時点(3月21日)までで 筆者が皆様に伝えたいつぶやきを、大変恐縮ではありますが掲載したいと考えております。

なお、前回から何度も強調していますが、僕は現在単なる大学院生であり、twitterに特別詳しい訳ではなく専門的知識もそこまでありません。それゆ え的外れなことを述べることもあるかも知れません。ただ、16年前に神戸で震災に遭い、生家が生活不能になり大阪に避難したという経験があるため、それを 敷衍して何か伝えられることがあるのではないかと考え、一私見をこちらで述べさせて頂いている次第です。決して皆様に自らの意見を押し付けるつもりはあり ません。
もし共感して下さった場合は、お気軽にminakawaのアカウントをフォローして下さい。

2 今回の震災に関するtwitterに対する雑感

○「自分事化」するには最適のツールだが、限界もあることを意識すべき
Twitterは自身のフォロー次第で全世界中のつぶやきが一つのTL(タイムライン)にまとまって閲覧できるので、まさに時間や距離を飛び越え、自分が事件の当事者にもなることが可能です。
ただ、物理的及び能力的限界があることは常に自覚すべきだと考えます。確かに今回の震災においても被災地の外の方が様々な有益情報(医療従事者による救 急措置の方法や、原子力研究者による原発事故についての状況、プログラマーによる停電や地震に関するアプリの提供)をつぶやいており、実際かなりの方が役 立ったと考えているはずです。
しかし、僕をはじめ多くのtwitterユーザーは災害に関連する専門的知識をお持ちではない方だと思います。そこでtwitterで被災地の方のつぶ やきなどを見て過度に責任を感じ「何かしてあげたいのに自分は無力だ」と考えてしまい、自責の念にかられるのは、まさに「自分事化」による弊害だと思われ ます。できないことを考えるとキリがありません。twitterは「自分ができること」を広げるためには有効なツールですが、「自分ができないことを痛感 する」ツールではないと意識しておくことは必要です。

○「非難より避難を考える」
災害発生当時に限らず、現在でも多くのデマなどがtwitter上に流れました(具体例は割愛)。そしてその度にTLでは議論が起こり、デマ自体やデマを流した人についての非難が行われていました。
しかし想像してみて下さい。そのつぶやきを流したりリツイート(つぶやきの伝言、拡散)した人も基本的に悪意があってした訳ではありません(一部悪意の デマはありましたが)そして何より、被災してやっとの思いで携帯に電源が入り情報を収集しようとして厳しい非難がTL上に溢れ返っていたらどう思う か・・・
私は3月11日から一貫して、twitter上で非難はすべきでない旨を主張してきました。それは16年前の経験からの私見でもあります。私が被災した 当時、憎かったのはただ地震そのものであり、それと同時に周囲で争いや喧嘩が生じているのは見ていてとても辛かったです。被災地の方は犯人探しや糾弾より もまず自身の安全、心の平穏を願っているはずです。
そして、それはデマに限られないと私は考えます。TLでは原子力発電そのものや内閣そのものについての議論や非難が少なからず見られました。確かにそれ らの意見はもっともではあります。しかし、果たして今すべき議論でしょうか。この緊急事態にそのような議論をするのは客観的合理的判断ができないおそれも あり、適したタイミングではないだろうと考えます。
決して「議論や非難を一切すべきでない」と言っている訳ではありません。優先順位の問題であり、「今はそれよりも避難に必要なことをつぶやこう」という意見です。

○日常生活のつぶやきをおそれない
震災があると、テレビや新聞報道は全て震災情報になり、過度な情報接触ゆえにストレスを抱えてしまう方も少なくないと思われます。twitterは確か に災害対策として有効ですが、それ以前にコミュニケーションツールです。今回のような緊急事態では有益な情報がTLの多くを占めるべきだとは思いますが、 ごくたまに日常生活のつぶやきや癒しが入っていることで救われる人もいるはずです。
さらに被災地の方にとっても「日本全体が災害に遭っているわけではない」と感じることはプラスなのではないかと思います。16年前、必死の思いで大阪に避難した時にほぼ無傷で日常を送っている大阪を見て、嫉妬や怒りなんかより安堵の気持ちが強かったです。

○大事なのは各ユーザーの「メディアリテラシー」と「想像力」
これまで様々な私見を述べてきましたが、集約するとこの二つが肝要だと思われます。
前者は近時の流行語となっていますが、私自身としては「情報の真偽・意図を正確に見抜く力」と考えています。この度の震災に関する情報が錯綜する中、誰 が発信した情報か、情報のソースは何か、なぜその情報が流れたかを瞬時に理解する能力が日本国民全体に求められていることが、twitterの普及・今回 の有用性から更に浮き彫りになったと考えられます。
また、後者については、特に自分が情報を発信する側の場合、その情報を受ける人はどんな人で、一体どう感じるかなどに思いを巡らせた上で発信することで、その情報の質は劇的に上がるのではないでしょうか。

3 筆者のつぶやき(3月12日以降)
以上の私見をtwitterの制限字数である140字に詰め込み、今日までつぶやき続けてきました。前回の執筆時点からまたフォロワー(私のつぶやきを 追ってくれている人)は500人近くになりました。それが果たして何を意味しているか私にはまだ分かりませんが、個人的に「その言葉に救われた」「ありが とう」と言われることはただただ嬉しいですし、本望です。
自分にとって想いの強いつぶやきを10個挙げて、本稿の最後とさせて頂きます。

[3月12日 18時48分]
お願いです、非難は今は我慢して下さい。そこからは何も生まれない・・・神戸の人は16年前にそれを痛感しています。それよりも、横にいる人に優しくあろうと思うこと、遠く離れていても信じること、出来る限りの声を出すこと、生きる希望を持つこと。お願いします。

[3月13日 10時07分]
【被災地外の方、日常生活に戻れる方】どうか責任を感じ己を責めないで下さい。被災地の方も望んでいないしそれで災害がおさまる訳ではありません。どうか 日常生活を胸を張って行って下さい。日々を楽しむ権利、日常生活をする権利は誰にも奪えない絶対的人権です。地震報道で心乱れるなら少し切ろう。

[3月13日 10時29分]
【ご無事であった方】どうか周りで大きな被害を受けた方とご自身を比較して気持ちを落とさないで下さい。その不平等はただただ天災が悪い。今できるのは無 事生きて、時間をかけて立ち直っていくこと、それからその方々のためにも自分の道を歩くこと。責任を感じるには早すぎます!大丈夫!

[3月13日 20時43分]
【お願い】デマが流れてきたとしても、それに対して非難しないで。冷静に、その流れを自分でとめればいい。twitterなら識者が見てる、ちゃんと否定 して安心させてくれる。僕ら素人が変に反応するとカオスになる。外がそれなら、被災地の方は・・・想像しよう。自分にできることを。

[3月14日 23時06分]
【16年前の被災者より再送】被災地の外でやりきれない悔しさを感じている方に伝えて。寄付や献血も大事。でも、その悔しさを正の力にして日々の勉強や仕事に!復興は何年もかかります、努力して大きくなってからの貢献も遅くない!大事なのは今の気持ち忘れないこと。

[3月15日 22時57分]
もう日本人全員が被災者と言ってもいいと思います(程度の差は勿論ありますし、被害者面するつもりでもないですよ)。友人から沢山電話が来ます。どうか、前向きな言葉を吐こう。僕だって動揺していますし不安です。だからこそ明るい言葉を

[3月16日 7時24分]
【被災地の外の方】twitterで真面目なことを呟き続ける義務はないし、twitterを情報収集に見続ける義務もない。下らない呟きを見て心落ち着く人も沢山いる。どうか普通の生活を。何度も言いますが、あなたの命、心の健康も勿論大事。

[3月18日 7時58分]
【何度も言う】無事だった地域の方、避難してきた被災者の方にどうか暖かい心遣いを。心身共に限界なはずです、道を空けたり道案内するだけでもいいんです。16年前の大阪の包容力はすごかったです。もう一つの故郷として迎えてあげて下さい。

[3月20日 15時36分]
【16年前の経験則】「怖い」「不安だ」という言葉は老若男女問わずどうか我慢せずに。溜め込むほど負の気持ちは強くなります。ただ、できればツイッターの文字媒体ではなく、会話で吐き出しましょう。文字は受け手の記憶に強く残ることも多い。

[3月21日 22時53分]
三連休がもうすぐ終わり、日常に戻って行きます。僕ら被災地の外の人がすべきは、震災や1週間前の気持ちを忘れないこと、しかし必要以上に自責しないこと。避難してきた方を暖かく迎えること、日々を強く優しく生きる喜びを再確認すること。

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