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Vol.25055 現代の大学生へのメッセージ:自分らしく人間らしく生きる

医療ガバナンス学会 (2025年3月27日 09:00)


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AEC Labo 株式会社
代表取締役 江石義信

2025年3月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

1. はじめに

現代の世界は、政治や経済の変動が激しく、倫理観の在り方さえも揺らいでいます。グローバルな競争の激化、急速な技術革新、社会の価値観の変容が進む中で、将来に対する確かな安心感を持つことが難しい時代となっています。
わたくしは東京の国立大学で40年間、教育と研究に携わり、多くの学生と向き合う中で、彼らの悩みや葛藤を目の当たりにしてきました。大学生活は、単なる職業訓練の場ではなく、自分自身を見つめ直し、価値観を確立する貴重な機会です。しかし、社会の価値観や経済環境の変化に伴い、学生たちは「自分らしく生きること」と「社会の期待に応えること」の間で揺れ動いているように感じます。
本稿では、これから社会に出る大学生がどのように充実した人生を歩むべきかを考える指針を示し、自己の確立、社会との関わり方、価値観の形成について具体的な考え方を提案したいと思います。

2. 自分らしく生きるということ

「自分らしく生きる」とは、単に好きなことを自由にやることではありません。社会の中で自分の役割を見つけ、他者との関わりを持ちながら、自分の価値観を大切にして生きることです。しかし、多くの若者は「本当に自分がやりたいことが分からない」「将来に確信が持てない」と感じています。これはごく自然なことであり、若いうちに人生のすべてを決める必要はありません。むしろ、大学時代は自分を探求し、さまざまな経験を通じて価値観を確立する大切な時期だと言えます。
重要なのは、自分が何を求めているのか、何に価値を見出すのかを考えることです。決断をする際には、「これは自分にとって本当に大切なことなのか?」と問い直す習慣を持つことで、社会の流れや他人の価値観に流されずに済むようになります。

3. 6/4の選択、10/0の決断

大学や職場の選択に限らず、人生の分岐点では自分なりの判断が求められます。将来に対して絶対的な確信を持てる人はほとんどおらず、すべてが思い通りに進むとも限りません。多くの場合、迷いながらの選択になります。このような状況を、わたくしは「6対4の選択」と呼んでいます。
もし6/4の迷いを抱えたまま、次の分岐点を再び6/4で選択し続けると、自分本来の価値観の軸から徐々にずれていくことになります。これを繰り返すうちに、やがて自分がどこに向かっているのか分からなくなってしまうでしょう。
大切なのは、6/4で迷いながら選択したとしても、決断した瞬間には「10/0」の姿勢で迷いなく行動することです。選択の段階では迷いがあっても、いったん決断したら、それを揺るがせにせず、全力でその道を進む。こうした姿勢が、自分に充実感をもたらし、やがて新たな可能性や成長へとつながっていきます。

4. 生きる意味と自己の確立

「人生に意味はあるのか?」「自分らしく生きるとは何か?」と考えたことがあるでしょうか。こうした問いに明確な答えを持つ人は決して多くありません。しかし、人間は「誰かの役に立ちたい」「自分にしかできないことをやりたい」「生きがいのある人生を送りたい」「やりがいのある職場で働きたい」と願う存在です。
これは単なる生存本能ではなく、知的存在としての本質的な特性です。自然(ピュシス)においては生存が最優先されますが、人間は言葉(ロゴス)を持ち、意味を求めるがゆえに、「なぜ生きるのか?」という問いを抱きます。この問いに真剣に向き合うことこそが、自分らしい人生を歩むための第一歩です。どのような環境にあっても、自分自身が納得できる生き方を模索し続けることが大切です。

5. ないものねだりと本当の価値観

「もっとお金が欲しい」「より高い地位につきたい」—— こうした願望は多くの人が抱くものですが、それを手に入れた途端、新たな欲求が生まれ、満足感は長続きしません。これは「ないものねだり」の本質であり、こうした目標を追い続ける限り、真の充実感を得ることは難しくなります。
「成功」や「満足」は、手に入れた瞬間に次の欲望へと移行しやすいものです。何かを得た後も、新たな目標が生まれ、満足感が薄れてしまうのは、外的な要因に価値を置きすぎるからです。自分の本当の価値観を見極め、その軸に沿って生きることが、持続的な充実感を得る鍵となります。
大切なのは、目先の欲望に振り回されず、自分が本当に求めているものを見極めることです。自分なりの価値観を軸に人生の選択を重ねることで、それぞれの経験が確実に積み重なり、揺るぎない人生の基盤となっていきます。生きがいのある人生とか、やりがいのある仕事というものは、こうした生き方の中から生まれてくるものだと、わたくしは考えています。

6. 大学生時代は「自分探し」の時期

大学生活は、単に知識を得る場ではなく、自分自身を深く理解し、価値観を確立するための貴重な期間です。しかし、多くの学生が「自分が何をしたいのか分からない」「自分の適性が見つからない」と悩みます。これはごく自然なことであり、むしろ大学時代は「自分探し」をするための時間だと前向きに捉えるべきです。
重要なのは、「受け身で待つ」のではなく、「自ら積極的に動く」ことです。興味のあることには積極的に挑戦し、これまで関わりのなかった分野にも飛び込んでみることで、自分に合ったものを見つけるきっかけが生まれます。自分に適した生き方を見つけるには、トライ&エラーを繰り返し、試行錯誤を重ねることが不可欠です。失敗を恐れるのではなく、そこから学び、それを成長の糧にする姿勢が重要になります。
また、大学時代は「失敗できる時期」でもあります。社会に出ると、大きなリスクを伴う決断を求められる場面が増えますが、大学生のうちであれば、たとえ思い通りにいかなくても、それが致命的な影響を及ぼすことはほとんどありません。この時期にこそ、恐れずに新しいことにチャレンジし、自分の可能性を広げていくことが大切です。傷つくことを避けるのではなく、その経験から得られる学びを大切にしてください。

7. 逆境を乗り越えるための考え方

人生には、自分にとって不都合な出来事が必ず起こります。しかし、それを単なる「失敗」や「不運」として片付けるのではなく、「成長の機会」と捉えることで、人生の見方が変わります。
例えば、希望していた就職先に内定をもらえなかった、試験で思うような結果が出なかった、人間関係で悩んでしまった——こうした出来事は誰にでも起こるものです。しかし、それを乗り越えたとき、人は大きく成長します。
重要なのは、「なぜこの結果になったのか」を冷静に分析し、「次にどうすればよいのか」を考えることです。失敗から学び、それを次の機会に活かすことができれば、すべての経験は貴重な財産になります。
また、困難に直面したときには、周囲の人に相談することも大切です。一人で抱え込まず、信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなり、新たな視点を得ることができます。

8. 人間らしく生きるとは

人間は、「ただ生きる」だけの存在ではなく、「どのように生きるか」を考え、他者と関わることで価値を見出す生き物です。経済的な成功だけが幸福を決定するわけではなく、心の充実や他者とのつながりも、人生において欠かせない要素です。
人権は単なる権利ではなく、他者と共に生きるための責任を伴います。自分だけが満ち足りていても、それが他者を犠牲にしたものであれば、本当の意味で「人間らしく生きている」とは言えません。社会の中で互いに支え合いながら生きることこそが、人間らしさの本質です。
この点で、他者とのつながりを大切にすることが、人生の豊かさにつながります。大学生活では、友人や先輩、教官や教授との関係を大切にし、学業だけでなく、人との交流を通じて学ぶことが重要です。対話を重ねることで、自分の価値観を広げ、他者を理解する力を育むことができます。
近年、SNSの発展により、オンライン上でのつながりが増えています。しかし、リアルな対面のコミュニケーションが持つ価値は依然として大きなものです。直接会って話すことでしか得られない気づきや、深い信頼関係の構築があることを忘れずに、人との関わりを大切にしてください。

9. 生きがいと働きがいの意義

「生きがい」や「働きがい」は、人生を豊かにする重要な要素です。しかし、それは単に「好きなことを仕事にする」という単純な話ではありません。
働きがいとは、自分の仕事が誰かの役に立っていると実感できること、自分の成長を感じられること、そして自分の価値観と合った働き方ができることによって生まれます。
また、「生きがい」は仕事だけでなく、家庭、趣味、ボランティア活動など、さまざまな要素の中に見出すことができます。大切なのは、仕事だけに依存せず、複数の生きがいを持つことです。そうすることで、仕事が思うようにいかないときでも、他の分野で充実感を得ることができます。

10. まとめ:自分らしく生きる覚悟を持つ

現代社会は複雑で、先の見通しが立ちにくい時代です。しかし、どんな環境においても、自分の価値観を大切にし、自分らしく生きることは可能です。
周囲の期待や社会の価値観に流されず、本当に大切なものを見極め、自分自身の人生を主体的に選び取ることが重要です。迷うことがあっても構いません。その中で、確信を持って歩める道を見つけていくことこそが、自分らしく、人間らしく生きるということなのです。
また、人生は一度きりであり、自分が主役です。他者の期待に応えるだけでなく、自分が納得できる生き方を模索し、充実した人生を送るための努力を続けてください。
どのような道を選んでも、その道を正解にするのは自分自身の覚悟です。周囲の意見に流されることなく、自分の選択に責任を持ち、自信を持って歩んでください。

 

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