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Vol.25059 環境省と岡山県の押し付け合いの末に(シリーズ「公害PFOA」岡山・吉備中央編-20)

医療ガバナンス学会 (2025年4月2日 09:00)


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Tansaリポーター
中川七海

2025年4月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

吉備中央町での水道水汚染の原因は、町内の活性炭リサイクル業者「満栄工業」が管理していたPFOA含有活性炭だった。

ところが原因が判明しても、国や県、町は互いに対応を押し付け合う。満栄工業の名前すら公にしない。満栄工業にPFOA含有活性炭を引き渡した企業も不明のままだ。

なぜなのか。

そこには、法の抜け穴があった。

●廃絶決まったPFOAは、「廃棄物」

今回の水道水汚染の原因は、PFOA入りの活性炭だ。フレコンバッグ約580袋分を、満栄工業が水源近くの町営地「財産区」に放置した。

その期間は2008年から2023年の15年間。雨風にさらされた結果、フレコンバッグはボロボロになった。財産区から運び出す際には、新しいフレコンバッグに入れ替えなければいけないほどだった。活性炭から漏れ出したPFOAが原水に混入したのだ。

これは、PFOAという廃棄物を処分しなかったことで起きた「人災」である。PFOAを満栄工業に託しながら、処分されたことを確認しなかった企業にも、満栄工業にも、責任がある。

PFOAについては、2006年に米国EPA(環境保護庁)が製造企業に対して2015年までの全廃を呼びかけた。2019年には「ストックホルム条約」で最も毒性と残留性の高い化学物質に認定され、廃絶が決まった。この条約は日本も批准しており、2021年に経産省はPFOAの製造も輸入も禁止した。

PFOAは「廃棄物」そのものである。

●PFOA含有活性炭が「資材」?

廃棄物処理法では、企業が廃棄物を排出した場合、完全に処分されるまでの過程を都道府県に報告する義務が生じる。排出元から最終処分者まで、運搬業者も含めて行政が把握し、適正な処理をしない業者がいれば、廃棄物処理法に則った罰則等を科す仕組みだ。

ところが、岡山県は廃棄物処理法に基づいて、排出元の企業と満栄工業に対応しなかった。

満栄工業が放置していたPFOA含有活性炭を、県は「資材」とみなしたからだ。PFOAそのものではなく、PFOAを含んだ活性炭の方に着目した。PFOAは無用のゴミだが、活性炭の方はまだ使える価値があるということだ。

この県の判断に沿っているのが、環境省だ。

2023年12月に廃棄物規制課を取材すると、担当者は「岡山県が資材と判断する限り、管轄外だ」と繰り返すばかり。2024年2月8日の衆議院予算委員会では、環境大臣の伊藤信太郎が対応を県任せにする姿勢を見せた。

●環境大臣の答弁後、県は

環境省からボールを投げられた岡山県。環境大臣の国会答弁から2週間足らずの2月20日、ある決定を下す。

満栄工業が放置していたPFOA含有活性炭を、「資材」から「廃棄物」に認定したのだ。180度の転換だ。

この決定は大きい。なぜなら行政は、「資材」であることを理由に満栄工業への責任追及にも、PFOAを同社に引き渡した企業の特定にも乗り出さなかったからだ。

廃棄物に認定されれば、廃棄物処理法に則った指導や処分が科される。責任の所在が明らかになり、事態が一気に動くのではないか。Tansaは岡山県を取材した。

取材に応じたのは、廃棄物行政を担う循環型社会推進課の2人の職員だ。

課長 堂本竜也

産業廃棄物班 総括主幹 多田陽祐

「資材」から「廃棄物」に認定した理由を尋ねると、こう答えた。

「一番の理由は、適切な管理がなされていなかったことです。また、(活性炭自体が)再生に適さない状態でした」

「満栄工業は最後まで、『再生できる』と言っていましたが、『不適正保管』が明らかでした」

満栄工業への聞き取りや、町が設置した原因究明委員会の専門家の意見も参考にしながら調査を進めてきたという。ボロボロになったフレコンバッグから活性炭が飛び散った状態や、15年にわたって放置していたことを踏まえれば、当たり前の判断だ。

●排出元企業は不問

廃棄物認定したのであれば、廃棄物処理法に基づいた措置を講じたのだろうか。

「廃棄物認定をした2月20日に、再発防止策を講じるよう満栄工業に行政指導を行いました」

だが、それだけだという。指導に応じるかは、満栄工業次第だ。社名の公表もなく、今も事業を続けている。

では、PFOAを含む活性炭を満栄工業に引き渡した企業の特定はどうか。廃棄物処理法に照らせば、当然調べるはずだ。

「廃棄物認定をした2月20日時点での持ち主が『排出事業者』となるため、満栄工業のみが対象となります」

つまり2024年2月20日をもってPFOA含有活性炭が廃棄物と認定されたので、それ以前のことは不問にするという意味だ。満栄工業にPFOAを渡した企業は、廃棄物処理法の対象とならない。

納得がいかない。飲用禁止になるほどのPFOAがなぜ活性炭に入っていたのか、どこの企業が排出元なのか。県なら調べられるはずだ。

それでも、「満栄工業にも調査をしましたが、取引先との契約書が無いとのことで」。あくまで満栄工業しか調べないという態度だ。

満栄工業に契約書が無いこと自体が不自然だが、無いのであれば、取引先側から契約書を取得すればいい。満栄工業の元社長らへの取材では、満栄工業の取引先として、クラレや大阪ガスケミカルなどの大手企業の名が挙がっている。

しかし、答えは変わらない。

「そこには調査しないです」

このような仕事ぶりで、県は有害な廃棄物からどうやって市民を守るのか。

そもそも、水道水汚染を起こすほどのPFOAが入った活性炭ならば、県が当初から「廃棄物」とみなすべきだ。そうすれば防げた汚染だ。

だが、課長の堂本は国の対応が必要だと主張する。

「自治体レベルではなかなか対応できない部分なので、やっぱりそこはしっかり国にやってもらわないといけないということで、全国知事会からも要望しています」

=つづく
(敬称略)

※この記事の内容は、2024年10月8日時点のものです。

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