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Vol.99 地震医療ネットワーク:情報伝達ネットワークのバイパス組織

医療ガバナンス学会 (2011年4月2日 14:00)


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日本大学法学部4年 西尾浩登
2011年4月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


3月15日より、地震医療ネットワークの事務局で働いた。地震医療ネットワークとは、3月11日の震災後に、被災地からの情報を収集・伝達することを目的に作られた組織である。事務局は、有志の医師たちによって運営されている。

私自身は日本大学法学部生で、およそ医療とは縁がなかったが、医者でありながら弁護士でもある大磯義一郎先生(加治・木村法律事務所)のご紹介でご縁ができた。地震医療ネットワークでは、医学系にとどまらない多種多様な専攻科の学生がボランティアとして活動している。

今回の大震災では、既存の情報伝達ネットワークが広範囲で断絶してしまった。被災地から物資の要望が出ても、地元自治体が機能不全に陥っているため、情 報が必要なところまで届かなかった。地震医療ネットワークは、断絶してしまった情報伝達ネットワークを、再び繋げ、必要な情報がしかるべきところまで届け るという役目を担っている。

被災地の医療関係者は自らが被災者であるにも関わらず、患者を治療する重責を負っている。それゆえ、地震医療ネットワークに寄せられる被災地の情報は、 整然としたものではなく、混乱したものが多い。地震医療ネットワークでは、このような混乱したまま届けられる情報を広範に収集しつつ、整理し直し、情報を 届けるという役目を負っている。

被災地の情報と一言で言っても、伝聞で伝わるものや直接当事者から届くものもあり、情報の重複や、一部のみ最新の情報が含まれるといった事態がたびたび おこる。例えば、自ら被災しつつ救援活動を地震直後から行っている宮城県石巻赤十字病院は、3月17日の段階で3つのルートから情報が寄せられた。時系列 順にまず、東北大学勤務の医師からは、「石巻赤十字病院はまさに津波被災地区(中略)電気はつくものの水はもう尽きそうな状態との報告です。医療スタッフ の疲弊が限界にきている」との連絡が届き、続いて都内の医師から「物資に関しては、当院は食料は何とか3食おにぎり1つだけ食べられています。飲料水に関 しては、一時危機的でしたが、救援が届き、今は何とかなっています。」という情報が転送されてきた。

その上で、当の石巻赤十字病院から「インターネットが使えないので携帯からメールしております。石巻赤十字病院は被災地で唯一活動している施設なので、 野戦病院状態です。(中略)スタッフの食事は1日に白おむすび3個、水分の支給なし。(中略)今はガソリンがなくて、赤十字救護班の活動が制限されていま す。救急車両の給油も厳しいようです。」という連絡が地震医療ネットワークに届いている。

この3つの情報を総合することで、さまざまな状況が見えてきた。例えば、最初の東北大学からの報告では具体的でなかった水・食糧の状況が、都内からの情 報により明らかになった。また、石巻赤十字病院からの情報で、水に関しては食い違いがあること、ガソリンが不足していることが判明した。このように様々な ルートからの情報を総合的に判断しなければ、実態は掴めなかった。難しい作業だった。

地震医療ネットワークのもう一つの強みは、災害支援をしている供給側からの情報も集まってくる点だ。例えば、日本慢性期医療協会からの受入可能施設情 報、さらに遠く沖縄のとよみ生協病院からの透析患者受け入れ情報まで寄せられた。亀田総合病院や徳州会グループは、輸送機関まで手配して、患者を引き受け ようとしてくれた。この結果、被災地からの要望を、支援活動をしている供給側にダイレクトに伝えることができた。このスピード感が、被災地の救援に役立っ たと思われる。このような迅速なやりとりの背景には、双方の信頼関係があった。平時からの積み重ねの重要さを改めて痛感した。

高度情報化社会といわれて久しいが、平時において有用なネットワークも、危機においては脆く崩れやすいことが、今回の震災で顕著に表れている。地震医療 ネットワークのような、危機において機能する情報伝達ネットワーク(人と人を直接つなげる取り組み)のような組織は、決して今回の大震災限りの組織として ではなく、今後の震災後の支援活動における一つのモデルになるのではないだろうか。

地震医療ネットワーク 事務局 jisin.iryo@gmail.com

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