医療ガバナンス学会 (2025年7月14日 08:00)
坪倉先生の放射線教室(25) 地層処分
この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。
福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治
2025年7月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
高レベル放射性廃棄物は、数万年以上の長期保存が必要なため、地下深い場所での「地層処分」が現実的だと考えられています。わが国では地層処分する場所は決まっていません。
これまで、北欧のフィンランドやスウェーデンで処分地の建設が進んでいることを紹介しました。 国内で複数の候補地が公募され、地層のデータや文献での調査が行われた後、ボーリング調査(概要調査)が行われ、実際の研究施設を造ってさらに細かく調査(精密調査)する。
このような手順は、世界中で違いこそあれ、それぞれの国でおおよそ同じように進んでいます。日本ではいくつかの市町村で文献調査が行われているのはご存じの通りです。イギリスやドイツは日本と同じような段階で、イギリスでは2022年末までに四つの地域が候補地となり、一つは断念となっています。スイスやカナダでもわが国より少し先の段階で処分地の絞り込みが行われています。
その一方で、処分地の場所が既に決定しているのは、前述のフィンランドとスウェーデンに加えて、フランスがあります。フランスは言わずと知れた原子力大国です。
発電電力全体のうち、石油・石炭・天然ガスを合わせてもその1割に満たないのに対し、約7割が原子力、1割が水力です。パリから東に220キロのビュールという場所に研究所があり、そこが処分予定地となっています。
●核ごみ、仏は年1000トン際処理 2024年9月28日配信
( https://www.minyu-net.com/news/detail/2024092810230526939 )
高レベル放射性廃棄物は数万年以上の長期保存が必要なため、地下深い場所での「地層処分」が現実的だと考えられています。日本では地層処分する場所は決まっていません。
処分地の場所が既に決定しているのは、フィンランドとスウェーデン、そしてフランスです。フランスでは首都パリから東に220キロのビュールという場所に研究所があり、そこが処分予定地となっています。
フランスは、発電電力全体のうち、約7割を原子力に頼っている原子力大国です。フランスの原子力発電所は昨年末現在、56基ありますが、その全てを国有企業であるフランス電力株式会社(EDF社)が運転しています。発電電力の約7割が原子力といいましたが、理論的には全ての原子力発電所がフル稼働すれば国内消費電力の全てを原子力で賄うことができるだけの設備を持っています。
フランス北西部のコランタン半島の先端に、日本でいう青森県六ケ所村の再処理施設に相当する、ラ・アーグ再処理施設があり、年間千トン以上の使用済み核燃料が再処理されています。
これらの再処理された核燃料は地層処分を待っている状態であることに加え、全ての使用済み核燃料が再処理されているわけではなく、2020年末時点で約1万4千トンの使用済み核燃料が将来の再処理を待ち、貯蔵されている状況です。