医療ガバナンス学会 (2025年7月29日 08:00)
この原稿は中村祐輔の「これでいいのか日本の医療」(2025年7月12日配信)からの転載です。
https://yusukenakamura.hatenablog.com/entry/2025/07/12/221744
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
理事長 中村祐輔
2025年7月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
加工肉、砂糖入り飲料、トランス脂肪酸の健康に与える影響を改めて解析した結果だ。食品はその加工の程度によって分類されているが、NOVA分類では、(Geminiによる回答を改変)
グループ1:未加工食品または最小加工食品 (Unprocessed or Minimally Processed Foods)
自然の状態か、乾燥、粉砕、ボイル、焙煎、冷蔵、冷凍、真空パックなど、食品の性質を大きく変えない物理的な処理のみが施された食品(生野菜、果物、穀物、肉の切り身、魚の切り身、卵、牛乳、水など)
グループ2: (Processed Culinary Ingredients)
グループ1の食品から作られたもので、そのまま食べることを目的とせず、料理の味付けや調理を助けるために使用される。(植物油、バター、砂糖、塩、酢、はちみつ、メープルシロップ、スパイス、ハーブなど)
グループ3:加工食品 (Processed Foods)
グループ1の食品に、グループ2の加工食品原料を加えて作られた比較的シンプルな加工食品(塩漬けナッツ、缶詰の野菜や豆類、チーズ、燻製肉、焼きたてのパン(シンプルなもの)、ジャム、自家製漬物、発酵食品など)。
グループ4:超加工食品 (Ultra-Processed Foods: UPF)
複数の原材料を工業的に配合し、家庭での調理では通常使われないような工業的に作られた成分が加えられ、味、色、食感、保存性を調整するために高度に加工された食品。通常、5つ以上の成分を含む。
(砂糖入り飲料水、スナック菓子、菓子パン、カップ麺、インスタント食品、ソーセージ、ハム、チキンナゲット、冷凍ピザ、市販のシリアル、ファストフードの一部など)。
これまで超加工食品が健康に影響を及ぼすことを示唆する論文は多数公表されているが、それを否定する論文も多数報告がされており、議論が続いている。人間の栄養に関する研究では、主に記憶に頼ったデータが収集されるため、情報の正確性が論文ごとに異なる。アルコールの摂取量など、過少申告する例の少なくない。そのために、その結果を再現することが難しくなる。
今回のNature Medicineの論文は新しい手法を用いて論文間のばらつきを補正したようだが、私にはよくわからない。
結論だけまとめると、
1.加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)(1.5~57グラム)と砂糖入り飲料の多量摂取は2型糖尿病のリスクを、それぞれ11%、8%高める。(この多量が曲者で、記憶に頼っていては限界がある)
2.砂糖入り飲料とトランス脂肪酸の多量摂取は狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクを、それぞれ2%、3%高める(トランス脂肪酸に関しては後述)
3.加工肉の摂取量が増えると大腸がんリスクが7%高まる
などである。
これまで言われてきたことであるが、科学的根拠が高まったと述べられている。ただし、リスクが1.03倍や1.08倍なら、どうでもいいと考える人も多いと思う。しかし、食生活によって糖尿病患者が1000万人から1080万人に増えるとなると、医療経済学的には大きな影響となる。
トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングなどに含まれている不飽和脂肪酸の一種であるが、米国では食用は禁止されておいるので、マーガリンは販売されていない。日本では摂取量が多くないという理由で禁止されてはいない。トランス脂肪酸はLDL(悪玉)コレステロールを増やす働きがあるとされている。私など、バターより安いマーガリンをよく使っている。塩分摂取量や加工された肉類など、70歳まで生きてくると、いまさら・・・・・と思ってしまう。立場上、言ってはいけないのだが、好きなものを我慢して食べずに2-3年長生きしても・・・・・・・・。