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Vol.25189 現場からの医療改革推進協議会第二十回シンポジウム 抄録から(6)

医療ガバナンス学会 (2025年10月14日 08:00)


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2025年10月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第二十回シンポジウム

11月2日(日)

【Session 06】 肥満再考 9:30 – 10:00(司会:濱木珠惠)
●大西 睦子 米国ボストン在住内科医師、ナビタス・ウェルネスプログラム担当医

GLP-1治療薬2025:体重減少から全身保護へ

GLP-1受容体作動薬は、糖尿病治療薬の枠を超え、心臓・腎臓・睡眠まで守る「全身治療薬」へと進化しています。2024〜2025年は、この分野が大きく飛躍した年です。
注目の進展は、以下のとおりです。
・心臓と腎臓を守る:セマグルチド2.4mg(ウゴービ)は、肥満または過体重で心血管疾患のある成人に向けた、主要心血管イベントを減らす初の抗肥満薬に。FLOW試験では2型糖尿病と慢性腎臓病の患者さんで、腎機能悪化と心血管死のリスクを下げることも示されました。
・睡眠の質を改善:チルゼパチド(ゼップバウンド)が、中等度〜重度睡眠時無呼吸症候群(OSA)に世界初で承認。体重減少だけではなく、眠りの質まで改善するという新しい価値を示しました。
・次世代薬の波:カグリセマは、平均20〜23%の減量を達成。レタルチチド(三重作動薬)、サーボデュタイド(二重作動薬)は、肝疾患や代謝改善効果も視野に。
・経口新時代:オルフォグリプロンは、1日1回の服用で約12%の減量を実現。利便性と普及の可能性を広げました。
・安全性:消化器症状は依然として多く、甲状腺C細胞腫リスク(動物データ)、膵炎、胆嚢疾患への注意が必要です。漸増投与と患者教育が安全使用の鍵となります。
GLP-1はもう「痩せるための薬」ではなく、「命を守る薬」へ進化しています。心筋梗塞予防、腎機能保護、OSA改善など、目的別にGLP-1薬を選ぶ時代が始まっています。

●松本 和也 株式会社マツモトメソッド 代表取締役

●長塚 智広 アテネ五輪自転車競技銀メダリスト、株式会社ジャパロニア 取締役

競技戦略から健康管理へ:環境・目的で変わる体重管理とGLP-1治療の実体験
私は元競輪選手であり、2000年シドニー、2004年アテネ、2008年北京と3大会連続でオリンピック自転車競技に出場し、アテネ大会で銀メダルを獲得した。現役時代は肥満に悩んでいたわけではなく、筋肉量を増やし体重を大きく維持することで、パワーを高めることが競技力に直結していた。そのため最大で103kgに達していたが、これは戦略的選択であった。
しかし引退後は体重を維持する必要性を失い、健康リスクが顕在化した。自力で90kgまでは減量できたが、90kgを切るとすぐに92kgに戻ることを繰り返し、85~80kgの目標には届かず悩んでいた。また現役時代から痛風発作が頻発し、引退後も日常生活を脅かす問題となっていた。
そのような中で、上昌広先生の診察によりGLP-1治療を受けさせていただいた。これを契機に生活改善を進めた結果、わずか1か月で12kg減量し80kgに到達。その後も85kg前後で安定し、痛風発作は劇的に減少、血液検査の数値も改善した。健康と生活の質は大きく向上した。
さらに驚いたのは、私の減量を契機に、周囲の肥満気味の人々が次々に減量を意識し始めたことである。個人の経験が周囲の行動変容につながることを実感した。
オリンピック・競輪選手として体重を武器にしていた時代と、引退後の一般生活者として健康のために体重を管理する現在を比較することは、肥満を単なる自己管理の問題ではなく、環境や目的に左右されるものとして再考する契機となる。本発表では、その体験と教訓を共有したい。
※パネルディスカッション形式

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