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Vol.140 段ボール工場の取り組み

医療ガバナンス学会 (2011年4月21日 14:00)


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石巻赤十字病院呼吸器外科
植田信策
2011年4月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


災害時の避難所では簡易ベッドの導入が望ましいとされています。その理由として、

(1)「簡易ベッドの導入がエコノミークラス症候群の発生を減らす」
1940年のロンドン空襲で地下鉄構内に避難した市民から肺血栓塞栓症による死亡が前年同期の6倍と多発したため、ロンドン市が簡易ベッドを導入したと ころ発症数が減少した。(Simpson K. Shelter deaths from pulmonary embolism. Lancet. 1940;ii:744.)
(2)「避難所では呼吸器障害を避けるため、顔を床から30cm以上離す事が推奨される」
寝ている横を人が歩くため、そのたびに粉塵が巻き上げられ吸引してしまいます。特に津波の後では乾いた泥から細かい粉塵が巻き上がります。避難所では咳症状が増えています。

(3)「ベッドに寝る事で、体温の低下や衰弱の予防、褥創予防が期待できる」

(4)「ベッドを利用する事により、体力の低下した高齢者や麻痺のある方は起き上がる際  の足腰の負担が少なくなる」
高齢者は筋力が低下しているため、床から自力で起き上がれず寝たきりとなる恐れがあります.宮城県理学療法士協会の調査で、震災前は自立していたのに、 震災後は介助が必要となった方が17%いることがわかりました。また、寝たきりとなる高齢者が増えると誤嚥性肺炎症例が減りません。さらに、

(5)「ベッドは介護者の腰の負担を軽減する」
高齢者を床から起き上がらせるのはかなりの労力を要します。

などがあげられます。

2004年のハリケーン・カトリーナや2007年の南カリフォルニアの山火事でも避難所のスタジアムに簡易ベッドが並べられている映像が見られました。
このような健康被害を避けるためには早期に避難所に簡易ベッドを導入することが望ましいのですが、欧米と違って畳に慣れた日本では床で寝ることに抵抗が少く、避難所への簡易ベッド導入が普及していませんでした。

そこで、安価なコストと迅速な供給をめざした取り組みが段ボール業界から起ころうとしています。段ボール製の簡易ベッドを規格化し、日本中どこの工場で も作れるようにしようというものです。このシステムのポイントは、ある地域の工場が被災しても他の地域の工場が供給することができること、また、規格化す ることで大量生産が可能となること。そして、数日で万単位の個数のベッドを被災地へ届けることができるので、備蓄しておく必要がないことです。一企業、一 工場だけで行うのではなく、多くの工場、企業から供給されることでそれぞれの負担を軽減できます。自らの技術を活かして段ボール業界全体として災害支援を 行っていただけることが可能と思われます。ただし、万単位の個数を一度に供給してもらうには、少なくとも原材料費の資金調達の仕組みが必要になると思いま す。

この取り組みは今回の震災だけでなく、将来の災害にむけて避難所での健康被害、震災関連死を防ぐ有効なツールになると期待しております。

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