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Vol.139 横浜市立大学医学部長黒岩義之先生の解任

医療ガバナンス学会 (2011年4月21日 06:00)


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神津内科クリニック 神津 仁
2011年4月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


正直驚いた。こんな清廉潔白な人にも、何とも不可解で、我々の常識では考えられない「医学部長解任」という、人生の汚点ともいえる人事が降ってくるとは。
「これは濡れ衣ではなのか?」昨日19日にこの報道をm3.comの橋本佳子記者の記事、「4/18号 『なぜ解任されるのか、全く理由が分からず』、横浜市大医学部長」を読んで直感的にそう思った。

黒岩義之先生とは、いろいろな接点がある。日本神経治療学会で私は医療保険委員会委員を拝命しているが、黒岩先生が委員長として取り纏めをしている。私が 理事長をしている国際疾病分類学会では評議員をお願いしている。日本のプリオン研究者としても有名で、神経内科の泰斗であり、多くの神経内科医が敬愛して やまない素晴らしい医学者であり臨床医である。

略歴を紹介する。1973年に東大医学部を卒業し、浜松医科大学で助手、岩手医科大学で神経内科学講座の助教授を経て、89年に虎の門病院神経内科医長、 91年に部長となり、92年に横浜市立大学医学部神経内科学部門教授となる。2010年4月に横浜市立大学医学部長に就任し、5月より全国医学部長病院長 会議の会長として重責についている方である。最近では、政府に物言う会長として、見識あるリーダーシップを執っておられたことを記憶している方は多いはず だ。

「全国医学部長病院長会議が緊急提言。医学部新設で問題は解決するのか」

http://www.nikkeibp.co.jp/article/gdn/20110301/261883/

そんな黒岩先生が新聞記事に載った。以下は毎日新聞の記事である。
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「横浜市大:解任通知受け医学部長、地位保全申し立て /神奈川」
横浜市大(横浜市金沢区)から医学部長職の解任通知を受けたのは違法として、黒岩義之同大医学部長(64)が横浜地裁に地位保全の仮処分を申し立てた。申し立ては12日付。
黒岩医学部長の代理人によると、昨年12月6日に東京都内であった食事会で「次期理事長を画策した」として、大学側から今月8日、医学部長の自宅に解任通知書が郵送された。
黒岩医学部長側は「解任理由は事実無根である上に、解任手続きや理由も違法であり社会的相当性を欠いている」と主張。横浜市大側は「5月1日付の人事異動に伴い、医学部長に対して解任を通知しましたが、それ以上のことは申し上げられない」とコメントしている。【吉住遊】
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4月18日に橋本記者が黒岩先生の代理人である上本忠雄氏に電話取材をした記事が、やはりm3.comに載っているので、そこから時系列を追って事実関係を整理してみる。

2010年12月6日   友人6人と会食(医師の友人と副市長)
2011年1月28日   理事長に呼び出しを受け、理事長、学長同席の場で「辞任か、さもなくば解任を」といきなり言い渡される。
2011年2月1日    「大学の秩序を乱した」として2回目の辞任の強要。
2011年2月3日    不当なパワーハラスメントとして代理人の名前で抗議。内容証明を送付。
2011年4月8日    7日付けの解任通知が送られてきた。
2011年4月12日   横浜地裁に地位保全の仮処分を申し立てる。

この異様さはなんだろう。事件というにはあまりにも陳腐で、卑劣で不可解だ。ユダは銀貨三十枚でイエスを売った。イエスの考えが自己中心的で妄想狂だと考えたからだ。思想的な葛藤もあったという。
翻ってこの医学部長解任劇を見てみると、黒岩先生が突然引き込まれて翻弄されている。まるで津波にのみこまれたごとく。「これは濡れ衣ではないのか?」誰かがユダとなったのか、そう思わずにいられない。
しかし、黒岩先生は宗教者ではないし、妄想狂でもない。正義感の強い、真摯な思いを仲間と語るよき先輩医師である。そして、日本の医療の再生を真剣に考 え、医学教育の改革によって、よい医師を多く育てて、結果として日本国民のために資するという大きな展望を持ったリーダーの一人である。そのような人を裏 切ってはならないと思う。

4月28日に第一回の審尋期日の予定が入っている。その後も何回か審尋が続き、結論が出るのは3か月先だ。その間に、このままでは黒岩先生は4月30日 付で解任されてしまう。事態は緊急を要するのだ。是非とも、日本国中の先生方に、病院で、医学部で、問題提起をして頂きたい。その結果として、横浜市立医 大の度量の大きさを証明し、黒岩先生の解任が留保され、撤回され、再び日本のために働けるよう、切に望んでいる。

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