
医療ガバナンス学会 (2026年2月6日 08:00)
本稿は、2025年8月15日に医薬経済に掲載された記事を転載しました。
医療ガバナンス研究所理事・常磐病院医師
尾崎章彦
2026年2月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
NPOによる医師への謝礼金データ公開としては、米国の非営利・独立系の報道機関『プロパブリカ』による「Dollars for Docs」などが知られている。ただ、我われのプロジェクトほど継続的かつ網羅的なものは、国内外でも極めて稀である。
製薬マネーに関しては、長期的なデータ蓄積を活かし、公開と同じく7月に『Journal of Evaluation in Clinical Practice』誌に6年間の傾向分析に基づく論文を発表した。16〜21年に日本の医師が製薬企業から受け取った講演料、コンサルティング料、原稿執筆料を集計したものだ。
総支払額は17〜19年において約273億〜274億円で推移し、20年には新型コロナウイルス禍で約189億円に減少したが、21年には約298億円と回復した。受給医師数が減少傾向にあったことで、1人あたりの平均額および中央値は増加し、年間100万円以上の報酬を受け取る医師の割合も増加していた。支払いは循環器、糖尿病・代謝・内分泌領域に集中しており、とある循環器内科医は6年連続でトップ10にランクインしていた。企業別では、第一三共が毎年最多の報酬を提供しており、21年には約22億円を支払っていた。
コロナ後に支払いが増加していた点は特筆に値する。要因とみられるのが、オンライン講演の普及だ。講師の依頼にあたり、かねてより実績のある医師に依存する傾向が強まった結果、企業からの支払い集中が進んだ。処方の中立性や医療の信頼性に影響を及ぼす懸念がある。
さらに、医療機器マネーデータベースの整備により、製薬マネーと医療機器マネーを統合的に分析することが可能となった。7月に『Health Policy and Technology』誌に掲載された論文では、19〜21年における18の主要医学会の理事399人に対する両分野からの講演・執筆・コンサルティング料を分析した。373人(93.5%)が報酬を受領しており、総額は約21億円、1人あたりの中央値は約300万円であった。支払いは内科学会、眼科学会、皮膚科学会、泌尿器科学会の4学会に集中し、全体の52.5%を占めていた。
企業別では、製薬企業では第一三共(約124億円)、ノバルティスファーマ(約109億円)、大塚製薬(約96億円)が、医療機器企業ではメドトロニック(約26億円)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(約25億円)、アルコン(約20億円)が上位であった。総額では製薬企業からの支払いが医療機器企業の約5倍に上った。製薬企業からの支払いは内科系学会に多く、一方、医療機器企業からは外科系学会に多く見られた。なお、医療機器マネーについては、20年の支払いは全体的に減少したが、21年には外科系学会を中心に回復がみられた。
注目すべきは、調査対象の18学会すべてが、理事の金銭的利益相反の情報を外部に公開していなかった点である。理事はガイドライン策定や研究資金配分に影響を与える立場であり、透明性の欠如は信頼性の低下につながる。
現在、当研究所では収集データの整理と統一化を進めている。年度ごとに異なっているフォーマットを医療機器・製薬の両マネーデータで統一し、経年比較可能な構造に整備中である。また、AIやプログラミング技術を活用した自動化も進行中であり、より正確かつ効率的な集計をめざしている。
今後は、26年3月までに製薬および医療機器の両データベースにおいて、23年分までの公開を完了する予定である。