
医療ガバナンス学会 (2026年2月13日 08:00)
この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。
福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治
2026年2月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
( https://www.minyu-net.com/news/detail/2025020810223633022 ) 2025年2月8日配信
これまで、2013年に導入された原発の新しい安全基準である「新規制基準」について説明してきました。前回は、原発の重要な施設を活断層の上に建てることが禁止され、活断層の評価基準が以前より厳しくなったことを紹介しました。
今回は、原発の運転期間についてです。東日本大震災以前は、原発は「原則40年で廃炉。ただし、安全性が確認できれば最長60年まで運転可能」と決められていました。しかし、新規制基準の導入後、基準を満たせば60年を超えても運転を続けられるようになりました。
運転を延長するには、いくつかの条件をクリアする必要があります。まず、新規制基準に適合し、最新の安全対策が取られていること。さらに、設備の老朽化を定期的に確認し、必要な補修を行うことが求められます。そして、これまでは運転延長の審査は一度だけでしたが、今後は10年ごとに追加の審査を受けなければなりません。
既にいくつかの原発は最長60年までの運転延長を認められています。福井県の高浜原発1・2号機は1974年に運転を開始し、50年以上が経過。同じく福井県の美浜原発3号機も76年の運転開始から約50年がたっています。これらの原発は最長60年までの運転が許可されていますが、60年を超えてさらに延長するには、追加の安全審査を受ける必要があります。
この方針変更により、今後、60年を超えて運転する原発が増える可能性があります。海外ではすでに長期間の運転が認められるケースも多く、米国では80年運転を認める動きがあり、いくつかの原発が審査を通過しています。またフランスでは、60年以上の運転を前提に設計された原発が多いのも特徴です。
日本でも、60年を超える運転が現実のものとなるかもしれません。ただ、設備の老朽化によるリスクをどこまで管理できるのか、追加の安全対策が十分に機能するのかといった点については、今後も慎重な議論が必要です。
●新基準に合わせ対策強化
( https://www.minyu-net.com/news/detail/2025021514040133258 ) 2025年2月15日配信
これまで、2013年に導入された原発の新しい安全基準である「新規制基準」について説明してきました。活断層や津波への対策など、さまざまに安全対策が強化されてきました。
これらの基準には、バックフィット制度が適用されています。バックフィット制度とは、原発の安全基準が新しくなった場合、すでに運転中の原発にも新基準を適用する仕組みです。つまり「古い基準で造られた原発だから、そのままでよい」ということにはならず、新しい知見が得られれば、それを基に古い原発にも
します。そのため、規制が強化されるたびに、追加の改修工事や安全対策が必要になる場合があります。原発の安全性を高めるための仕組みの一つです。
事故が起きた日本では、全ての原発に新しい基準が適用されるのは当然だと考える人が多いと思います。しかし実は、海外ではそうではありません。コストとリスクのバランスを考慮して、適用を除外する場合があります。
例えば、米国の原子力規制委員会は、新しい規制を導入する際、その規制によって、どの程度事故のリスクが低くなるのかを評価します。その結果、リスクの低減効果が限定的だと判断されれば、バックフィットの適用が見送られることもあります。英国でも、新たな規制を導入する際に、得られる安全上の利益が小さいと判断されれば、バックフィットの適用が除外されることもあります。
このように、規制の適用の仕方一つとっても、海外と日本ではそれぞれやり方が少しずつ異なっています。