医療ガバナンス学会 (2011年5月8日 06:00)
まずは南相馬市立総合病院の状況について2、3書かせていただきます。当院は福島原発から23kmのところにあります。緊急避難準備区域にあり外来は行っ ていますが、入院患者を置くことはできません。3月下旬から夜間救急を一時救急のみですが行っています。南相馬市原町区では入院できる病院が当院を含め4 つありましたが、当院以外の3つの病院は日中の診療のみで、同地区で夜間救急を行っているところは当院以外ありません。東日本大震災、原発事故前は医師が 13人いましたが、現在は4人のみで診療等を行っています。震災前は当院に手伝いに来ていた応援医師の派遣も止まっている状況です。
以下に4月の南相馬市の医療状況について箇条書きにまとめました。
1.原発30キロ以内と見なされていた鹿島厚生病院が正式に80名の入院が、5月からできるようになった。震災、原発事故後、南相馬市の病院では入院患者を全員転院搬送したが、その後初めて、多くの人が入院できる病院ができたことになった。
2.南相馬市立総合病院も、5名72時間のみ入院をおけるように準備をしているところ。主には脳疾患の患者さんが入院するようになる。(震災前福島県浜通北部で脳外科の診療を行っていた病院は当院のみであったため)
3. 南相馬市の北に位置する相馬市内の公立相馬総合病院、立谷病院も入院患者が多く、救急患者に十分に対応できない。したがって、福島県浜通りの北部では患者 の救急対応は十分できない。特に発症から時間がたつと予後に関係する疾患(脳出血、心筋梗塞など)の対応ができない。国や県のサポートは必要だが、目に見 える形では出てきていない。
4. 震災によって南相馬市、双葉郡の精神科病院が閉院した。精神科の開業医が2名南相馬市原町区にいるものの、閉院した病院に通院、および入院していた患者の 症状が悪化しているらしい。PTSDやうつ状態に陥った人も多くいそうだが、はっきりと症状が出ていればある程度当院でも対応できると思うが、不定愁訴の ような場合、診断ができず見逃される場合があると思われる。5月になり精神科のボランティアが入り始めた。
5. 当院に子供が学校に行かないという電話が数件あった。PTSDになっている子供が何人かいるようであるが、把握し切れていない。
6. 泌尿器科、眼科、皮膚科、形成外科などのマイナーの科の医師がおらず、患者に相馬市の病院の受診を勧めている。相馬市の病院に迷惑をかけている。
以下は南相馬市立総合病院の付記事項です。
1. 当院でも入院患者を数名とることに対応するため、6月から当院で働く脳外の医師を1名募集している。就業年数、年令不問。
2. 4/29の日当直。この日は特に受診患者が多く、震災前の救急外来と変わらない状態。
各避難所から多くの人が戻ってきた。医療弱者と言われる人も戻ってきている。
本人たちは医療弱者とは思っていないようである。
救急車は5台収容要請があったが、そのうち3台は断った。
いずれも患者さんの診察をしており、早急な対応ができなかったため。
(救急車収容の依頼は午後10時以降なかった。)
状況が刻一刻と変わっている福島県浜通り北部の医療ニーズに対して、対応できていないのを実感した。