
医療ガバナンス学会 (2026年3月5日 08:00)
本稿は、2025年12月15日に医薬経済に掲載された記事を転載しました。
医療ガバナンス研究所理事・常磐病院医師
尾崎章彦
2026年3月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
AIMOSは、研究の再現性や質に関する問題に取り組むため、19年にオーストラリアやニュージーランドを中心に設立された団体で、研究における公開性・質・透明性を向上させることを目指している。今回のカンファレンスでは、コラボレーターであるシドニー大のバーバラ・ミンツ氏のチームが共同オーガナイザーを務めていたため参加した。
本カンファレンスにおいて、我々のチームは医療分野における透明性と利益相反をテーマに、4つのセッションで研究成果を発表・共有した。
まず、2つの口頭発表セッションでは、尾崎と原がそれぞれ登壇し、日本の医療機器企業マネーの実態を報告した。ちょうど会期中に、東京大学整形外科准教授が日本エム・ディ・エム(MDM)からの奨学寄附金受領行為を贈収賄容疑で逮捕される事案が発生し、極めてタイムリーな話題となった。
尾崎の発表では、医療機器業界における不祥事の構造について、日本光電やゼオンメディカルなどの具体例を挙げつつ、医療機器企業で不正が生じやすい背景について論じた。近年、医療機器分野で不祥事や逮捕事案が相次いでいるが、その背後には企業側のガバナンス意識の欠如と、構造的な透明性不足が根強く存在している。
医療機器の開発には医師との密接な協働が必要で、両者の距離が近いため不透明な関係が生じやすい。価格設定の不明瞭さや旧来の商慣行も残り、不適切な取引の温床となっている。さらに中小企業が多く統制が難しいことから、コンプライアンス水準にばらつきが生じ、ガバナンスの浸透も不十分である。
さらに原の発表では、日本の医療機器業界の支払い実態を定量的に分析した結果を紹介した。例えば、19年〜22年に医療機器企業が医療従事者・医療機関へ支払った総額が約1400億円超に上ることを示した。また、日本の主要18医学会のリーダー399人の93・5%が支払いを受領しており、とくに高額な医療機器の開発が相次ぐ外科系領域が重要な標的となっていることも判明した。
医療機器は医薬品と異なり効果差の客観評価が難しく、マーケティング依存が大きい。このため、業界のガバナンス強化に加え、医薬品医療機器総合機構(PMDA)など行政も効果評価を審査に適切に反映できる仕組みを整えることが重要である。
本カンファレンスの特徴として、議論中心のセッションが多かった点が挙げられる。「ハッカソンセッション」のひとつでは、オーストラリア製薬工業協会の開示データを取り上げ、私たちが運営する「Yen for Docs」プロジェクトとの比較を行った。オーストラリアのデータは3年でウェブサイトから削除される仕組みであることなど、データ検証や精度管理の課題について議論を深めた。
もうひとつのハッカソンセッションでは、具体的なケースを用いて、個人が診療・研究・ガイドライン作成に関与する上で、その影響力を適切に制御するための実践的方策について議論した。
全体として小規模な学会ではあったが、だからこそ分野横断的にこのテーマに関心を持つ研究者が集まり、極めて密度の高い議論と有意義なネットワーク形成につながったと実感している。とくに利益相反研究に関しては、世界的に主要な研究者が概ね一堂に会しており、このネットワークや会議で得られたフレームワークを活用しながら、今後の研究や活動をさらに発展させていきたいと考える。