
医療ガバナンス学会 (2026年3月10日 08:00)
この原稿はAERA DIGITA(2025年12月25日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/articles/-/272639
内科医
山本佳奈
2026年3月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
食生活を本気で見直そうと思ったきっかけは、血糖値の急激な上昇をできるだけ避けたいと考えたことでした。加えて、牛乳や卵にアレルギーがあり、一般的に勧められるヨーグルトや食事法がそのまま使えない。限られた条件の中で、自分の体に合う方法を考え抜く必要がありました。
たどり着いたのは、驚くほどシンプルな習慣です。昼と夜の食事に、市販の「混ぜるだけ」のサラダキットを取り入れること。忙しい日でも続けられることを最優先にしました。
ただ「サラダを食べる」だけにはしませんでした。サラダにはアボカドを半分加え、全粒粉のパンも一緒に組み合わせる形にしました。寒い時期にサラダだけでは体が冷えやすく、腹持ちもしないため、このスタイルが自分には合っていました。ときどき前日の残りのサーモンを少量加えることもありますし、味付けも我慢せず、ドレッシングもきちんと使っています。
さらに、ドレッシングには少量の酢を加えています。血糖値の急激な上昇をできるだけ抑えたいという意識から始めた習慣でしたが、酸味が加わることで自然とゆっくり噛んで食べるようになり、結果として満足感も高まり、無理なく続けられる形になりました。
私がアボカドを加えている理由のひとつは、カリウムを補うためです。もともと下痢気味だったことや運動習慣を考えると、電解質のバランスを意識したかったというのもあります。さらに、アボカドに含まれる一価不飽和脂肪酸は満足感を高め、食後の血糖変動を緩やかにします。サラダだけだと“冷える・物足りない・続かない”という問題がありましたが、このひと工夫で「おいしく、無理なく続けられる食事」になりました。
●2カ月ではっきりした変化が
この食生活を2カ月ほど続けたころ、はっきりとした変化を感じました。朝に自然と排便があり、便の量や形が安定してきたのです。いわゆる「バナナ状」の便が出るようになり、量もしっかり出るようになっていて、自分でも驚くほどでした。これまで下痢気味で読めなかった腸のリズムが、気がつけば少しずつ整っていたことを実感しました。以前は気になっていた腸の不快感も、次第に感じなくなっていきました。
振り返ってみると、ポイントの一つは「噛むこと」だったのかもしれません。レタス中心のサラダではなく、ケールやブロッコリーなど噛みごたえのある野菜がベースで、ナッツやレーズンの食感も加わります。自然と咀嚼回数が増え、満足感が高まりました。昼と夜に取り入れることで腹持ちが良くなり、間食が減ったことも、体調の安定につながったと感じています。
医学的に見ても、こうした変化は尤もなことだと考えられます。近年の大規模なレビュー研究で[※1] は、食物繊維の摂取量を増やすことが、便の性状や排便頻度の改善に寄与することが繰り返し示されています。同様に[※2] 、食物繊維の補給は慢性便秘の改善にも効果があるとの報告があり、一定量以上の摂取や長期的な習慣が、排便の安定に寄与する可能性が示されています。
特に不溶性食物繊維は、便のかさを増やし、腸管の通過時間を安定させる働きがあります。また、水溶性食物繊維は腸内細菌によって発酵され、短鎖脂肪酸が産生されることで、腸の動きや腸粘膜の環境を整えることが知られています。
また、「よく噛む」こと自体にも意味があります。咀嚼は消化の第一段階であり、迷走神経を介して消化管全体の動きを調整すると考えられています。食事のスピードが落ちることで、血糖値の急激な上昇が起きにくくなり、自律神経の働きにもよい影響を与える可能性があります。腸と血糖、そして神経系は、実は密接につながっているとされています。
●無理なく続けられた
何より大きかったのは、「おいしく、無理なく続けられた」という点でした。いくつか種類を試したものの、結局は同じサラダキットに落ち着きました。毎日同じでも飽きずに食べられることが、結果として習慣化のいちばんの支えになったのだと思います。
日本では、同じようなサラダを日常的に続けるのは簡単ではありませんでした。コンビニのサラダは味や量の面で満足しにくく、サラダボウル専門店はボリュームがあっても価格的に毎日は難しい。その点、手頃な価格で質の良いサラダを続けられる環境は、食生活に大きな影響を与えると感じます。
振り返ってみると、最初に変化を感じたのは、おならの臭さが気にならなくなったことでした。そして気がつけば、朝に自然と排便があり、便の量や状態も安定していたのです。正直に言えば、これまでの人生で、ここまで快便で、量もしっかり出る状態を経験したことはありませんでした。今回が初めてです。あとから振り返って、腸が変わっていたことに気づきました。それくらい、変化は静かだったのでした。
【参照URL】
[※1]https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23326148/
[※2]https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35816465/